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第26話 つかの間の休息

「到着ッ!! ……ふいー、やっと着いたぜ」


 日が落ちて暗くなった頃、俺たちはやっと目的の街、プリーデンへとたどり着いた。


「いやぁ、大変だったなー」

「マサキぃ、あたしもう疲れちゃったわ……」

「なんだいロザミィ、だらしないね。それともマサキに甘えてるのかい?」

「ち、違うわよ姉さん!」

「マサキさま、ずっと御者をしてくれてありがとうございます」


 プリーデンに着いたからか、みんなもどこかほっとした顔をしていた。

 当所の予定ではお昼過ぎぐらいに着くはずだったんだけど、こんなに時間がかかったのはもちろん盗賊団に襲われたからだ。


 盗賊のみなさまを荒縄で数珠つなぎに縛りに縛りあげ、ヨロシク勇気号で引っ張り(小走りぐらいの速度)近くの村にあった冒険者ギルドに引き渡す。

 報奨金をゲットして、再び目的地へ。

 ヨロシク勇気号を飛ばしに飛ばしまくり、なんとか今日中に着くことができたぞ。


「それにしても……でっかい街ですねー」


 パッと見ただけだけど、ズェーダの倍はありそうな大きさだ。

 城壁も高く、夜だってのに街のあちこちに明かりが灯っている。

 こっち(異世界)じゃロウソクや、明かり用の油はけっこーなお値段がするので、それだけこの街に裕福なひとが多い証拠だ。


「アークシーズ王国の国境沿いにあるこのプリーデンは、隣国アルタネイとの貿易で大きくなった街でしてね、街の中では絶えず金貨が飛び交っているのです」


 アンディさんが説明してくれる。

 自分が拠点としている街だからか、どこか誇らしげだ。


「他の街ではなかなかお目にかかれない珍しい品も数多くあるんですよ」

「おおー! ちょー気になります!」

「明日、お時間があればご案内しますよ。あ、マサキさん、あちらの門から入ってください。商会専用の門があって夜間でも出入りができます」

「わっかりましたー」


 ヨロシク勇気号を街の外側にある馬車置き場に停め(アンディさんが所属してる商会専用)、布をかけて目立たないようにし、カーゴトレーラーを取り外す。


「それじゃ、街に入りましょう!」


 俺はえっちらおっちらカーゴトレーラーを引きながら、みんなと一緒にプリーデンに入っていくのだった。





 アンディさんが所属するシュタイナー商会への納品を済ませ、俺たちは酒場へと繰り出した。

 宿はアンディさんが手配してくれているそうだから、安心して酔うことができる。

 そんなわけで――


「みなさん、今日はいろいろとお疲れ様でしたー!」


 俺はエール(麦酒)がなみなみと注がれたジョッキを片手に、みんなの顔を見回す。


「本日はアンディさんの奢りということらしいので、みんなじゃんじゃん飲んじゃってください! 食べちゃってください!」

「はっはっは、みなさんのおかげで無事にプリーデンまで帰ってこれましたからね。そのお礼ですよ」

「だそーです! ではみなさん、アンディさんへの感謝を忘れず…………かんぱーい!!」

「「「「かんぱーい!」」」」


 俺の音頭を合図にジョッキが打ち合わされる。

 ロザミィさんとキエルさんは果実酒を、ライラさんは火酒、アンディさんは俺と同じくエールだ。


「プッハー、仕事後の一杯は美味しいなぁっ。あ、おねーさーん! おかわりくださーい!」

「おおっ、マサキさんはなかなかイケる口ですね、さあさ、どんどん飲んでください」

「ありがとうございます! あれ? キエルさん顔が赤いですよ? お酒苦手でした?」

「…………だいじょーぶれすよ、マサキしゃま」


 早くも語尾が怪しくなっている。

 これは大丈夫じゃないパターンと見た。


「ムリして飲まなくていいですからね。ロザミィさんも今日はほどほどに」

「わ、わかってるわよっ」


 ロザミィさんは拗ねたような声を出し、プイと顔逸らして果実酒を一気に飲み干す。

