エピローグ
動物。
植物。
昆虫や魚類。
そして人類に至るまでが存在しない、死の大地。
その上空に漂うのが、わたしたちのマイホームです♪
とっても見晴らしのいい、素敵なこのお屋敷には、一組の幸せな夫婦が生活を送っています。
妻は赤い髪を流麗に靡かせる、見た目はわたし的にも及第点な女性。
歳は今年で……チョメチョメですけど、今でも少女のように若いんですよ?
「はい、あ~ん♪」
「……………………」
夫は、とっても無口な人です。
愛のこもった手料理を食べても、『おいしい』の一言すら言ってくれないんですから。
でも、いいんです。
わたしは幸せです。
会話なんてなくても、兄さんとこうして一緒に暮らせる。
愛し合うことができる。
ただそれだけで、とってもとっても幸せなんです。
それはもちろん、昔は喧嘩なんかもしましたけれど……。
今となっては、それもいい思い出。
喧嘩するほど仲がいいとも言いますもんね?
実際、昔はナイフで喉を突こうとしてきたり、眼球を潰そうとしてきたり、あろうことか外出しようとしたり、果てには自分の舌を噛み切ろうとしたりしていましたけれど、両手を椅子の肘掛けに縫いつけたら、すぐに仲直りできましたし!
わたしは兄さんの喉の奥に料理を捻じ込むと、対面の椅子に座ります。
ふう。
最近は、少し動くのも大変です。
わたしは大きく膨らんだ自分のお腹をさすって、その鼓動を感じました。
わたしは幸せです。
こんな幸せな日々が、ずっとずっと続いてゆくのです。
仮に、この身体が朽ちたとしても。
お腹のこの子に、魂を移せばいいだけですし。
「ずっと……幸せに暮らしましょうね、兄さん」
ずっと。
ずっと。
永遠に。
〈HAPPY❤END〉




