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迷宮の王をめざして  作者: 健康な人
一章・鉄の王編
23/72

衝突

人物設定を最初の話の前に追加しました。

設定などが気になる方は見ていってください。


修正しました   1/1

 メディアを配下にし氷結世界についての説明とやらを受けた。

 この説明でなんとこの世界は吹雪の山を自由に移動することができるということを知った。

 すごく便利そうだがこれは門の魔術のように飛ぶ場所を思い浮かべないとどこかの雪山に飛ぶか分からないものらしい。

 ただ門と違い多くの一軍くらいの人数であれば一度で飛ぶことが可能ということだった。


 一軍くらいの人数といっても今のところメディア以外の配下はすぐさま召喚することができる、メディアは力説していたが門の方が役に立つだろう。


 その後にもいろいろと氷結世界について説明されたがあまりにも理屈っぽい話だったのでほとんど聞いていなかった。

 ジズドは説明を聞くたびに唸っていたのでよほどすごいことを言っていたのだろう。


「あの花は元は芽の形になるように術式を組んでいますが雪や氷を取り込むことで大きくなるとともにその大きさに合わせた術式に変化していきます。ですがある大きさまで術式が変化すると術が崩れ再び芽の形に戻りますそこからはそれを繰り返すのですがこれはただの雪を魔力を含んだ雪に返還することができその魔力は私が操る術の威力を増し…」


 などと言いながら手元に雪を集めて花を作りながら説明し出したがそこで聞くのをやめた。

 これ以上聞いても分からないと思ったからだ。


 そのように説明されてもどうせ分からない俺にとっては雪や氷でできた不思議な花がある。

 そして、それは美しい。

 これでいいのである。



 メディアはまだ氷の花の説明をしているがここでもう見るものはないだろう。

 大平原の方で何かあったような人の動きがあったのでそれを確認しに行くとしよう。

 大平原の方には拠点として使っている死者の都があるから異変を知っておくに越したことはないだろう。


 死者の都に飛べないか?


(飛べるぞ)


「死者の都ですか?」


 そういえばこれではメディアには伝わらないのか。

 説明が面倒だな。


 俺たちの拠点だ。


 とでも言えば伝わるだろうか?


 それともさすがに一言すぎるか?


「レクサス様の拠点ですか。そこはどういった場所なのでしょうか?すぐに行くことは可能なのですか?」


 なんだかずいぶんと食い付きがいいな。

 しかしさっきアリエルが飛べると言っていたのを聞いていなかったのだろうか?


 なんというか同じ話をしているというか話が進んでいないというか不自然に感じてしまう。


(この娘はおまえの声しか聞こえていないのではないか?いくらなんでもこの質問はおかしいだろう)


「…アリエル?あの、それはいったい誰でしょうか?」


 どうやらアリエルの考えが当たっているようだ。

 アリエルの名前は出していなかったかもしれないが今この場に俺とメディア以外がいることが分かっていないといった口ぶりだ。

 このことも説明もしなければいけなくなったわけか。


 ジズドの時は三人とも普通に会話していたのでメディアも話せると思い込んでいたな。


『それはおそらくですがアリエルさんがレクサスさんの影響で悪霊に近い状態になっているんじゃないでしょうか?そうだと考えるなら同じ悪霊に近いもの同士だからこそ私とアリエルさんが会話できたという説明がつきますよ。少し無理やり感はありますけど』


「あの…どういった状況なのかわからないのですが」


 完全にメディアを会話の外に出してしまったがこのままでは話が進まない。

 俺には同時に話を聞くようなことはできないのだ。


 少し整理する時間をもらいたいものだ。


「…よくわかりませんが待てばいいのですね?」


 何を思っても質問してこなければそれでいい。


「わかりました」


『この反応で私とアリエルさんの声は彼女に届いていないということがはっきりしましたね』


 しかしそうなると俺を通してしか会話ができないというのが面倒だな。

 しかもアリエルとジズドの説明を俺がしないといけないという訳か。


(どうせ私たちのことはきちんと説明しその後軽く死者の都について説明をしてから向こうに飛んでこんな場所だ、とでも言えばいいではないか)


 そうするか。


 メディアに相棒として契約している竜であるアリエルのことと意志を持つ呪具であるジズドのことを伝える。

 その時のメディアはやはりすごい方だったのですね、としか言っていなかった。

 アリエルたちのことを伝え基本的にはアリエルと話をしている前提で俺に話しかけてもらうように伝えておいた。

 とりあえず今伝えられることは伝えたのでさっさと飛んでしまおう。


 これ以上は見たほうが早いと言い話を締めアリエルの門で死者の都まで飛ぶ。


 その時メディアが驚いていたのがレクサス達は誰もそのことに気づかなかった。





 こうしていろいろあったが死者の都に戻ってきた。

 しかしどうも様子がおかしい。

 間違いなく死者の都だというのになぜだか死霊兵がいない。

 どういうことだろうか?


