死者の都
ジズドの口調が安定しないのはいろいろな人の怨念と記憶が混ざった状態だからだと思ってください。アリエルに対しては竜というものに対する恐れが出て丁寧な感じの口調になっています。
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これからこの街を漁るつもりだがどこを探すのか考える。
やはりこの街をよく知るジズドに聞くのがいいか。
この街に役に立ちそうなものはジズド以外ないのか?あとこの布の良い使い方なんて思いつかないか?
『城の地下に宝物庫があるからそこを探せばなにかあるかも。あと街の鍛冶屋なら鉱石くらいなら残っているかもしれないね。他には…討伐者ギルドがあったから街をくまなく探してみれば私みたいな高性能な武具が呪具に変化したものがあるかもしれない。布については鎧に巻きつけてすこしでも防御能力を上げるか装飾として私に付けるくらいしか思いつかないね』
ジズドは具体的な案を出してくれる。いいものだな。しかし自分で自分のことを高性能なんて言えば嘘のように聞こえてしまうな。
『この街の住人の未練に思ったことと多少の知識や記憶を持ってるからね。私を着ているものの魔力さえあれば少しだが魔法だって使えるよ』
謙虚なのか傲慢なのか分からないやつだな。
しかしついに普通の魔法を使えるやつが現れたか。
どんな魔法が使えるんだ?
『形状変化の魔法と陣作成の魔法だよ』
陣作成の魔法がわからんな。どんな魔法なんだ?
『簡単にいえば何かを核として陣の中に置けばその核の魔力が続く限り陣の中で簡単な魔法が続く魔法だよ』
すごそうな魔法だな。
『陣の中で魔法が続くといえばすごそうに聞こえるかもしれないが、大都市で売られてるような大きな宝珠を使ってもこの街なら一年くらい飲み水をおいしい飲み水にするぐらいの効果しかないからね。簡単に覚えられるのに有名じゃないのはきちんと理由があるということさ』
その効果どこかで聞いたことがあるような…。
アリエルも同じ事を考えているようである。
(ジズドよ。その陣作成の魔法はおまえを着ていた王を殺した火山竜を核に使えばどのような効果になるのだ?)
『おそらくですがこの街の規模でもかなり長い間水に関する問題は考えなくてよくなると思います。それに竜種は魔力の精製速度も早いですから意外なほど長く核として使えるかもしれませんね』
その話を聞く限りアリエルを封印していたのは陣作成の魔法を使ったものみたいだな。
それにしても陣作成の魔法は俺の考えに使えそうだ。以前から考えていた迷宮核を使って人造迷宮のようなものを作ることができるのか聞いてみる。
(お前そんなことを考えていたのか)
『迷宮核なんてものがあったなんて誰の知識にもありませんでしたよ…しかしおもしろいですね。とにかく持っている迷宮核を見せてもらえますか?』
迷宮核を包んでいた布を解き正面の地面に置く。なんかすごい勢いで魔力というか怨念というか、そういったものが集まっている気がする。こんなに魔力を集めていた記憶はないのだが?
『!早くしまって!』
なぜだかわからないがジズドが焦ってるな。とにかくしまうか。
そう思いひとまず布に包む。
(何をそんなに焦っているのだ?)
『今私はアリエルさんがなぜ動じないのか疑問に思いましたよ。この迷宮核…魔力の回収率がおかしいです。今すごい勢いでこの地の魔力を吸ってましたよ』
だめなのだろうか?
(だめなのか?)
