決着 〜その頃、バニング達は……〜
構えをとっていたオルトロスは突如飛来した剣のようなものを片手で受け止め流血していた。
「なっ……?! なんだ、こりゃぁ!?」
それはソードメイル・クロコダイルの鱗……そこら中に散らばっていたので拝借し、僕が投擲したのだ。……残りの魔力を全て使ってね……!
「……お互い『奥の手』は、とっておくもの……だろ。……【全開放】……!」
止まる事の無い必殺の刃と化したソードメイル・クロコダイルの鱗は、オルトロスの掌から肩までを貫き引き裂いていく。
「く、クソッタレがぁぁぁっ!!」
……そして、晴天の双剣士が鮮烈な刃を放つ。
「「ダブルクロススラーーッシュ!!」」
(だ、ダメだっ!! 構えがっ! 【絶壊崩爪】が……放てな──)
ザンッ。
オルトロスの双頭が宙を舞い、血飛沫が決着の合図を告げた。
「ち、ち……畜生……! 折角蘇ったのに……もう終わり……かよ……!」
「り、リリィに、恨み言……言われちま……う」
意味深な言葉を残した人狼達は、水面に沈み……目から光が消える……。僕達は勝った……勝ったんだな……。
オルトロスの亡骸に近づいて黙祷を捧げる……凶悪なモンスターに違いは無かっただろう。……だけれども、この死闘が有ったからこそ、僕らは更に強くなれた。
「「あっくん〜!! やったぁ! 勝てた! 勝てたよぉ!」」
僕の後ろから勝利の喜びを表す様に2人のサニーが抱きついてきた……!
「う、うん!/// そうだね! 嬉しいなぁ……///」
『増殖』効果の補助を受けたサニーは強さも2倍、可愛さも2倍……抱きつかれて当たる柔らかいものも2倍……いや、4倍? と、とにかく最高だ。
「「ところで、私達どうやったら元に戻るの?」」
「えーっと、【リセット】!」
……。何も起こらず、サニーは2人のままだ。
恐らく、初めて使う種類の魔法は効果時間を終える感覚を理解すれば次回から【リセット】が有効になるみたいだな。
「と、とりあえず待っていたら元に戻るよ! 大丈夫!」
サニーの魔法が切れる間に、戦利品と言う名の素材を集める事にした。相当にレベルの高いモンスターだったから売値も加工品としても一級品だろうな……と、考えてる間にサニーは1人に戻っていた。
残るは、未だに存在する黒い円……『異界の門』
僕達は異界の門を今日初めて見たのだ……閉じ方が有ったとしても知らないぞ……。
ビリ……ビリ……バァン!!!
突如、稲妻が黒い円の周囲を巡り異界の門が消失した。
「き、消えた……!」
ホッと安堵した矢先……。
ゴゴゴゴゴゴ……!
「なっ!? 何の音だ?!」
地鳴りが響き渡り、僕達は動揺した……その後、洞窟の方から女性の甲高い金切り声の叫びが聞こえてきたのだった……。
♦︎
──話は少し遡る……アライズ達がオルトロスを倒した時、バニング達のパーティはジェノ鍾乳洞奥地の敵に手間取っていた。
「うぉぉっ!!」
ゴリラスの戦鎚が、アーマードタイプのレッドオークを砕く。
「ふぅ〜……やっと倒せましたねぇ」
水術士ルージュが、ヘトヘトになりながらボヤく。
「全く……。君達、折角僕が『攻撃力2倍』の補助をかけてあげてるのに、手間取っちゃって不甲斐ないなぁ……」
「えっ……! でも、その魔法途中から効果切れてましたし……バニング様が攻撃魔法もっと使って頂けた方が楽だったかなぁ……って」
ルージュは下手に出ながら、バニングに物申した。
「あのさぁ……何様なのオマエ」
パァン!
「あうっ!?」
バニングはルージュの頬を平手打ちした……しかも、力を込めて叩いたのでルージュの唇は切れて血が滲んでいた。
「『水』属性持ち術士の癖に、回復系統魔法が不得手な三流魔術士が僕に意見するだなんて……愚かにも程があるよ? 番人戦まで魔力を温存するという作戦を汲めない馬鹿は、大人しく媚びだけ売ってればいいんだ」
「ハ……ハイ。分かりました……申し訳ありません」
「クスクス……相変わらずの馬鹿女ね。これは後で、お仕置き確定ね」
弓師のアロアがルージュの失態を笑う……。
バニングは、フン。と鼻を鳴らしてアロアと共に鍾乳洞の奥へと進んでいった。
虚しさで立ち尽くすルージュにゴリラスが手拭いを差し出した。
「あの……コレ、良かったら……血を拭くのに……使って」
「……! 要らないわよっ! こんな汚い布っ!」
ルージュは差し出された布を手で払う。
「あっ……ゴ、ゴメン」
「……。バニング様〜! 待ってくださ〜い♪」
ゴリラスは落ちた手拭いを拾い、皆の後を追う。
♦︎
「見ろ! あそこに光だ。あそこに番人が居るに違いない」
もう既にオルトロスが倒されているなど知る由の無いバニングは滑稽な程に喜びながら指を刺す。そこへ……。
ゴゴゴゴゴゴ……バチィ! バチィ!
突如、バニング達の目の前に現れる異界の門。その中から現れたのは……ヘルハウンドとオーガが融合した『ケンタウロス』型のキメラ……オーガハウンド。
彼らの知らない未知のモンスターであった。
「……な、何? コイツ……?」
慄くパーティメンバー達。しかし、バニングだけは違った。
「ふぅん。なんか強そうでは有るねぇ……ま、ウォーミングアップには丁度いいかな。『炎帝の申し子』の実力を思い知るが良い……」
バニングは素早く詠唱……眼前に大きな火の玉を出現させる。
「フフフ……! 見たまえ……初級魔法である【ファイヤーボール】でさえ、この大きさ。〝魔力数値200オーバーの超一流魔術士〟の偉大さが分かるかな? さぁ! 消し炭になりたまえ!」
放たれた火球は、オーガハウンドに直撃。……しかし、火耐性を持つオーガハウンドにはダメージどころか、火球を受けたリアクションすら皆無であった。
「「「「…………。」」」」
沈黙する『炎帝の申し子』パーティ。
「グォォオ!!」
「き、きゃぁぁっ! 襲いかかってきますよっ! バニング様ぁ!」
襲い来る強敵にパーティリーダーのバニングが下した決断は……。