 そう考えるのと凄まじい音とともに地面が揺れる。

 それに合わせるように城壁の方で凄まじい大きさの光の柱が立ち上る。


『あの感じ…あんな規模のものなんて聞いたこともないけど間違いなく光魔法ですよ』


 光魔法だと?

 もしかして死霊兵がいないのはこんな場所をわざわざ浄化しに来たせいだとでもいうのだろうか?


「あの…これはいったいどういう状況なのでしょうか?」


 俺が聞きたいくらいだ。


 おそらくは死者の都を浄化しようとしたのだろうがそういったことに対抗するために集めた俺の配下の死霊兵がいるはずなのだが今は一体もいないようだ。


「敵襲ですか?」


(まあそう考えるのが妥当だろうな。なぜわざわざこんな場所に攻撃を仕掛けたのかは謎だが先ほどの規模の魔法を使っているのだからかなりの人数をそろえた本格的な討伐だろう。どうするのだ?)


 アリエルはのんきにそんなことを聞いてくるが俺は本気で迷っていた。

 逃げたほうがいいのだろうが安心して拠点として使える場所が落とされてうのは嫌だ。

 メディアの世界に逃げ込んでしまってもいいがここには思い入れがある。

 女々しい話ではあるが俺はこの体になってから初めて安心して過ごせた場所であるここを自分の家のように思っていたらしい。

 それを危機でようやく理解するなんてな。

 ならば逃げたほうがいいのかもしれないがやることは決まった。


 何とかして死霊兵どもにここを守らせよう。メディアにもここの守りを手伝ってもらうか。


「え!?…あの…私は以前のレクサス様との戦いで力を使いすぎまして…今は戦うことはできないかと思います」


 戦えないだと?配下にした意味がないじゃないか。


「申し訳ありません…ですがレクサス様ならどのような相手でもどうにでもできるのではないでしょうか?」


(たしかにおまえがいれば何とかなるだろうな)


『私としては逃げることを推奨したいのですが…多くの人間に見られるということは多くに脅威として知られるということになりますよ?』


 こいつら全員俺が負けるとは思っていないのだろうか?

 まあ今までの経験上なんとでもなると思っている自分がいるのも事実だ。




 そうして光の柱が立ち上った方に向かって進む。

 だがしばらく進むと飛竜の死霊兵が城壁を破壊しながら死者の町に現れる。

 城壁の周りや足元にいる死霊兵を体が動くたびに城壁や地面ごと吹き飛ばしながら戦っている。

 相手は石できた巨人だった。

 城壁さえ破壊する攻撃を受けても少しも欠けないほどの硬さと持っているようで攻撃を受けながらも暴れる飛竜を抑え込もうとしている。

 下半身は地面から生えるような形になっているため攻撃を受けても怯みすらしないというおまけつきだ。

 振り下ろされる腕は凄まじい音とともに飛竜の骨を砕き地面を揺らす。

 飛竜はすぐに再生するがその再生の瞬間に押さえつけようとしている。

 まだ捕まっていないがどう見ても死霊兵で最高の戦力のはずの飛竜が押されている。


 よく見ると他の死霊兵たちのほとんどははすでに光の網のようなものに囚われて動けなくなっているようだ。

 たまに飛竜の攻撃で網ごと体を吹き飛ばされて拘束から解放されているようだがすぐに新しい網に囚われてしまっている。


 こいつら再生能力なんか持っていたんだな。


 目の前で繰り広げられるあまりの光景に現実逃避を始めてしまう。


 すると網で動けなくなっている死霊兵めがけて何もないはずの空中から光弾が現れ死霊兵を直撃する。

 だが死霊兵は何事もなかったかのように再生する。

 しかし光の網は健在であり動くことができないのに変わりはないようだ。

 どうやらあの光の網は動きを止めることとはもちろんだが光魔法を撃ち込んだあとも相手を拘束し続けるもののようだ。


 俺の知っている拘束の魔法は一撃当たれば勝負を決めるものを確実に当てるために使用するものばかりだ。

 だからこそどんな拘束の魔法だろうと逃げようとする内から外の力には強いが一撃で勝負を決めるため少しでも威力を殺さないよう外から内の力には弱いということは変わらなかった。

 だというのにこの拘束はまるで拘束相手が再生することを最初からわかっていたかのように拘束し続けることに特化している。

 どう考えてもおかしい。

 なぜ俺でさえ初めて知った死霊兵の特性を知っているかのように特別な拘束を用意できるのだ。



 再び現れた巨大な光の柱が飛竜の巨体を呑み込んで発生する。

 すると飛竜は体の形を保てなくなりばらばらになっていく。

 飛竜は完全にばらばらになったが光の柱はそれだけでは終わらさずばらばらになった骨の一つ一つに光の網となって何重にも拘束し地面に縫い付けていく。

 そしてすべての骨の拘束が終わるか終らないかといった時に飛竜が体の形を取り戻そうとする。

 再生しながらまるで地面に縫い付けられたかのような形になり必死でもがいているがさすがに先ほどのような破壊的な抵抗はできないようだ。

 そんな飛竜の近くで争っていた石巨人が倒れこむようにのしかかると再び現れた光の網が石巨人ごと何重にも拘束していく。


 飛竜はまだもがいているようだが完全に無力化されてしまったようだ。


『相手の巨大さに負けない巨大で頑丈な動く盾、細かくも大規模でしかも相手が再生するということまで考えに入れた封印と浄化の魔法が最適な瞬間に発動しています。ずいぶんと効果的な手を使ってきますね』


 のんきなことを言っている場合じゃない。

 これはほぼすべての死霊兵が無力化されてしまったんじゃないか?


