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42・バッドエンドを君へ

RPGは無反動砲の類ですけど、ここではロケットランチャーで括っときます。

 

 あらかじめオープンにするよう指示した無線を通して、俺は状況の全てを把握できた。


 いわく、エミリアが油断ぶっこいてそのまま幽閉。

 市長秘書のリムさんは、裏切り者のエリーゼ市長によって半殺し。

 フィオーレもサンドバッグにされ、やはり完敗。


 聞こえてくる嗚咽が、俺の耳に痛々しくずっと響いていた。

 アーノルドとか言うやつは、コロシアムのインチキ魔導士と違ってちゃんとした拘束魔法も使ってくるらしい。


 アイテムがあれど正面から突っ込んでは、おそらく同じ轍を踏むだけだ。

 ならどうするか、答えは簡単。


「散々ウチの部下を泣かせたんだ、しっかり償ってもらうぞ」


 俺はヘリコプターのサイドドアから、RPGを発射した。

 カウンターマスと同時に弾頭が飛び出し、空中でブースターに点火。


 安定翼が展開され、ロケット弾頭が一気に加速した。


「し、しちょ......!!!」


 ガラスを破って室内へ突っ込んだRPGは、アーノルドの腹を抉り抜いた。

 そのまま後方へ吹っ飛び、ヤツは床でもんどり打つ。


「があああぁぁっ!! ごぼっ、がぐあ......!??」


 弾頭は爆発せず、アーノルドに突き刺さっていた。

 血溜まりがバケツをぶちまけたように広がり、断末魔がローター音を貫いてくる。


 ふむ、運悪く信管が作動しなかったらしい......。

 即死させてやれず申し訳ない。


「なんて、心にもない謝罪なんざいらないか」


 撃ち終わった発射機を機内に投げ捨てると、今度は7.62ミリガトリングガンのグリップを握った。

 緑色のレーザーサイトを、エリーゼに当てる。


「銃弾を避けれるくらい俊敏だそうだな市長、じゃあこれをプレゼントしてやる」


 ガトリングの繋がった銃声が轟いた。

 エリーゼは常人離れしたバク転の連続で避けようとするが、秒間75発で襲いくる銃弾をかわせるわけもない。


 剣のように薙ぎ払うと、足を引き裂かれたエリーゼが盛大に床を転がった。

 ほぼ同じくして、ガトリングが空回りする。


 どうやら弾切れらしい。


「ありがとう、無茶を聞いてくれて助かった」


 ヘリパイとドアガンに一言礼を述べて、俺は荷物を持ちながらジャンプで大会議室へ飛び込んだ。

 左手のバッグを床へ落とすと、俺は右手で持ってきたAA-12フルオートショットガンをコッキングした。


 もちろん、弾倉は32連ドラムマガジンだ。


「少佐ぁ......」


 壁に閉じ込められたエミリアが、涙目で俺を見つめていた。

 上司として笑顔を向ける。

 そして告げた。


「敵の話に付き合うなと毎日散々言っていたはずだぞ。帰ったら説教と、36時間ぶっ通しでCQB訓練だ。楽しみにしておくように」

「は、はい......」

「まぁ先行させた俺にも責任はあるから、キッチリ付き合ってやるよ。それより––––」


 俺はうめき声を出すアーノルドの顔面を、軍靴で蹴り飛ばした。

 数メートル離れたドア向こうの通路へ、血を撒き散らしながら転がる。


「あまり衝撃を加えると、腹のそれが爆発するんだよな」

「助けて......、たす、けてください」

「ん? なんて言った?」


 気絶するフィオーレを影まで担ぎながら、しらばっくれる。

 リムさんは......、下手に動かすと命が危ないだろうから一旦放置。


「騙されたんだ......! そこの市長に、魔導士のためとそそのかされて......、実はずっと良心の呵責に苛まれてた......強いられてやったんだよ」

「『もっと遊びやすくして差し上げますよ』、だったか?」

「っ............」


 無線でずっと事の顛末を聞かれていたのだと悟ったアーノルドは、血だらけの口を開いて無様にパクパクさせた。

 フィオーレを降ろし、銃口を向ける。


「これでエンドなんだよ......お前らの負けだ。クソッタレのテロリスト共」

「嫌だ、たすけ––––」

「問答無用」


 トリガーを引き、2発発射。

 銃弾が腹へ刺さりっぱなしのRPGに当たった瞬間、アーノルドは大爆発を起こした。

 文字通り、木っ端微塵である。


 俺はヤツ自身が作成した檻を盾がわりに使って、破片を避けた。


「ここが異世界で本当よかったよ、こんな現場を人権派やマスコミに見られる心配がない」


 床と一部天井が崩落するも、足場はまだまだ残っているようだった。

 エミリアを囲っていた檻が綺麗に消え去る。


「えっげつなぁ......」


 ヘタレ込んだままのエミリアが、ドン引きした様子でつぶやいた。


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