復讐屋さんの奴隷くん⑪
復讐屋さんその⑪、投稿しました。次回、最終話です。
そして、終わりの日。
今日のクラスは、どこか浮足立っているというか、朝から落ち着きが無かった。
仲良くなった者同士が、顔を見合わせ、不安げにひそひそと囁いている。静かに、しかし確かな喧騒があった。
――むしろ、そうでないと困るのだが。
「な、なあ七原……」
タヌキ、もとい絈野が俺を呼ぶ。彼も、がいつもと違って、顔色が優れない。
〝そしてみんなと同じで、一つの茶封筒を手に持っていた〟。
「これ、今来たら机に入ってたんだけどよ。聞いたら、みんなもそうだったみたいでさ……」
「…………」
そう言って、封筒を見せる絈野。
しかし流石に、その中身までは俺に見せなかった。
その中身こそ、今の状況を生んだ原因であり、長谷を救う切り札でもある。
「お前、何か知ってんのか? っていうか、お前は持ってんのか? この紙……」
「……いや、持ってない」
絈野に対して、正直に答えた。
ここでその答えは、俺がやったと白状したのとほぼ同義に等しい。
「じゃ、じゃあ……これお前の仕業なのかよ!? どうして……」
「あ、長谷が来た。悪い、話はあとな。まあ見れば分かると思うけど」
「お、おい!」
「……復讐代行部の端くれとして、やることをやってくる」
今は長谷のために、普段使わない全力を、ここで使うしかない。正直、心臓が痛いほど暴れまわっている。
とんでもないことをやろうとする時は、本当に胃に悪い。やらかすのは俺の方なのに、まるで実刑を待つ死刑囚のような気分さえする。
それでも、息を大きく吐いて、気持ちを奮い立たせた。
がらりと扉を開けて、長谷が教室に入って来た。眼鏡は新調していないのか、普段とは違い、裸眼だ。謹慎が解け、二日ぶりの登校でも、長谷は澄ましたような表情をしていた。
つまり、なじられようが軽蔑されようが、耐え続ける覚悟を決めた顔。
……あるいはその心中に、弟の姿が映っているのかもしれない。
「……?」
その長谷に一斉に向けられる、不審の視線。
長谷も、すぐに眉をひそめた。いつもよりあからさまな視線を送り、クスクス笑いもしなければ、ざわざわと囁き合ったりもしない。不気味なほどの静けさが、この場に流れていた。
「ねえ、長谷ちゃん? ちょーっと良い?」
そんな折、作ったような猫なで声で大場とそのお友達が話し掛けた。
だが、その顔は不愉快そうに眉をしかめ、笑むように持ち上げたつもりの口元も、ひくひくとわなないていた。
「……何よ、アンタ。今更私に何の用?」
「はあ? とぼけないでくれる? 今だから話し掛けてんでしょうが。じゃなかったらアンタなんてスルーしてるから」
「?」
しかし長谷は、何のことか分からないというように、訝しげな表情を見せた。
その様子にとうとう焦れたのか、長谷の目の前に茶封筒を握りしめた手を突き出した。
「これよこれ! いったいどういうつもり!? こんなことして、ただですむと思ってんの!?」
大場がそう喚き散らすが、もちろん、長谷は大場の言葉に何も答えない。
いや、答えられない。当然だ、長谷にとっては、謂れのないことなのだから。
「……ねえ、さっきから話が読めないんだけど」
目の前の大場に対し、温度差すら感じる語調のまま、続ける。
「とりあえず、その封筒はなんなの? それが今騒いでる理由? やっぱり私にはイミフだし、とりあえず、どんなもんか見せてくんない?」
長谷がその無地の封筒を手に取ろうとすると、大げさな程の速さで後ろ手にして長谷から隠した。
「さ、触らないで! だ、大体、証拠もなくふざけたことばっかり書いて……!」
「へえ? じゃあ証拠もなくふざけたことばっか言ってたヤツはどこの誰だよ」
今しかないと思った時には、声が口を衝いて出ていた。
時機を見計らい、成り行きを見守って……残酷なまでのタイミングでネタ晴らしすることで、俺の作戦は一番効果を発揮する。
「七原……?」
果たしてその直感は正しかったのか、幸い、彼女たちは――そしてクラスの大半が、俺の方に注目してくれた。
「何アンタ? 勝手に話に入ってこないで。 関係ないやつはすっこんでなよ」
「ああ、そうだな。俺は関係ないふりをしてきたただのヘタレだ。……でも、俺は復讐代行部の部員でもある。ここにいる全員は知ってるだろ?」
たった一言、『復讐代行部』という俺の言葉に、クラス中に波紋が広がる。警戒、不安、そして怖れ。
復讐代行部の肩書は、思っていた以上にこの場に浸透していたのだ。
歩み寄って、大場と長谷の間に割って入った。
