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第19話 開く扉

 ロザミィさんと一緒に冒険者ギルドにはいると、いつのようにデンジャーな空気をまとった男たちであふれかえっていた。

 受付で依頼クエストを受け、仲間たちとともにギルドを飛び出していく者。

 なんだかわからない素材をギルドでおカネに換える者。

 相変わらずここのギルドは活気があるなぁ。

 受付嬢のレコアさんも忙しそうだ。


 ロザミィさんの話では、ここ『黒龍の咆哮』はズェーダで一番の人気がある冒険者ギルドであるらしい。

 ムロンさんが冒険者ギルドの職員になってから、俺がゴドジさんにやられたような『新人いじめ(可愛がり)』がなくなったってのも、人気のひとつみたいだ。


「さーて、アイツらはどこかな?」


 隣に立つロザミィさんが、ギルド内をきょろきょろと見渡す。


「どこですかねー? あ、ひょっとしてゴドジさん、また新人冒険者にちょっかいだしてたりして」


 そんな俺のウィットに富んだジョークは、


「んなこと、もうしてねーよ」


 後ろからぬっとあらわれたゴドジさん本人によって否定されてしまった。

 俺とゴドジさんとの間に、やや気まずい空気が流れる。

 こんなのふり返れないじゃないか。

 

「マサキさんよぉ、おれはマサキさんとの一件以来、新人虐めなんかやってねぇよ。あの時でもう懲りたんだからな」

「ははは……や、やだなー。新手のパーティージョークですって。ほ、本気にしちゃダメですよー」

「ならいんだけどな」


 にこやかな微笑みを浮かべたまま、ゆっくりと振り返る。

 ゴドジさんは、大げさに肩をすくめていた。


「マサキさんの蹴りでおれは目が覚めたんだよ。なあ?」


 うんうんと頷くゴドジさん。

 でも、なんか口元がピクピクしているぞ。


 さては焦る俺をからかっていたな?

 こりゃ一本取られたぜ。

 ゴドジさんはいたずらっ子みたいな笑みを俺に向けたあと、こんどはロザミィさんに顔を向ける。


「おうロザミィ! 昨夜はお楽しみだったか?」

「ば、バカ言ってんじゃないよ」

「なんでぇ、その感じだとダメだったみてーだな。まさか……ゲロでも吐いて雰囲気ぶち壊したんじゃねぇーだろうな?」

「な、ななな、なにを言いだすのさっ。そ、そんなことよりゲーツはどこなのよ? はやく森にいかなくちゃ、ほ、他の冒険者たちに獲物ゴブリンを横取りされるよっ」


 ゴドジさんすげー。

 ロザミィさんがマーライオンに変身フォームチェンジしたことを見抜いているぞ。

 さすがはパーティーメンバーだ。

 ロザミィさんの動揺っぷりが痛々しいぜ。


「へへへ、どうしたロザミィ? おれの質問に答えてくれよ」


 いたずらっ子なゴドジさんが標的を俺からロザミィさんに変更し、追加の攻撃を加える。

 いつもはロザミィさんがやいのやいの言ってるみたいだから、そのお返しなのかもなー。


「ふんだっ。マサキはゴドジと違って高潔な精神を持っているのさ。酔った女を拾っていくような、どっかのクズと違ってね」


 ロザミィさんが、ゴドジさんをギロリと睨みつける。

 ゴドジさんは悪びれた様子もなく、「いいじゃねぇーか」とか言いながら頭をかいていた。


「わりぃ。待たせたな」


 ゲーツさんがやってきたのはそんなタイミングだった。

 今日も動きやすそうな軽鎧にロングソードを装備している。


「あ、ゲーツさん。今日はよろしくお願いしますね」

「……足ひっぱんじゃねーぞ」

「ははは、善処します」


 つっけんどな言い方をしてくるけれど、ゲーツさんはツンデレさんなんだからしかたがない。

 事実、出会った時のような攻撃的な雰囲気は一切なく、わざとクールぶってるって感じだ。


「ゴドジ、ロザミィ、お前たち準備はできてるな?」

「おう! できてるぜ!」

「当たり前でしょ」

「お、俺もバッチリです! 薬草もいっぱい持ってきましたし」


 今朝引っこ抜いてきたばかりの、鮮度抜群の薬草だ。

 俺はその薬草を3人に渡していく。


「ありがてぇ! さすがは『薬草のマサキ』だな」

「ありがとねマサキ。これだけあればかなり回復魔法を温存できるよ」

「はい。ゲーツさんも」


 薬草のはいった袋をゲーツさんにさしだす。

 ゲーツさんはちょっとだけためらってから、


「……悪いな。助かる」


 しっかり受け取ってくれた。

 ほーら。やっぱりツンデレさんだ。

 ゲーツさんは照れ隠しなのか、俺から顔を逸らし、


「行くぞ」


 とぶっきらぼうに言うと、ひとりギルドの扉を開けて出ていってしまった。

 そんなゲーツさんを見てゴドジさんはニヤニヤ。ロザミィさんもニヤニヤ。

 ついでに俺もニヤニヤしながらついていく。


「おいマサキ。おれたちはこれからゴブリン共を狩りにいくんだ。笑ってる余裕なんて、すぐになくなるからな」

「は、はい! すみません!」


 そして、なぜか俺だけがゲーツさんに怒られる。

 はやくまたデレてくれないかな。

 そんなことを考えながら、俺は『猟犬ハウンドドッグ』の3人と一緒に森へとはいっていくのだった。


 ゴブリンを、狩るために。

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