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ザッカス達の怠惰と凶行

 極天騎士ブレイブ・ソードレイによって屈辱を味わったザッカス達『フィアー・ローエンド』。その悔しさをバネに強くなる為の努力を……する筈も無く、夜更けの酒場にて連日、酒を飲んでいたのだった……。


 ─王都ラシントン 酒場『せせらぎ亭』


 「ギャハハ。こないだの組んだパーティの女さ、結構イイ女だったよな」

「ああ。俺達が寝取った時の連れの弓師の号泣した顔も最高に笑えたぞ。あれ彼氏だろうな」

「雑魚パーティの癖に俺らに楯突くのが間違いなんだよ。その後、ボコって泣き寝入りなんだもんな。負け犬が惨め過ぎて爆笑だぜ」


 客も疎らな夜更けの食堂席にて下衆な雑談をするザッカス達。

 彼等は執務室での一件後、自分達の憂さを晴らす為に格下パーティに寄生して、気に入らない事が有れば凶行に出るという劣悪な行為を繰り返していた。


「ストレートフラッシュだ。ほら、お前らの賭け金寄越せ。ギャハハ」


「フン……!」

「チッ! ネチカル、てめぇイカサマじゃねーのか? クソッ!」


 そんな愚行を犯していても、ザッカス達は罪悪感の欠片も無くポーカーに興じる。

 彼等が、数えきれない悪行や怠惰を平然と行っていても法の裁きを受けない理由……それはザッカス以外の2人も相当な権力者だからである。


 王都を中心に潤沢な交易ルートを持つ大商人家デオンズ家の御曹司ネチカル。


 国王陛下が有する軍隊『国軍』の師団兵長カイダル・ボラングの息子リンタル。


 彼等3人は、これまで数えきれないほどの犯罪を揉み消して来た。……そして、『大練行』による格上のパーティ不在により普段にも増して権力の怪物として暴走していた。


「よーし、もっかい勝負すっぞ」

「悪いが、もう手持ちの金が無い」

「だったら、そこいる雑魚から巻き上げろよ」


 そう言ってザッカスが指を差したのは、テーブルの側で正座をさせられている青年テッド。彼はアライズの後釜として補充された……フィアー・ローエンドの『奴隷役』である。

 ザッカス達は、『奴隷役』が壊れるまで酷使し……要らなくなったら捨てる……を繰り返しているのである。


「オラ、有り金全部出せよゴミカス」


「わ、分かりました……。出します、出しますから……もう、帰っても良いでしょうか……?」


 元来、優しく気弱な性格のテッドはザッカス達から恰好の標的として酷い扱いを受けていた。彼はパーティに入って、まだ2、3日であったが既に精神は限界に達していた。


「良い訳ねーだろボケ。テメェの失態の禊が終わってねーだろうが」

「無能過ぎる自分を恨め」

「足手まといが調子乗んなよ! 殺すぞ! ギャハハ!」


「あ……あ……? な、なん……ざ……!」


 3人からの罵倒を受け、テッドは下を向き呟いていた。


「はぁ? なんか言ったか? カス野郎」


「ふざけんな!! 無能は、お前らだ! 探索も戦闘も手を抜いて人任せ! その上、真っ当に仕事をこなした俺に難癖ばかりつけやがって! いい加減にしろ!」


 我慢の限界を迎えていたテッドはキレた。彼の言っている事は全て真実であった。……にも関わらず。


 バキィ!!


「うぐぁっ!!」


 リンタルの顔面パンチを受けてテッドは後ろに倒れる。


「言いたい事は、それだけか? 無能」


「ココじゃ、俺達が手ェ出さないとでも思ったか?! 殺すぞゴミが!」


 倒れたテッドを、ザッカスが全力で踏みつけ……何度も蹴りを食らわせる。


「ぐあっ!? あぐぅ!」


「調子乗んなよって、言ったよな?! あぁ?!」


 【スペルレス:初級】のスキルを持つネチカルは詠唱も無く発生させた雷撃を浴びせる。


「ぎゃぁぁ!!」


 ……その後も、止まる事の無い暴力を受け続けるテッド。


「俺達はなぁ! 全員、女神の加護『Sランク』卒業者なんだよっ! テメェみていなゴミカスが勝てるわけねーだろ!」


「うぐぅ! ぐぶぅ!」


 彼の悲痛な叫び声は酒場中に聞こえていた。


「げはっ……ごはっ……!」


 容赦ない暴力で、骨も折られ血反吐を吐き仰向けに倒れるテッド。


「このゴミカス、裸で店の前に吊るそーぜ!」

「いいね〜。落書きもしてやるよ。ギャハハ」

「逆らった罰だ」


 絶対絶命のテッド。しかし、助けは来ない。誰もが見て見ぬフリをする。夜更けの酒場に権力の怪物達を止めれる猛者は居なかった……ただ1人を除いて。


「やめな! 男が寄って集って1人をリンチなんてさ……みっともないったら、ありゃしないよ」

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