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43/47

43・終わりの始まり

 

「さて市長さん、残るは貴方だけだ」


 足をミニガンによって負傷したエリーゼへ、俺は見下ろしながらいった。

 ぶっちゃけ、この構図だと第三者視点で俺が悪役に見えても仕方がない。


「少佐〜、なんかこっちが悪役みたいになってますよ」


 速攻で同様のツッコミをエミリアから食らう。


「遺憾だな、これでも一応お前らを助けてやったんだぞ?」

「一応って......」


 呆れたような顔で立ち上がったエミリアは、バヨネット・ナイフをしまいながらこちらを見た。


「っつーか少佐さぁ、わたしたちがボコられるのわかってて派遣したでしょ。昔からいっつも過酷な環境に置いて育てようとする節があったし」

「半分正解で半分ハズレだ、正直お前はまだまだポンコツだからな。【殲滅の爆撃王】だとか言われて浮かれてるから、ちょいと試しただけだ」

「うーわ最悪、それで結果は?」

「は? 不合格に決まってるだろ」


 真顔で宣告する。

 当然だ、エミリア1人がボコられるならともかく、フィオーレに尻拭いさせるようでは失格もいいところ。


 銃でぶん殴ってこようとするエミリアをいなしていると、声が掛けられた。


「あなた達っていつも戦場でこうなの......?」

「フィオー! 気がついたん!? 生きてて良かったぁ!」

「ちょっ、エミ......苦しい!」


 抱きついてくるエミリアをどかしたフィオーレが、ゆっくり立ち上がった。


「大丈夫か?」

「なんとかね、それより––––」


 ひざまずく市長を見る。


「この人はどうするの?」

「どうする? 決まってるだろ」


 俺は我ながら下卑た笑みを浮かべた。


「絶望を味わわせてやる、こいつの信じるものを軒並みぶっ壊してな」

「ッ!! 舐めるんじゃないわよクソ男ッ!!!」


 一瞬で姿勢を取ったエリーゼは、鋭利なナイフを俺の腹部へ突き刺してきた。

 軽い衝撃が走るも、俺は勝ち誇った顔の市長の腕を掴んだ。


 ナイフはボディーアーマーに阻まれ、逆にへし折れていた。

 鎧じゃないと見て勝機を見出したのだろうが、無駄である。


「それは......」

「これかい? これは『ドラゴン・スキン』っていうレベル4の防弾ベストだ。たかだか刃物じゃ貫けん。製造国が輸出規制品目に入れているくらいだからな」


 ドラゴン・スキン。

 その防御力は絶大で、通常の防弾プレートだと容易に貫通するMP7の4.6ミリ高速弾すら弾いてしまう。


 まさに最強の鎧だ。

 蹴り飛ばし、エリーゼの右腕へショットガンを撃った。

 着弾と同時に炸裂し、骨ごと引き裂く。


 市長の断末魔が覆った。


「少佐......、それもしかしてFRAG-12弾?」


 エミリアが近づきながら言った。


「確か炸薬が詰まってる特殊弾頭で、障壁はおろか軽装甲車すら打ち負かすっていう」

「正解、ついでだから持ってきた」


 さて。


 銃口を横に向け、部屋の奥にあった『トロフィー』を3連射で粉砕した。

 血のような液体がぶちまけられ、木っ端微塵に砕け散る。


「やった! これで召喚も止まる......!」


 手を握ったフィオーレへ、俺は冷静に告げた。


「マンガやアニメじゃないんだ、エミリアたちが部屋に来た時点でとっくに起動し終えてる。そうだろう市長?」


 口から血を流しながら、エリーゼは不敵に笑う。


「えぇそうよ、神龍召喚の儀式はとっくに終わってるわ。具体的にはあなた達がここへ来る......36分前にね」


 高笑いしながら、エリーゼは叫んだ。


「大革命の始まりよ!!! 震えるがいい白の英雄!! こうべを垂れて祈りなさい、己の無力さを噛み締めて、怨嗟に苦しみながら泥濘に沈めッ!!!! あっはっはっはっはっはっはっはっはっ!!!!」


 俺は全員を少し下がらせると、AA-12を天井に向けて連射した。

 FRAG12弾により、天井は瞬く間に崩落。


 落ちてきた瓦礫に潰され、エリーゼはその場で生き埋めとなった。

 かろうじて顔だけは見える。


「無駄な抵抗ね......、神龍アクシオスはもう止められない」


 無くなった天井を見上げると、空には超巨大と言っていい魔法陣が浮かんでいた。


 さて、いよいよ大詰めだ。


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