長谷は、何も言わなかった。長谷に背中を向け、大場と対峙する。まるで、大場から長谷を庇うような構図になっていた。
「人の過去って、面白いよな。黒歴史ってよく使う言葉だけど、知られちゃまずいことってのは絶対誰にでもあるもんなんだな」
「なっ、アンタ、それどういうこと⁉ 何を知ってるの?」
「なにってそりゃ……全部だよ。その中、見たんだろ? 復讐代行部は何だって知ってるんだぜ?」
大場の声は、震えだしていた。
思えば、彼女こそ、復讐代行部――もとい、その長であるとばり姉の恐ろしさを実感しているはずだ。長谷を陥れる時に聞かされていたであろう、綿密な策と、それを考え出す頭脳に、一種の畏れを抱いているような素振りも見せていた。
だったら、そんな人間が所属する団体の事を、怖れないはずがない。とんでもないものを敵に回したかのような感覚も、少なからずあるはずだ。
「そうだな、例えば……今からお前の封筒の中身、俺が代わりに言ってやろうか? 大場」
「ふざけんなこのクソオタク! 人の事勝手に調べといて暴露とかキモイんだけど!? マジさいってー!」
お前が言うな、という言葉が口を衝きかけて、慌てて呑み込む。
ここで乗せられるわけにはいかない。言葉は慎重に選ばないと、この先が続かなくなることだってあるのだから。
「……その最低なことを、長谷にしたのは自分で分かってんのか? お前は言ったよな、噂は広めたもん勝ちって。まずこの場での見せしめとして、あの時長谷にやったことをそのまま返してやろうか?」
「はあ!? 何コイツ、冗談でしょ!?」
俺の言葉に、ようやく現状を理解し始めたのか、大場が叫ぶ。
この状況は、あの時の長谷の立場が、今度は大場を含めたこのクラス全員にすり替わったという、ただそれだけの話だ。
俺は、ぐるりと辺りを見回した。件の茶封筒を片手に、俺に視線を集めている。戦々恐々と、俺と目を合わせただけで、誰もが身体をびくつかせていた。
その封筒の中身は――――。
「ここにいる全員、よく聞け!」
出来るだけ声を張って、堂々と、演説するかのように言葉を紡いだ。
勢い、雰囲気、流れを作らなければいけない。今だけ、俺に耳を傾けさせるようなムードを。
そんな時、ふっと頭をよぎったのは、とばり姉の姿だった。
「各自、その中身は確認してくれたと思う。それを誰かに話したりしたか? 話せないよな? 本人ならその内容が本当だって分かるはずだ。〝なんたって、そこに書いてあるのはお前ら自身の事なんだからな〟!!」
封筒の中の、一枚の紙には、その持ち主のありとあらゆる個人情報が記されている。
年齢とか生年月日とか、そんな生ぬるい物じゃない。住所、メールアドレス、主に人には言えない過去、経歴、趣味嗜好、エトセトラ……。
すべて、復讐代行部の持つ情報だ。日鞠曰く、とばり姉が寝ずにかき集め続けた『弱み』。情報集めの時には、まさかこんな形で使われることになるとは、夢にも思わなかったと思う。
そこには、プライバシーも何も存在しない。見るだけでその人間の全てがありのままに映し出されている。その紙は、何物にも守られていない弱点そのものだ。
「そして復讐代行部には、その全ての情報をあらゆる手で公開する準備がある!」
今度こそ、俺の言葉にざわつくクラスメイト。当然のことだろう。
例えば、この学校中に広めるだけでなく、ネットに情報を手あたり次第にぶちまけてしまったら、どうなるか。
「ふっ、ふざけんな! 復讐代行部っつったって、ただの奴隷の癖に!」
大場が、俺の宣言に食って掛かる。化けの皮がかなり剥がれてきている。その方がむしろ怖くない。大場の場合、威勢がいいのは、見せかけだけだと知っている。
「もちろん、今すぐどうこうする気はない。全員が今から俺の言うことを守れば、俺も何もしない。たった一つのお願いがある。簡単だろ?」
それだけ言って、俺は長谷の肩に手を回し、そして親しげに抱き寄せた。長谷のよく梳かれた髪が、俺の顔をくすぐった。
「え、ふぇ?」
「ごめん、合わせてくれ……」
戸惑う長谷を、今は無視する。見せつけるように、肩に掛けた手に力を込めた。
「もしこれ以上長谷に手を出すやつがいたら、こっちも黙っておかない。復讐代行部の力で全員の封筒の中身を全部ぶちまける! これがお前らへの、長谷沙雪の復讐だ!」
ゆったりと息を吐き、そして腹の奥からふりしぼるようにこう告げる。
俺は、自分ではそこまで頭は悪くないと思って生きてきた。余計なことには関わらず、生きやすいように過ごしてきたつもりだ。
長谷は、それは流されているだけだと言った。自分の軸が無いと。
結果、その言葉は胸に刺さり、俯瞰することを止めた。
