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第26話 一方その頃天才魔術師は、再び




 

 アレンスティア王国王都にある魔術ギルド。

 その個人研究室にて、クロードは自身のデスクの上で打ちひしがれていた。それに同僚の赤髪の青年フランツと後輩のネリムが呆れた様子で言う。

 

「クロード、俺言ったよな?ソフィー嬢と話し合えって。なのに何で仕事してんだよ」

「フランツ先輩からあらかたの事情は聞きましたよ。今の内に覚悟しておいた方が良いでしょうね」

 

 クロードは彼らの言葉を大人しく受け止める他なかった。

 本当にその通りだったからだ。

 

 ソフィー・シモンズ。

 中等部の入学式に一目ぼれした令嬢だ。

 しかし高等部2年の頃、彼女に告白したが完膚なきまでに玉砕。おまけに「嫌いだ」とはっきり言われ、ソフィーから距離を置こうと決めたものの───結局彼女から離れられなくて結婚にまで漕ぎ付けたのだった。

 

 将来ソフィーの隣に誰かが居座るのなら、確実にそいつを殺してしまうだろう。

 流石に殺人を犯すわけにもいかない。だったらもう最初からソフィーと一緒にいるしかないじゃないか。

 俺のことが嫌いだって?俺だって俺のことが嫌いなソフィーなんて嫌いだよとか何とかぐるぐると思い詰め、自分の気持ちを整理することができず───今日に至るのだった。

 

「え?でもソフィーさんのこと恨んでいるんですよね?なら別に良いんじゃないですか?離縁して一生苦しめることはできないと思いますが、傷付けることは出来たんですから」

 

 ネリムがばっさりとそう言うのに対し、横のフランツが大きく溜め息を吐く。

 

「あのな?口ではこう言っているけど、ソフィー嬢のことが今もめちゃくちゃ好きなんだぜ?本当は傷付けたくなかったし、離縁なんかもしたくないはずなんだよ」

「へー?今も?でもソフィーさんってめちゃくちゃ性格悪いんでしょ?だってクロード先輩を振った時、あり得ないくらい罵ってきたって」

「う、うーーん。まあ、それはあるが…………」

 

 フランツもどうかと思うくらいソフィーはクロードをけちょんけちょんに人格否定し、手酷く振ったのだ。そこまで言わなくてもいいだろと思う程の罵倒に、フランツはもちろん同情した。

 

 しかもそのせいでクロードがソフィーへの愛と憎悪でめちゃくちゃになっている。

 

「クロード、お前はっきりしろよ。ソフィー嬢のことを愛しているのか?それとも本当に復讐するために結婚したのか?」


 フランツがめんどくさい同僚(クロード)に改めて尋ねる。クロードの脳裏に中等部の頃から今日にかけてまでのソフィーの姿が過った。

 

 中等部の入学式、彼女の可愛らしい楚々とした笑みに一目ぼれした。

 

 上級生からいじめられ、個人研究室の鍵を奪われそうになったところ助けてくれた。

 

 結晶病の治療薬の元となる、暗闇で青白く光る薬草を見て微笑むソフィーに目を奪われた。

 

 結晶病の治験で自信を失くす自分に大丈夫だと励ましてくれた。

 

 イザベラ様のシグレットリングを真冬の池に入って一緒に探した。

 

 高等部の舞踏会で、自分の身を顧みず聖女エミリアの正体を暴いた。

 

 善人の皮を被った悪女なんかじゃない。

 誰かの大切なものを自分の身を犠牲にしてまで守ろうとする、勇敢で優しい───世界で最も愛している女性だ。


「……───俺はソフィーのことを愛している。離縁もしたくない」


 そう思うと自分はなんて愚かなことを言ったのだろうと後悔する。

 もう決して許されないだろうし、許されるべきではない。

 

「でももう離縁確定ですよね?」

「おいおい」

「何でクロード先輩ってこんなに生きるの下手なんですかね?」

 

 ネリムの容赦ない言葉が軽率にクロードの心を抉る。


 今後自分は今後ソフィーに対して誠心誠意謝罪し、幸せな結婚生活を望まず、彼女に尽くしていくことしかできないだろう。

 

(待てよ?それだと俺だけが幸せじゃないか………?)

 

 もちろん離縁なんてして自由にさせることなんかできない。ソフィーは今後クロードという大嫌いな男から愛を受け続けなければならない。

 

 可哀そうであるが、別時間軸でソフィーを監禁した男にとってこれくらいしか思いつかなかった。

 

「それにしても変な女性だよなあ」

 

 するとフランツが何とでもないようにぼやく。

 

「クロードの話を聞く限り、ソフィー嬢って良い人そうじゃねえか。披露宴の会場であれだけ暴言を吐いたクロードにも怒ることなく、むしろ謝って来たんだぜ?そんな女性が必要以上に男をこっ酷く振るか?」

「それだけクロード先輩が嫌いだったってことでしょう」

 

 容赦ないネリムの言葉がクロードの胸に突き刺さる。


 しかしフランツに意見にも一理ある。

 というより、その時クロードはハッと思い出したのだ。


 16歳の秋、思いを告げたクロードに対しソフィーは必要以上になじり、振った。

 けれどあの時の彼女の顔は何故か泣きそうだったのだ。


 それに彼女は知っていた。

 聖女エミリアが呪具を使用してウィリアム殿下達を魅了していたことを、クロードがその調査をしていたことを知っていたのだ。

 

「どうした?クロード」

「いや」

 

 点と点が繋がりかけている。


 クロードはふと思案した。





 

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