表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/47

24・VSアリシア

 

「偽善を建前にする悪党はいつだって蔓延る、紅髪が死にかけるまで指をくわえて見てただけの傍観者が、随分とイキリ倒すじゃない。可愛いこと......」

「偽善は最高の建前だよ、慈善も加わるとなおさらいい。だからこそ君が本性を現すのをずっと待ってた」

「はっ! ロクデナシのクズ野郎が......白の英雄が聞いて呆れるわね。魔導士部隊! あいつを拘束して!」


 アリシアの合図と同時に、俺の体は一気に硬直した。

 かなしばり......いや、これは全身に見えない鎖が絡みついたような感覚に近い。


 フィオーレを拘束した技と、同じものだった。


「なんの魔法か知らないけど、術中にハマればいくらあなたでもどうしようもない。チェックメイトね」

「それはどうかな?」

「なんですって......?」


 直後、まばゆい光と共に俺を拘束していた魔法は消え去った。

 バラバラに四散し、幾何学模様のなにかが雪のように散らばる。


 俺の胸元では、1つの宝石が輝いていた。


「魔法が......弾かれた!? ありえないッ!!」

「簡単な話さ。君のお仲間の盗賊軍団が持っていた魔法無効化アイテム――――『オーバーロード』。ウチの基地に押し寄せたヤツらの死体からちょこっと拝借させてもらっただけだ」

「ッ......!!! プラーガめ! 死んでなお足を引っ張るか!」

「お仲間の名かい? じゃあこっちもやり返させてもらおう」


 俺は人差し指をピストルのようにして上へ向けた。


「バンッ」


 一瞬の断末魔が響くと同時、なにもない空間からまたも魔導士が体を引き裂かれた状態で現れた。

 なにをされたかわからない、そんな困窮しきった顔をアリシアは表に出す。


「バンッ」


 再び地面がえぐれる。

 魔導士の死体がさらに追加された。


 これは全て狙撃のサイン。

 1000メートル以上離れた塔から、サーマルスコープ搭載の対物ライフルでスカッドが透明な敵を狙い撃っているのだ。


「あといくつ残ってる?」

『あと8人です、ご安心を......一匹も逃しはしません』


 さっきまではフィオーレの影響で、フィールド全体が高温だったことからサーマルスコープの映りに支障があった。

 だが、彼女が衰弱しきったことでアリシアの冷気が場を支配したのだ。


 おかげで今は大変よく見える、フィオーレはそこまで計算してこの計画を立てていた。


「バン」


 サプレッサーのおかげか銃声は届かないので、アリシアからすれば俺がわけもわからない未知の魔法で魔導士を屠っているように映るだろう。


「あっ......アァ」


 拘束魔法も透明化魔法も一切通じず、ほとんど一方的に味方を削られていくアリシアの顔は......絶望的な恐怖に染まりつつあった。


「こんなの、こんなのって......!」

「さっきまで一方的に殴ってイキってたヤツが、一方的にやられ始めると急に焦るのかい? そりゃあ不公平というものだろう」


 倒れる魔導士を尻目に、俺はゆっくりとアリシアへ近づいた。

 M870の弾倉チューブに追加でシェルを入れる。


「撃つ者は撃たれる覚悟を持つのと同様、殴るヤツは殴り返されるリスクを承知してリングに立つ。当然の摂理だ」

「くるなっ、こっちにくるなぁ!!!」

「断る」


 涙目になったアリシアへ、俺は12GA散弾を至近距離から胴体に撃ち込んだ。

 仰向けに倒れた彼女は、苦しそうに咳き込みながら苦痛に喘ぐ。


「常人なら即死だろうに、異世界人は頑丈だな」

「がっは、うあぁ......ッ!」


 唾液を垂らし、嗚咽を漏らす。

 胸を踏みつけると、俺は排莢しながら銃口をアリシアの腹部へ押し付けた。


「俺がなんのためにさっきから散弾を節約していたと思う? 貴様に全弾をブチ込むためだ」

「やだっ、やめて......お願いなんでも、する。反省してる......」

「そう言ってきた人間を一体どれだけ同じ方法で殺してきた? 集団リンチに相当慣れていただろう、俺は漫画の主人公のようには――――――」


 トリガーに力を加えた。


「優しくないんでな」


 轟音と共に散弾を接射。

 この銃はトリガーを引いたままポンプアクションすると、フォアエンドを戻した瞬間に撃発するスラムファイアと呼ばれる機能が存在する。


 俺は一切の容赦なく、トリガーを引いたままフォアエンドを高速でコッキングした。

 フルオートのような射撃音が鳴り響き、アリシアの腹部に残弾7発すべてを撃ち込んだ。


「カヒュッ......、ヒュゥ......」


 銃口を持ち上げると、アリシアの腹部から煙が上がっていた。

 数分前までリンチを楽しんでいた顔は、口から血を流しながら弛緩しきっている。

 どうやら完全に意識を失ったらしい。


 フィールドの氷が全て崩れ落ち、気温が元に戻る。


「イグニス」


 振り向くと、ボロボロになったフィオーレが俺を見つめていた。

 どうやら、スカッドによって魔導士部隊も全滅したらしい。


「彼女が主犯なの?」

「いや、どうせ捨て駒だろう......主犯は別だ。グローリアのテロはおそらく外でも始まってる」


 コロシアムを爆発の振動が襲った。


『エントランス方面か、いずれにせよ時間はないな』


『クラフト』を使用し、アルナクリスタルと引き換えにショットシェルと"信号弾発射機"を錬成した。


「エミリアと合流して、市役所に向かう。そこでスカッドが待っているはずだ」

「でも、ギルドに預けたトロフィーが!」

「ここからじゃ間に合わん、グローリアに奪取されたという前提で動くぞ!」


 信号弾を真上へ向け撃ち上げた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