そして、俺の中の『自分』は、思っていた以上に欲張りな大馬鹿野郎だったらしい。
最後を飾るとどめの宣言は、口から自然と飛び出ていた。まるで、子供の頃に見たアニメの主人公のように、潔く豪胆で、笑われてもおかしくないくらいクサすぎる言葉を、口に出そうとしている。でも不思議と、これだと思えた。
勢いを殺さず、勝ち鬨をあげるのは今しかない。後で悶死することになっても、もう構わない。
言わなくてはいけないこととはいえ、俺はこの台詞を、悪い意味で一生忘れないだろう。
「文句があるやつは俺が受けて立ってやる。その代わり長谷には指一本触れさせやしない! 〝たった今から、この長谷沙雪は復讐代行部部員である七原空希の雌豚だあああああああああああああっ〟!!」
時間の感覚が麻痺したこの場で、沈黙の時間なんて計りようがない。
長いようで、短いような静寂の後。
クラスは、学校中に響き渡るような叫び声に包まれた。
❖❖❖
「正直、スマンかった」
土下座とは、土の上に直に坐り、平伏して座礼を行うこと。日本の礼式のひとつで、本来は極度に尊崇高貴な対象に恭儉の意を示したり、深い謝罪や請願の意を表す場合に行われる。以上、某フリー百科事典より抜粋。
だからどうしたと言われれば、俺はこう答えたい。『土下座』は決して冷笑に伏されるものじゃない。日本が誇るコミュニケーションツールであると。
「……言うことはそれだけ?」
「返す言葉もございません、って解釈してくれないか?」
「ざけんな」
床に着いた額がきりきりと痛みを訴える。頭に乗っかった長谷の足がじわじわといたぶるように重くなっていく。場所が誰もいない放課後の教室なのが唯一の救いだった。こんな痴態が誰かに見られようものなら、三日は部屋に引きこもっていられる自信がある。
「あんなこと言う意味はあったわけ? ねえ、どうなの?」
あんなこと、と言われれば、思い当たるのはあの長谷クソビッチ宣言だろう。
あれから、クラス全体の空気が形容しがたい微妙な雰囲気になった。俺のカミングアウトに、どう反応したらいいのか分からないのだと思う。
多分、俺と長谷が恋人という誤解はもうとどめようがないところまで行ってしまった。今では一年の間では既に公認の中になっていても不思議じゃない。長谷には悪いことをした。
改めて思い返せば、とんでもないことを言ったものだと思う。
「聞いてる? それともこのまま潰れる?」
長谷がとてもいい笑顔なのは見なくても分かる。
「き、聞いてる聞いてるから! あれはあれで必要なことだったんだって!」
「ふうん、私は他人様の奴隷に好かれて幸せです、とでも言えって?」
「でも、それが俺がお前を守る体の良い理由だと思ったんだ!」
自分でも、呆れるほど歯の浮くような言葉だとぼんやりと思った。自分が軟派な性格になってしまったような錯覚を覚える。
「守るとか何様のつもりよこの精神ストーカー男」
とうとう、足にぐりぐりと回転が掛かり始めた。
「大体、私は守ってもらいたくなかった。お情けなんて……」
「いたっ! そ、そんなもん知るか」
ほんのかすかに震える声に、ばっさりとそう返してやる。
「ああ? 蹴って欲しいの?」
すると一転、ドスの利いた声が降りかかった。きっと、かなり怖い形相で俺を睨んでいるに違いない。
「すんません、それだけは勘弁してください」
流石にそこまでされる義理は無い、はずだ。
「……実際、本当の理由を話してたら長くなってたし、俺だって自分の事ながら気付くのに時間掛かったし。お前を守るってのも、ただの同情とか下心なんじゃないかって、自分でもなんだそりゃって思ったりしてたんだからな」
「……下心とかなかったわけ?」
試すような口調に応えるように、断言してやる。ここだけは言い切れるだけの自信があった。
「下心一つでこんなことしないって。ただのお情けだけならとっくに諦めてた。長谷じゃなかったら、ただの可愛い子のためだったら、ここまでは出来なかった、と思う」
ぴた、と踏んでいた足の重圧が消えた。後頭部の感触もなくなって、土下座のまま上を仰ぎ見た。
「……ふん。ばーか」
それだけ言って、そっぽを向いてしまった長谷。
ああ、良かった。
言葉に出さなくても分かる。その顔が西日の逆光で影を落としていても分かる。
長谷に乗っかかっていた重荷を、俺は少しでも軽くすることが出来たのだ、と。そのことに、自分の事のように安堵していた。
「……それにしても、よくあの久代とばりを説得出来たわね。一体どうやったわけ? 従弟だったから? それともあの女なりのお情け? まあ確かに、それは屈辱だけど」
