農村区の暮らし〜万能補助魔法【生活編】〜
─ジェノバース農村区
モンスターを討伐し終え、農村区まで全力疾走で戻るサニーと僕。
「やった〜! 私の勝ち〜!」
「はぁ……はぁ……! ま、また負けた」
狩りを終えた後は、2人で村まで走って競争するのが恒例だ。もちろん補助を無効化する【リセット】を発動した状態で行う。
競争でサニーに勝てた事は無い。彼女は、いつも1回はコケるのに何故かいつの間にか追いこされている。僕も毎日鍛えているが、やはり彼女の身体能力には敵わない事を実感する。
「サニー、派手に転んで擦りむいてるよ……【自然治癒力上昇】」
擦りむいた傷が、ゆっくりと癒えていく。
「ありがとー! へへ……いつも、ごめんねぇ」
急を要する怪我には役に立たないが切り傷などの軽傷ならば、コレで充分だ。これにより、ジェノバース主要区で購入したポーションは使用せず温存できている。
「お〜い、アライズ君、サニーちゃん。今日も、お疲れ様だなぁ!」
気さくに話しかけてくれるのは、畑仕事に精を出すタルコットさん。大猪に襲われていた、お爺さんだ。あれ以来、家族ぐるみで僕達2人に良くしてくれている。
「タルコットさん! 水源と森の安全は確保出来たから、もう安心ですよ」
「ホントかぁ! いやぁ、村の為にありがとうなぁ! アライズ君の魔法で畑仕事も精が出るし、ホントなんと礼を言ったら……。この野菜持ってってくれ、せめてもの恩返しじゃ」
「タルコットさん、いつも美味しい野菜ありがとう!」
僕達は、笑顔でタルコットさんと別れる。その後、村の広場へ着くと村の人達が次々とやってきた。
「アライズ君! アンタの魔法で腰が楽になったよ!」
「おう、坊主! 重かった鉱石が、軽々で助かったぜ!」
「お兄ちゃんの魔法で、わたしガキ大将のガンス君たおせたよ!」
様々な人に補助を使うのは魔術の向上の一環だったんだけど……役立たず、無能と呼ばれていた僕の魔法が、こんなに沢山の人達を喜ばせる事が出来て嬉しい。
僕は皆の話を聞きながら、再び全員に補助魔法を使用した。
「ねぇ、あっくん。朝から、ずっと魔法を使ってるけど魔力無くならないの?」
「ああ、【魔力回復速度上昇】の補助で何とか回せてるよ」
消費可能魔力は非戦闘状態ならば1時間に1パーセントという数値で僅かずつ回復していき、睡眠などリラックスした状態になる事で急速に回復する。伝説級の魔術士の中には、数秒の瞑想で魔力を急速回復させる人も居たらしい。
流石に、その領域までは達して無いが僕の【魔力回復速度上昇】は非戦闘状態1分間につき1パーセントの回復速度まで上げる事に成功している。伝説の急速回復を目指して術の向上に励もう。
「……凄いね、あっくんは……1人で何でも出来ちゃうんだもん。何にも出来ない私なんかが一緒に居ていいのかな……あはは……」
急に普段のサニーらしからぬネガティブな事を……。苦笑いする彼女に僕は真剣に物申す。
「何言ってんだよサニー。君が居なきゃ農村区を守る事なんて出来なかった。この数日間、サニーを見てきたけど……並の戦士より、ずっと才能があるよ。自信持って!」
僕の励ましに対してサニーは横に首を振る。
「ううん……。あっくんは、もっと高いランクのパーティと組むべきだよ。だって……私は……女神の加護を受けてないから……」
「えっ?! ホント!?」
(ああ……言っちゃった……。もう、君なんて要らないって言われちゃう……! でも、あっくんに嘘は言えない……! それに私なんかより、他の人の方が絶対良いよ……その方が、あっくんの為だから……)
下を俯き、目を瞑るサニーに僕は安堵の声をかける。
「良かったぁ! 女神の加護が無くて! どうやって外そうか研究してたんだけど、手間が省けたよ! あ、ちなみに僕も女神の加護無いよ!」
その言葉を聞いてサニーは目を丸くして驚いた。
「えっ……?! ど、どういう事?」
「師匠曰く、女神の加護って実は〝人が神の力を超えない様につけられた枷〟らしい。現に僕の魔力は訓練により向上したんだ……世で語られてる情報と真逆にね。だから、サニーは、これから努力次第で神様を超える強さになれるんだよ! ワクワクしないか?」
サニーの暗かった表情が明るくなる。
「そ、そうなんだ……! うん、うん! なんだかワクワクしてきた! ずっとあった胸のモヤモヤが晴れたよ! あっくんに会えて良かった〜!」
「そう言われて嬉しいよ! 互いに女神の加護が無い者同士が出会うなんて、運命的だね」
そう言うとサニーの顔が、みるみる赤くなっていった。
「う……運命的……とか、言われたら……なんだか、恥ずかしいよ……///」
あ、あれ……僕なんかやっちゃいました? そっか女性は運命的と言う言葉に敏感と聞いたような……気がする。
意識したら、僕も照れて恥ずかしくなって来た……!
「ねーねー、おねーちゃーん。鬼ごっこしよー」
丁度いい……のか悪いのか、村の子供達がサニーに声をかけてきた。僕が農村区に来るまではサニーの仕事は基本的に、村の子供達の遊び相手だったらしく人気者なのだ。
「う、うん! 良いよっ! 韋駄天のサニーを、捕まえれるかな〜っ!!」
「お、おねーちゃん! まだ鬼決めしてないよ〜!」
「まって〜!」
「捕まえろ〜!」
韋駄天のサニーは、子供達に追いかけられながら走り去って行った。
僕は1人で考え事を始める……サニーの自己評価の低さについてだ。
並の戦士より才能が有ると言ったのは励ましじゃない。少なくとも、既にSランク加護を自慢してたザッカス達なんかとは比べ物にならない強さなのは間違いない。
……僕の言葉だけじゃ説得力に欠けるか。何か目に見える強さの証があれば、もっと自信に繋がるはず。
そうだ、【能力詳細書】さえ手に入れればサニーも納得するはず。10万Gの出費だが払う価値はある。……問題は……。
僕は財布の中身を確認する……5000Gしか無い。農村区に来てから僕達には収入が無い。
それには理由があった。




