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最終話 タイムリープの真相




 クロードと共寝した夜、私は夢を見た。


 透き通るような湖畔のほとりに可愛らしい丸テーブルと紅茶の注がれた陶器のカップ。私は猫足の椅子に座っており、対面にはけぶるように輝く黄金の髪に白いローブを羽織った美しい女性がいた。


 この女性、見たことがある。

 神殿や教会に聳えたつ像や教本や聖書の中に描かれる――聖教会の女神ユーフィリア様にそっくりである。

 

「───そっくりだなんて失礼ですね。本人を前にして不敬では?」

「も、申し訳ございません!!!」


 鈴を転がすような声色でばっさりと言い切られ、慌てて頭を下げる。否、この御方は正真正銘女神様なんだろう。


 何故私のような者の夢の中に現れるのかが謎であるが、彼女から溢れんばかりの神々しいそのオーラに圧倒されてしまう。

 

(ていうか、本当に何で私の夢に出てきたんだろう………)

 

 そう怪訝に思いながら頭を下げていると、女神様が「顔を上げなさい」と言ってくる。

 おそるおそる面を上げれば、女神様は何故か苦笑していた。

 

「まずはお疲れ様、といったところでしょうか。度重なる時間逆行は大変でしたでしょう」

 

 やはりあれば女神様の仕業だったのかと思う。

 あんな神話級の魔術ができる者など、神や精霊といった上位存在しかいない。

 そして女神様がくすくすと笑った。


「今までずっと貴女を見守っておりましたが、やはり人間とは面白いですね。それに結果的に目標であった聖女エミリア・ローズの排除も叶いました。褒めて遣わしましょう」

「あ、あの、大変差し出がましいのですが、お聞きしても………?」

「ええ、どうぞ」

 

 そんな女神様に気になったことを尋ねる。

 

「聖女エミリア・ローズの排除、とは…………?」

「あら、気付いていなかったのですね。今回私が貴女を過去に逆行させたのは、エミリア・ローズという女を排除させるためです」


 どういうことだろうかとを傾げていれば、女神様は順を追って説明してくれる。


「聖属性の魔力を多く持つことから女神たる私との波長も合い、時折神託を授けていたのですが………いつからあの者は神託の虚偽をするようになりました」

「それは………」

「以来エミリア・ローズへ神託をすることは止めていたのですが、それでも虚偽の神託を伝える始末でしたので、どのように排除しようかと悩んでいたんです」

 

 そうだったのか。女神様はとてもすごい人だけれど、直接的に私達の暮らしに干渉することはできない。そう歴史の授業で学んだことがある。

 だから聖女という存在がいて、聖女を通して人々を導くとされていたのだが………

 

(エミリア・ローズ、なんて罰当たりな…………)

 

「それであの者を排除できる可能性の高いクロード・ヴァインハルトに目を付けたのですが、彼はとある女の行動によって運命がころころと変わりますからね。それならばとその元凶たる女に狙いを定め、事象の改変に臨んだというわけです」

「とある女というのは………」

「貴女ですね」


 な、なるほど。エミリア・ローズを排除できる一番の有望株クロードに託そうとしたが、その周りをうろちょろする私によって彼の運命が軽率に変わるため、仕方なく私に目を付けたと………。

 

 何だか女神様にもクロードにも申し訳ない気持ちになる。

 確かにクロードをタイムリープさせたら、秒で問題が解決しそうだ。

 

「一度クロード・ヴァインハルトの従者にも目を付けたのですが、やはり魔力を持つ者の方がやりやすかったんですよね」

 

 そんなことをいけしゃあしゃあと言い切る女神様に「あ、トマスのことか」と思い至る。それにより何となくだが、点と点が繋がったような気がした。

 

「聖女は国に一人と決めております。なのでエミリア・ローズを排除し、新たな聖女を見繕う必要があったのです」

「そうなんですね」

「まあ、今のアレンスティア王国の現状で聖女なんて誕生させたらひと悶着起きそうですしね。しばらく時間を置いてから、再び聖女を誕生させることにいたしましょう」

 

 確かに今の状態で新たな聖女が誕生したら色々と複雑なことが起きそうだ。


 けれど、それでも今後誕生する聖女は苦労するだろうなあと同情してしまう。聖女エミリア・ローズの前例があるのだから、より世間の目も厳しくなるだろう。


 するとそれが顔に出てしまったのか、女神様がふふっと笑みをこぼす。


「大丈夫ですよ。エミリア・ローズのような者にならないよう、今度の聖女はしっかりとした親の元へ誕生させますから」

 

 そんな女神様の言葉にほっと安堵した。


 苦労する女の子が減るのなら、それに越したことはない。

 聖女エミリア・ローズがあのような性質であっただけで、これまでアレンスティア王国に尽くしてきた聖女の功績がなくなることはあってはならないし、未来の聖女が大変な思いをする必要はないのだから。


「なので次の聖女の誕生、楽しみにしていてくださいね!」

「はい!」

 

 女神様の言葉に頷く。


 少しずつ、少しずつ微睡んでいく意識の中、女神様が微笑ましそうに私をじっと見守ってくれた。



 

 ・

 ・

 ・




 数年後、私とクロードの元に女の子が生まれた。


 私と同じ薄茶色の髪に、丸い瞳。

 そして溢れんばかりの豊潤な聖属性の魔力。


 楽しみにしていてくださいね!という女神様の言葉を思い出したのは、言うまでもないだろう。




 


ここまで読んでいただき、ありがとうございました!

気が向いたら後日談などの番外編を書けたらと思います。

もし良ければブクマや評価をつけていただけると、とても励みになります。

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