「いや……説得なんかしてないよ」
「え?」
いい加減体を起こして、長谷に答える。
軽く体を払う素振りをしながら、ちらりと教室の扉の方を見る。
「説得はしたけど、全然聞き入れてもらえずだったよ。長谷を部員にして恩を売ってこき使えば、とかなんとか言ったのに論破されてさ……」
「それも聞き捨てならないけど、じゃあ、アンタまさか、今まで一人で……?」
「まあ、敢えて言うなら……今からもう一回やり直すところ、ってとこか。許してもらえるかなじられるかは分からないけど」
ここからは、俺が自分で自分を守るために、最後にやらないといけないーー。
男、七原空希。一世一代の駆け引きが始まる。
「……まあ、怒りたい気持ちは分かるけどさ。自分の知らないところで、自分に関係することが勝手に進んでいくのって、何か腹立つもんな」
〝教室のすぐ外に潜む人影に向けて、俺は口を開いた〟。
しっかりと足に地を付けて、根を張るようにその場に佇んだ。後ろの長谷が、はっと息を呑む様子が伝わってきた。
「でももうちょっと、愛想のいい顔してくれよ。せっかく、俺なりに頑張ってみたのにさ」
ここまで来るのに、本当に長かった。今まで振り返れば、散々迷って、遠回りしてばかりだった。
それらの選択が正しかったのか、もっと上手くやれたんじゃないかと、今でも、うじうじと悩み続ける時がある。
でも、それでも。
おそらく唯一のこの道を辿ってこなかったら、何かが違っていたらと思うと。
こうしてここにいることに、どこか満足している俺がいた。
「〝なあ、とばり姉〟」
ラスボスの、お出ましだ。
いつものゴシック調の姿が眩しい。夕日が描く陰影に侵されない純白が、どこか神々しさすら感じさせた。学校内なのにも関わらず、ドレスどころか革靴まで身に着けているところはこの際無視した。
「……私は警告したはずよ、アキ」
その第一声は、静かな怒りに満ちていた。
流石に耳が早い。
俺の行いをすべて見抜いた上で、冷たく責め立てる。さながら今の俺たちは、推理物で終わり際に相対する主人公の探偵とその犯人だろうか。
「……メールは、見てくれたか?」
「『今日の放課後に例の教室で』……馬鹿ね、そんなことしなくても、私から呼び出してたわ」
「だろうな……日鞠さんは?」
「あの子は家に置いてきたわ。今頃べそかいて料理の準備でもしてるんじゃないかしら」
「うあ……そりゃ悪いことしたなあー……。帰ったらすぐに土下座しなきゃ」
「……アンタって、土下座してばっかね」
呆れるような口調で、長谷がそう突っ込みを入れると同時、とばり姉が笑い出し始めた。
「ふふ、うふふふふ……『帰る』ですって? どこに? アナタの背反行為を、私が見逃すとでも?」
「…………」
かつ、とその革靴が小気味いい音で床を叩いた。
じり、ととばり姉が俺に迫る。
「私の調べたものを、まさかクラス全体の脅しに使うとはね。日鞠から過去の話を聞いた そうね? そこから思いついたんでしょう? その通りよ。〝アキがやったことは、そのまま昔私が日鞠にしてあげたこと〟。クラスのイジメ主犯の情報を吊し上げることで、他の人間への見せしめにもなる」
「……ああ」
「と、どうやらそれだけでもないようね」
いつもの、すべてを見聞きしたかのように事の説明をしてみせるとばり姉。当然のごとく、すべてその通りだった。
「今広まっている噂に、こんなものがあるわ。『長谷沙雪は七原空希と恋人関係で、そこから久代とばりと通じてるんじゃないか』ってね」
「はああっ!? ちょっ、それどこのどいつが言ってんの!?」
「い、いやいや長谷、ひとまずそこは置いとけって」
案の定、別にとばり姉が言ってるわけでもないのに長谷がその言葉に噛みついた。こうなることは分かってたが、何も首筋まで赤くして激昂しなくてもと思わなくもない。
「……とにかく、アキ。アナタは逆にそれを利用しようと思ったのね?」
「思えば、どうして長谷はイジメられて、俺はイジメられないのかって思ってた。復讐代行部なんてところにいる俺が、どうして、って」
とばり姉の悪名は、校内中に広まっている。入学したばかりである俺のクラスにまで、逆らってはいけない人間として囁かれるほどに。
そんな人間に近しい俺が、何故イジメられなかったのか。
「で、気づいたんだ。俺は、復讐代行部の部員だったからこそイジメられるんじゃなくて、逆にイジメられることがないんだって。だって、ちょっかいを入れて、もしもとばり姉の報復が来たら、たまったもんじゃないからな。〝それはつまり、長谷も部員だとみんなが勘違いさえすれば、とばり姉のことが怖い人間は手出しできなくなるってことだ〟。そうだろ?」
