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27・合理主義者と合理主義者

 

 爆発音を聞いた俺とフィオーレは、木っ端微塵となったエントランスに立つエミリアを見つけた。


「なっ、なにこれ......何が起こったの?」


 困惑するフィオーレ。

 そして頭を抱える俺という構図の完成だ。


「いやさ、最初に爆破解体しろっつったのは俺だけどさ......」


 明らかにヤベーだろこれ、天井まで吹っ飛んでるところを見るとおそらく使用したのはC4爆弾だろう。

 さすがは【殲滅の爆撃王】......、どうやら敵の第一線部隊を完膚なきまでに消滅させたらしい。


「これ、エミがやったの......?」

「あぁ、だが見てみろ」


 エントランス自体は崩壊しているが、市民たちは爆弾の加害範囲の外で呆然としていた。


「市民の犠牲者はいない、安心しろ」


 俺の声と共に、走ってきたエミリアがフィオーレに抱きついた。


「どうしたんフィオ! 傷だらけの痣だらけやんっ!! 血まで出てるし......いったいなにが――――――」

「まずお前が落ち着けエミリア、命に別条はないからパニクんな」


 取り乱した彼女を、フィオーレから一旦遠ざける。

 なんというか、まるで姉のごとき心配ぶりだな......。

 そういう点で言えば、妹に等しい人間がボロボロなのだから無理はないか。


「だ、大丈夫よエミ。寸前のところでイグニスが助けてくれたから」

「ほんま!? さっすがわたしの少佐っ! イカす! イケメン! 男前っ!! あの陰キャ中隊長がやりますね!」

「言ってろ爆弾娘、それよりグローリアだ。ヤツらはもう市街に展開しているだろう......コロシアムの騒動にも感づいているはずだ」


 姿勢を正し、悲鳴にまみれる周囲を警戒するエミリアとフィオーレ。

 俺は通信を取った。


「スカッド、街に動きは?」


 問うと同時に、縦揺れが襲った。

 短い揺れなので地震ではない、爆発によるものだ。


「う、ウチじゃないですよ......!?」


 振り向いて言うエミリア。

 通信機から声が届く。


『こちら高台のスカッドです、結構な規模の爆発が市街地で発生してますね。たぶんマギラーナのギルドが襲われてます』

「やはりか、他には?」

『市役所に武装した集団が押し寄せてます、60人はくだらないですかね......警備は全滅です』


 予想通りだ、連中の目的は市内中枢の占拠と『トロフィー』の奪取。


「ギルドと市役所が襲撃されている、今から行ってもトロフィーは間違いなく奪われるだろう」

「そんな......! せっかくコロシアムの戦いに勝ったのに、全部水の泡に......」

「......そううなだれるなフィオーレ、ここはテロリストの考えを思考し、理解してみようじゃないか」

「テロリストの考えを......理解? どういうこと?」


 目をパチクリとさせる彼女に、俺は講義の要領で説いた。


「テロリスト共は生粋の合理主義者だ、全ての行動は必要が必要としたからこそのもの。ならば俺たちが向かうべきは――――――」


 ショットガンを肩に担ぎながら、俺は爆発とは別の方向を見る。


「占拠された市役所だ、ヤツらは間違いなくそこに籠城して司令部とする。そこから市内全域にあるスピーカーを使えば爾後じごの指示も可能だろうからな。トロフィーもそこに運ばれるだろう」

「でも、それじゃギルドの仲間が......!!」

「確かに犠牲は出る、だがそれは――――――」


 遥か高高度のグローバルホーク無人偵察機へ、瞳を向けた。


「最小限で抑えられる、そのためにさっき赤色のフレアを打ち上げただろ」


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