 気がつくとマーライオンに超進化しているロザミィさんのことだ。……今夜もダメかもしれない。


「親父、火酒をおくれ。この店で一番強いヤツを頼むよ」


 酒豪のライラさんは平常運転。

 ロザミィさんやキエルさんとは違い、お酒に強いから放っておいても大丈夫だろう。


「いやあ、盗賊に囲まれたとき、僕はもう駄目だと思いましたよ。僕の命はここまでか……と!!」


 アンディさんが大げさに言う。


「実はねマサキさん、僕はあなたを疑っていたんですよ。ああ、実力じゃないですよ? どちらかといえば人間性です。大切な商品を運ぶ護衛依頼だというのに美しい女性ばかりを連れてきたあなたのことを……。僕は、僕は――マサキさんのことをとてもだらしない人だと思ってしまったんです! 仕事なのに旅行気分で恋人たちを連れてくなんて、最低なクソ野郎だ! って」

「は、はぁ……」

「しかーし! あなたたちは強かった。とても強かった!! 数を頼りに襲い掛かってくる盗賊たちをバッタバッタとなぎ倒し――――……」


 意外にも、誰よりも早く酔っぱらったのはアンディさんだった。

 アンディさんはぐびぐびと途切れることなくお酒をあおり、拳を握りしめて力説している。

 ところどころディスられているような気がしないでもないけど、まー、楽しそうだからこのままでいいか。


「あ、そーだライラさん、」

「ん? なんだいマサキ?」


 俺は壁に向かってひとりでしゃべっているアンディさんを放置し、ライラさんに顔を向ける。


「ちょっと訊きたいんですけど、なんで盗賊たちをその……ひとりも殺さなかったんですか? なんか対人戦の素人である俺が見てもあからさまに手を抜いてる感じがしたんで」

「あ、それあたしも気になってたの」


 俺の質問にロザミィさんも乗っかってきた。

 疑問に思っていたのは俺だけじゃなかったんだ。


「ライラ姉さんは悪人に容赦がないって思ってたから、意外だったのよね」


 疑問に思っていたのは俺だけじゃなかったんだ。


「なんだ、そんなことかい」


 ライラさんは火酒を口に運び、一口飲んでから答える。


「最初はアタイも殺す気だったさ。首だけ持って帰っても報奨金は出るからね。でもさ――」


 ライラさんが俺の顔を見て、呆れたように笑う。


「マサキのおかげで補助魔法が山ほどかかってたしね、どうせなら戦いの勘を取り戻す練習台にしようと思ったのさ」

「なるほど。殺すより殺さない方が遥かに難しいって聞きますもんねー」


 ブランクがあるからこそ昔の感覚を取り戻そうとするのは当然のことだ。

 それも集中力が必要な実戦。練習とは違い、ミスの許されない緊張感が――


「そういうことさ。でも一番はマサキの下手くそな戦いを見てたら真剣に戦うのが馬鹿らしくなっちまったからだけどね」

「……ははは、……す、すみません」


 緊張感どころか脱力しまくってたみたいだ。

 俺は真剣だったんだけどなー。


「そんな顔しなさんな。アタイはこれでもマサキに感謝してるんだよ? どんな悪人でも殺っちまうのは……やっぱ後味が悪いからね」

「そうよマサキ! それに盗賊の首を持っていくより生きたまま捕まえた方が報奨金の額があがるのよ! マサキは間違ってないわっ!」

「……マサキしゃまはいつもたらしー(正しい)れすよ」

「ライラさん、ロザミィさん……あと語尾があやしいキエルさん……。ありがとうございます! もうみんな大好き! 今日はじゃんじゃん飲みましょうー!!」

「ふーん、『みんな』か、まあいいさ」

「だ、大好きなんて…………ばか」

「……うふふ。わたしゅもマサキしゃまのこと…………」


 なんかこのあと大いに盛り上がってしまい、朝を迎えるころにはみんなで仲良くマーライオンに究極進化しちゃうのでした。

腰を痛めてしまいました。

ちょっと更新ペースが落ちてしまいます。

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