「…………」
それには、人知を超えると言っても過言ではないほどの実績と、それだけの影響力が無いと為しえないことのはずだった。ひいては、とばり姉の力如何によって、俺の作戦は左右される。
結果は、あまりにも大成功だった。それこそ怖いくらいに。今日の時点であっけなく、長谷のイジメは鳴りを潜めた。
まさか俺も、本当にクラス全員の情報をとばり姉が持っているとは思わなかった。
もっとも、そうでなければ、さらに解決に時間が掛かっただろうが、それでも。
言い換えてしまえば、とばり姉のとんでもない力が、長谷を救ったのだ。……こんなことを言えば、まず間違いなくビンタが飛ぶだろうが。
「そのために、日鞠まで利用して……」
「ああ、とばり姉に信頼されてる人間がいなかったら、こんなこと出来なかった。俺は書斎にも入れなかっただろうしな」
そんな中で、日鞠の存在は大きかった。おそらく、今回の俺のやり方の中で一番のMVPだろう。とばり姉の秘書ばりの人間が味方になれば、百人力もいいところだ。
「日鞠さんに委ねる部分を見誤ったな、とばり姉。あの人に信頼を置きすぎたから――――」
「いいえ、見誤ったのは日鞠の事じゃないわ」
俺の言葉を遮って、とばり姉は告げる。
「この件に関して、私がミスしたのは、アナタのことよ。アキ。……私はアナタを過小評価しすぎてたみたい」
「……え?」
一瞬、何を言ってるのか分からなくなった。聞き間違いかと思ったくらいだ。
その次に続けるべき言葉が、頭から抜け落ちてしまった。
「だってそうでしょう? アナタはあれが無ければ、これがこうだったから、なんて言ってるけれど、それを実現したのは、他でもないアキ自身じゃない。はっきり言って、アナタがここまでやるとは思いもしなかったわ」
そんな俺に、さらにとばり姉が肩をすくめて続ける。
「誇りなさい、アキ。アナタは完全に、この私の想像を超えたのだから」
「っ」
そう話すとばり姉の表情は、柔らかく微笑んでいるように見えた。
困惑。動揺。狼狽。
思いがけないとばり姉の言葉に、俺はつい呆けてしまっていた。
今はじめてとばり姉に認められたような気がして、一言で表せない感情が胸の内でざわついた。
「まったく、アナタのせいですべてが滅茶苦茶。数か月かけた計画なのに、台無しもいいところよ。さあて、一体どうしてくれようかしら……」
「…………」
「ねえ、アキ? 私、言ったわよね? 邪魔するならいくらアキでも敵とみなすって」
「えっ? あ、ああ……」
覚えている。とばり姉に、いらないもの扱いされたような気がした時のことだ。
「アナタを追放するのは簡単よ。でも……それが惜しいと思う私もいるの」
とばり姉の手が伸びた。そっと、俺の頬に触れる。
見上げる瞳は、感情の波に揺らいでいる水面のようだった。
「アキは、自分で思っているより賢いわ。でも、もういいでしょう? これで満足したでしょう? アナタは、ずうっと私の味方でいればいいじゃない」
「え、いや、その」
畳みかけるように、彼女の言葉が風のように耳に流れる。
「私なら、アナタを活かしてあげられるし、私だけが、アナタを認めてあげられる。ねえ、そうでしょう……? だから私のそばにいて。私を満足させて頂戴……?」
「……俺は」
誘うような上目遣いに、歓迎するように頬を撫で付ける手。この絡まりつくような蠱惑的な雰囲気を、俺は前も見た。
長谷に願いをかなえてやると言った、あの時だ。結局、あれも演技だったわけだが。
そしてこれも、きっと演技だ。RPGでよくある『世界の半分をくれてやろう』発言よろしく、俺を罠にかけようとしている。
そう分かっているのに、とばり姉の瞳にはどこか純粋さすら感じられて、振りほどけない。
もしここで頷いた時には、どうなる?
逆らえば、今度は俺が長谷と同じ目に遭うのかもしれない。俺が彼女の敵になってしまえば、彼女がその気になれば、俺はいとも簡単に潰されてしまうだろう。
そう考えれば、これは破格の提案なんじゃないだろうか。
「…………」
なんて、なんて甘い誘惑。
やはりとばり姉は、鬼というよりも悪魔だ。
その言葉が、本当なんじゃないかと思ってしまう。信じてしまいたくなる。とばり姉の優しさなのだと。
俺がとばり姉に認められたいと思う気持ちも、無いと言ってしまえば嘘になるから。
俺は本当に頼られているんじゃないか、と。
そう思うことこそが彼女の思う壺なのだとしても。
か弱くて小さなその手を、そっと重ねてしまいそうになる――――。
――――アンタに、『自分』ってやつはあるの?