 だめ押しのように森の中から死霊兵と木を吹き飛ばし木でできた巨人が現れる。

 吹き飛ばされた死霊兵の中には筆頭君もいる。

 やはりというか吹き飛ばされた筆頭君たちには光の網のが絡みついている。

 さすがに筆頭君までやられてしまうと逃げるしかなくなるだろう。

 急いでその戦闘に割って入る。


 筆頭君が吹き飛ばされた場所は俺が見ていた所から離れていたがその程度の距離など関係ないとでもいったようにすぐ近づくことができた。

 光の網に触れるどころか近づくだけで筆頭君に絡みついていた光の網がかき消える。

 ずっと戦闘を見ていたが光の網を発動している術者を見つけることは出来なかった

 まずは現れた木の巨人と飛竜を抑え込んでいる石巨人を消してしまおう。


 木の巨人の動きが一瞬だけ鈍るがすぐに俺に丸太のような腕を振り下ろしてくる。

 しかしその腕は俺に触れる前に枯れ木のように細く脆くなっていく。

 完全に枯れ切っていないからこそ俺に届きはしたが脆くなった木では俺に有効な攻撃にはならない。


 こいつの今の反応はまるで突然現れた俺に対して驚いたようなものだった。

 命令されたことをこなすだけの竜牙兵のようなものかと思ったがこの戦闘が見える範囲にこの巨人を操っている奴がいるのだろうか?


 俺の出現とともに光の網が消えたことによって自由になった死霊兵が木の巨人に向かって突っ込んでいく。

 筆頭君もその中にいるようだが今のままでは先ほどと同じように吹き飛ばされてしまうだろう。

 だがその予想に反して筆頭君は木の巨人が放った巨木が落ちてくるかのような腕の振り下ろしを避けると一振りで腕を斬り落とす。

 さらに返す刃で片足を斬り落とすと姿勢を崩した木の巨人に周りの死霊兵が先ほどの一撃の恨みを晴らすかのように群がっていく。

 それだけ、というには死霊兵の数が多いが群がられた木の巨人は急速に巨大な枯れ木にと変わっていった。


 …普通に倒してしまったな。

 別に困る訳ではないのだがこれほど簡単に倒してしまったくせになぜ先ほどは負けていたのかがわからないな。

 まあ今はそんなことより飛竜を自由にするべきだな。

 あいつさえいればこの周辺で適当に暴れさせたら操っている奴がいるかどうかくらいは分かるだろう。


 飛竜を押さえつけている石巨人を食うために近くに行くが飛竜を押さえつけるだけあって大きいな。

 飛竜の攻撃を受けても欠けることすらなかったため食えるのか不安に思ったが俺にとってはなんの問題もないらしい。

 石巨人の中身を食っているような感覚にとらわれながら石巨人を食っていると光の網が俺を拘束しようとどこからか飛んでくるが俺に触れる前に消滅する。

 思えばこの体になってからは直接的な攻撃以外はまともに受けたことがないな。


 そんなことを考えながら感覚的に半分ほど石巨人を食い終わるころになると石巨人に抑えられていた飛竜が石巨人を砕きながら起き上がる。

 起き上がると伝えてすらいないというのにまるで俺の考えを知っているかのように周辺の森に無差別に破壊をまき散らす。

 この場で暴れる飛竜を止められた唯一の存在であった石巨人がいない以上この戦場はもはやこいつの独壇場だ。


 そう思うと視界が光に包まれる。

 人間であれば目を潰されるような光量だ。

 先ほど見た光の柱を発生させる光魔法だろうが当然のように俺には何も起こっていない。

 それどころか先ほどは効いていたはずだというのに俺の周りにいる死霊兵も飛竜も何の問題もなく立っている。


 筆頭君の時にも思ったがこいつらは俺が近くにいる時はずいぶん余裕があるな。

 最初からこれくらい余裕で戦ってくれれば俺が出てこなくともよかったのにな。



 その後しばらく死霊兵が森で暴れていたが光の柱が立ち上ることはなく、何も見つけることは出来なかった。

 しかし気づけばずいぶん派手にやってしまったものだ。


 死者の都の周りは石巨人と飛竜が争ったためひどいことになっている。

 別に必要ないものとはいえ城壁を破壊されたというのも嫌なものだ。


 最初は攻めてきたであろうやつらを追い返すくらいにしか考えていなかったがずいぶんすごいことになってしまった。

 しかも攻めてきたやつをやることができなかった。

 多少見られても問題ないと思ったがこれは想像していたより面倒になってしまったかもしれないな。



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