「…………」
「……アキ?」
「……ごめんな、とばり姉」
俺は彼女の手を取って――――そっと下ろさせた。
「とばり姉、ありがとう……嘘でも俺を賢いって言ってくれて」
「嘘なんかじゃ――――」
「でも俺は、とばり姉の味方にはなり切れない」
とばり姉の目が、見開かれた。その瞳の奥が、もう一度揺れている。
その感情は、動揺だった。
あのとばり姉が、驚いていた。
あるいは、これが初めて、彼女の虚をついた瞬間だったかもしれない。
「俺はやっぱり、とばり姉が言うほど賢くなんてないからさ。今ここで嘘ついて誤魔化したとしてもしょうがないから断言する。今回みたいに、もしまた俺が気に入らないこととか、納得できないことがあったら、その時は――――その時になったら、俺はやっぱり、とばり姉を止めるよ」
「ほ、本気で、言ってるの……?」
「ああ。だから、ごめん」
ちらり、と一瞬だけ後ろにいる長谷を見た。
「俺って、自分で思ってたよりも結構『自分』勝手なやつらしい」
「ど……どうして? どうしてなの! どうして、思い通りにならないの……!?」
あのとばり姉が慌てふためく様は、何故なのか、痛快とは思わなかった。
「どうして、いつもは……いつもなら、こんな」
この答えは、想像だにしていなかったのだろう。とばり姉には、自分の言葉に絶対の自信があったらしい。
事実、出会ったばかりの時なら、俺はまんまと乗せられてしまっていたと思う。
「……ほら、これはとばり姉に返すよ」
そんなとばり姉に、一枚の紙を差し出した。ずっと、とばり姉から預かっていたものだった。
その軽い紙切れを、とばり姉はぱっと手に取って一瞥した。
「奴隷……宣誓書」
「〝でも、だからこそ、俺は奴隷になる。いつでもとばり姉を止められるように〟。あ、復讐全部を否定しようって気はないから。日鞠さんみたいな復讐なら、俺も止めやしない」
その署名欄には、俺の名前が刻まれている。もちろん、昨日に俺自身が書いたものだ。
これをとばり姉が受諾すれば、俺はとばり姉の奴隷ということになってしまう。
――それでも、俺は俺そのものを捨てない。例えとばり姉の奴隷となったとしても。
「もし俺の言うことが気に食わないなら、俺をここでクビにしてくれ。それを破り捨てたらいい。簡単だろ?」
「ふ、ふふ……ふふふふふ」
怒りをこらえるかのように、その笑い声は震えていた。
「この私に、交換条件? ずいぶん偉くなったものね、アキ。言っておくけれど、アナタを拾う義理は私には無いのよ? 従弟である自分を、見捨てないとだろうなんて思ってる?」
「…………」
「わ、私は復讐代行部の久代とばりよ? アナタみたいな奴隷なんて、いつでも切り捨てられるのよ……?」
その声は、いつも通り冷え冷えとした声音だったが、少しだけ震えていた。
何も、言わない。言えなかった。
自分でも、何やってるんだとと思う。自分の身を守るためとは何だったのかと。今の俺は、完全に墓穴を掘るどころか、もうすぐにでもその穴に飛び込まんとしている。
でも俺の答えは、もう決まっていたから。
なにより、ここでとばり姉の誘いに乗れば、結局何も変わらない。何も知らなかった時に逆戻りだと思った。
――――これでとばり姉が俺をどうするかは、もうとばり姉次第だ。
「私……私は」
「…………」
「くっ……! こんなもの!」
行き場を無くした感情が飛び出したかのような音が、静かな教室中に木霊した。その一瞬だけ、俺は強く目をつむっていた。
「…………」
そっと、確かめるように目を開くと、宣誓書は、とばり姉の手の中で握りしめられ、原型を友止めることなく大きく捩れ歪んでいた。
〝だが、それだけだった〟。
その後に続くはずの、紙が破れるような音は返ってこない。
「……とばり姉」
「次はないわ……」
底冷えしそうなほど低い声で、とばり姉がぼそりと唸った。
よく見ると、その手はわなわなと震えていた。
きっ、と睨みつけてくるとばり姉。
ぞっとするような瞳が、俺を射抜く。瞬間、金縛りのように体が硬直した。
まるで獣が見せるような敵意をむき出しにする彼女を前に、身動きが出来なかった。
「もう二度と、こんなことはないわよ! アキ、アナタは今日一日で、私の我慢の限界すれすれを通ってるわ。覚えておきなさい! アナタのこれからは、私が握っているということを。長生きしたかったら、私をこれ以上怒らせないことね……!」
強い勢いでまくし立てられる。肩をいからせ、今にも掴み掛らんとする様子だったが、やがて身を大きくひるがえした。ばっ、と白いスカートが舞う。
そして、とばり姉はつかつかと足早にこの場から去った。ぎゅっと奴隷宣誓書を握りしめながら。
「…………」
……危機は去った。
そう実感したのは、ずるりと自分の体がへたり込んだ時だった。情けないことに、腰が抜けてしまっていた。
「七原!?」
長谷が声を上げた。それまで黙って事の顛末を見ていたところよりも、すぐ後ろにその存在を感じる。
俺がこんなことをしてまで助けたかった存在を。
「あー、怖かった……。死ぬかと思った……」
「馬鹿ね……アンタみたいな一般人があの女に真っ向から挑むなんて、正気の沙汰じゃないわ。あいつも伊達に復讐代行部なんてふざけたもん束ねてなんかないわよ」
「……ライオンに見逃されたシマウマって気分」
特に最後の一瞬は、本気で食い殺されそうな殺気すら感じた。目の前のとばり姉が、彼 女の皮をかぶった野生動物なんじゃないかとさえ思った。
「……結局、あいつも復讐に溺れた人間ってことか」
一体何を考えているのか、意味ありげにそう呟く長谷。
「何のこと?」
「別に……ほら」
「ああ、ありがとう」
長谷が手を貸してくれた。それを握ると、力強く持ち上げられた。階段から突き落とされた時もそうだが、存外長谷は力が強いらしい。
「……何よその顔。何か言いたいことでも?」
「い、いや……」
「はあ……それにしても、見ててどうなるかと思ったわ。てっきりシスコンのアンタだから、久代の甘言に乗せられると思ってた」
「……もしも俺があそこで頷いてたら?」
「別に難しいことじゃない。〝それこそ、あの女のために役に立つようにされてたでしょうね〟。本物の奴隷人形として」
「……それって、今の俺とどう違うんだ?」
「アンタとかあの日比木とかいうメイドはまだマシな方。あいつのために命も捨てられるような畜生以下を、あの女は何人か別に従えてるって聞くし」
言われて思い出したのは、美島と呼ばれたあの大男だった。
あれだけ体格差があっても、美島は終始とばり姉にへりくだっていた。あの男も、そうなのだろうか。
「……つまり、そんな人間に改造される、ってことか」
「平たく言えばそういうことね。あれは久代の罠だったけど、本気の目だった。抵抗権を要求出来るところまで持って行ったのはラッキーだったんじゃない」
やっぱり俺は、危ないところだったらしい。取引を持ちかけるはずの側がいつの間にか主導権を握られて、甘い言葉に釣られて、取引されかけていた。引き込まれかけていた。
――――もう少しで、間違った答えにたどり着くところだった。
やっぱり、とばり姉は恐ろしい人だ。
そしてそれ以上に、こともなげに答える長谷にぞくりとした。
そして考えてしまう。もし俺があの時、とばり姉に手を差し伸べていたら、長谷は止めてくれただろうか。
「……だから何よ、その顔は」
「……あ、のさ」
「ん?」
「長谷は……助けてくれてたか? もしも、俺がとばり姉の口車にまんまと乗せられてたら」
助けたから助けてほしいなんて、長谷にすれば勝手な話だ。でも、考えれば考えるほどどうしようもなくて、思わず尋ねてしまった。
「……さあ。どうだろね。多分見捨ててたんじゃない」
結果、期待していた言葉は返ってこなかった。正直、落胆を隠せない。
「そっか……」
「でも、私が言えることが一つある。アンタに対しての不満がね」
「え……?」
が、長谷の言葉には続きがあった。
突き放すかのように、断罪するかのように俺を見据えた。
「アンタさあ、いちいちそんな自信なさげにしてるんなら、無理に強気に振る舞おうとすんな。ここまでのことやっといて、舌触りのいい言葉だけ並べて、自分に酔って格好つけるなっつの」
「…………」
「私はさっき、七原に言った。あの時の久代とばりは、本気の目をしてたって。つまり、あの時のあの女の言葉も本当ってことよ。分かる?〝あの久代とばりが、アンタを賢いって言った言葉は嘘じゃないのよ〟」
「あ……」
目から鱗とは、このことを言うのだろう。我に返ったような心地で、長谷を見返した。
「……七原は、あの久代とばりが認めたんでしょ? あの高慢ちきな糞女が、誇りに思えって言ってたんじゃん。それなのに、自分のやることに誰かの採点とか、助けを求めるようなコスいことすんじゃない」
そこまで話し続けて、長谷が俺から顔をそむけた。無意識だったのか故意なのか、知る由は無い。
「だから、その……そう、がっかりさせないでよ。アンタは、私に出来なかったことをしたんだからさ」
……そうだった。ああ、そうだ。彼女の言う通りだ。
長谷の言葉一つ一つが、俺の中に音も立てず染み込んでいく。すとん、と今度こそ何かが落ちた感覚があった。
結局俺は、本質そのものが変わったわけじゃない。誰かの言葉に支えられて、ここまで来た。最後の最後、大詰めに救ってくれたのは、長谷の言葉だった。
やっぱり俺は、この場にいるには長谷よりも不相応で、とばり姉よりも未熟だ。自分の力なんて、偉そうに言えない。
今までの俺は、自分の軸がブレてばかりの昼行燈だ。流されるままに、威勢のいい言葉だけ並べるしかないのはもううんざりだ。
やらずに後悔せず、やってからも後悔せず。やることをやって堂々と出来ること。
長谷のように――――そして、とばり姉のように。
俺にはないその二人の強さが、眩しかった。
だから、俺は彼女たちを重ねて見ていたのだろう。
二人に追いつくために、こんなことをしたのだろう。
「…………」
「…………」
「…………」
「……や、な、何か言えよ。反応してよ。語った私が馬鹿みたいじゃん」
「……ああ、ありがとう長谷。もう泣き言は言わないし、迷わないから」
他ならぬ長谷がそう言うのなら、もっと堂々と自分勝手になろう。思えば長谷だって、俺に散々勝手なことをやってきたのだから。
長谷が、ゆっくりと視線を俺に移した。靄がかかっていた気分が晴れたようだった。ひょっとして俺は、何か外面でも変わって見えるだろうか。答えは長谷のみぞ知るところだが。
その目をしっかりと捉えて、話し掛けた。
「それじゃあ実はさ、俺も、長谷に対して不満があるんだよ。しかも何個も」
「は?」
一気に俺を見る眉根が顰められたのが分かった。流石に突然すぎたか。思わず、苦笑する。
「だって俺、長谷に階段から突き落とされて怪我したし?」
「うっ」
「その後も散々馬鹿にされてきたよな。あ、ってかとばり姉に負けた長谷が俺を馬鹿にする資格なんてもう無いよな」
「ぐっ。あ、アンタ、急に調子に乗って……!」
ぶち切れられる前に、さらに言い返す余地が無いくらいに言い連ねていく。
「俺が奴隷だってお前が言いふらしたから、高校の友達なんてどころじゃないし」
絈野という例外もいるけど。
「そういえば金貸したまま返ってこないし」
「……ゴメン、お金の件はもう少し待って」
意外にそういう所では実直らしい。
「改めてみたら、俺って結構長谷に色々やられてるし? 今からお前に復讐くらいしても罰は当たらないんじゃないかなー……とか言ってみたりして。だってそうだろ? 今までのだって、とばり姉が復讐代行の名目で長谷を潰そうとしてやったことだし」
「…………」
ついに黙りこくってしまった。その沈黙は、肯定の意だろう。とりあえずは、俺の言葉はある程度納得せざるを得ないと感じているらしい。
長谷の性格上何を言われても気にしないと思っていたが、どんな心境の変化か、少し堪えたのかもしれない。そろそろ、ここらで助け舟を出すことにするか。
「…でも、とばり姉のやったことは俺にとってはやり過ぎだと思った。長谷だって、あらぬ誤解でクラス中から嫌われて、酷いイジメまで受けてきた」
「…………」
「あの人はそのつもりだったんだろうけど、だから俺が止めようとした」
それに俺のせいで、復讐代行部の人間という認識までクラス中に植え付けてしまった。これでもうイジメられなくて済むとはいえ、俺と同じく避けられることは間違いないだろう。
「……回りくどいわね。結局私をどうする気? 言うだけ言ってみなよ」
「俺の復讐は……『お願い』だよ」
「……お願い? 私に出来ること?」
疑問符を浮かべる長谷に、俺は頷く。
「長谷にしか出来ない、簡単な『お願い』。それもたった一つだけの――」
実を言うと、最初からこの『お願い』は考えてあった。夢のある願望という形で、俺の一方的なワガママとしてずっと心の中にあった。
助けたんだから言うことを聞けと言っているようで、今まで躊躇っていたが。
でも、長谷がそう言ってくれるのなら。
これくらいの『お願い』ならしてもいいんじゃないか?
欺瞞だ、偽善だと笑うヤツは笑えばいい。少なくとも、今目の前にいる少女には、今俺を笑えないのだから。
――これが、俺の『復讐』だ。
一体、今の俺の顔はどれだけ赤く染まっているだろう。正直、朝の告白もどきよりも数倍照れくさい。
向かい合って、じっと待っている長谷。薄暗さにまぎれてその顔が見えないのが残念だ。
唇を舌でなぞってから、口を開いた。
「今まであったことも、俺たちの不満も、お互い全部無かったことにしちゃってさ、今度はちゃんと友達になってくれないか?」
たった数秒の言葉が、教室に跡形もなく染み入った。
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