『まったく未知のものなんですよ?大きさのわからない爆弾の導火線に火がついたようなものでしょう…』
そんな疲れたように言われてもな。
(爆発するとはかぎらんだろう。それにレクサスは凄まじく頑丈でな。多少の爆発なら問題ないはずだ)
そういう問題でもないだろう。
『もういいです。…でどうするんです?あの魔力の回収率なら迷宮核を使って陣作成の魔法を使えるはずです。どんな陣を作ればいいんですか?』
構想はあるが大がかりなものになりそうだから先に宝物庫とか街の鍛冶屋ついでに呪具さがしをしたいな。
(私はなんでもいいぞ)
『私も同じく』
陣魔法とやらにどれだけの時間がかかるかわからないからな。
まずは一番近い城の宝物庫からだな。
宝物庫は地下にあるらしいが城がぼろぼろなので入口を見つけるのも苦労した。
しかも中にあったのは使い道のない金貨などの財宝ばかりである。
人間だったころなら飛び上がって喜んだが今ではどうでもいいな。
(目につくようなものはないな)
そうだな。
『まあ空よりはましだったぐらいの感覚でお願いします』
次に行くか。
街の鍛冶屋の中を確認しながら呪具を探してみる。
結果からいえば黒鉄がすこしと魔鉄をかなりの量見つけることができた。
呪具は探した範囲では見つけることができなかった。
鍛冶屋は多くあったのだがほとんどは中央にある大きな鍛冶屋で作られた武具を売り武具の手入れをするだけの武具屋みたいなものであった。
一応武具を作っている鍛冶屋もあったのだが鉄が主で魔鉄があればまし程度の規模だった。もちろん魔鉄は食ってみたのだがまずかった。
今は中央の鍛冶屋の中にいる。
この黒鉄と魔鉄を何かに使えないものか。
『黒鉄は小粒ですから私に食べさせてもらえないか?』
(そんなことができるのか?)
『レクサスさんがやってるのを見たらできる気がしまして。表面の装飾を直すぐらいならできるかな、と』
ならこの大量の布も使って強そうな感じに仕上げてくれ。
そうしたら討伐者に出会ったときビビって逃げてくれるかもしれないしな。
『強そうといわれても…どんな感じにすればいいのかぐらいは…』
(強そうな感じか。竜の意匠を施したものがいいな)
たしかに竜は強そうだ。
『…そうするよ』
しかし鎧がどうやって食うんだ?
『私に鉱石を近付けてくれたらあとはこちらで食える』
言われた通りジズドに鉱石を近づける。
そうすると抵抗なく鎧に埋まっていく。気持ちいいな。
『大丈夫そうだ。どんどん次を頼む』
次々と鉱石を吸収して大きくなっていくジズド。布も使いながら形状変化で形を整えていく。
左胸のえぐれた部分に食いつくような形に蛇のような竜が浮かび上がる。その竜の体は長い胴を鎧に巻きつけたような形で鎧全体に刻まれている。竜の鱗と同じ形になっている大量の魔鉄が腰から膝下ほどまで伸び、動きを邪魔しないように足の形に合わせるように前が開かれている。金属同士は大量にあった布を使い繋げている。それでも大量に布が余ったので壊れた左胸が入り口になっており鎧の中に核を入れておけるような大きな袋を作ってもらった。まだ布が余ったので腰部分のつなぎの強化や竜の鱗の周りに鱗を際立たせるために使ってもらう。
鎧を着ているため見ることのできない俺の代わりにアリエルが声に出して報告してくれた。おまえがうれしいだけだろ。
しかしはじめて形状変化の魔法を見たが布を小さくしたり一つにまとめたり、絞って糸みたいにしたりとすごく便利そうだな。
(いい出来だな。気に入ったぞ)
ほとんど見えないがアリエルが満足しているからにはかなりの出来なのだろう。見ることのできる胸の竜はすごく強そうだしな。ジズドはほんとうにいい仕事をしてくれる。
『我ながらいい出来だ。かなりいい顔になっただろう?』
鎧の顔なんてわからないがな。
ジズドの強化も無事終わり街の中も調べ終わった。
最後は人造迷宮作成だ。
『結局どんなものを作ればいいんだ?』
俺は強いやつは知恵を絞り、己に有利な場所で戦いそういったものがかみ合ってようやく勝てるものだと思っていた。だがその考えはは死者の都を見て変わった。
強いやつを狩るために必要なものは数なのだ。
多少の有利不利など関係なく踏みつぶす数。
つまりこの街に迷宮核を置けばどんな奴が来ても狩れるじゃないか!陣魔法はこの中に入りたくなるような効果にすれば完璧だ。
『…』
(…ジズドが呆れているから私が言うがどんな奴が来ても死ぬから死者の都などと言われて放置されたままなのだろうが)
…それは盲点だった。強いやつを安全に狩ることばかり気にしていたから簡単なことを忘れていた。どこを探せばわざわざ死にに来るような生き物が見つかるのだ。
『まあ私は腰を落ち着けるのはいろいろな場所を見て回ったあとでもいいと思っていましたし…アリエルさんももっといろんな場所を見たくないですか?』
(見てみたいな。同じ場所にいるなどつまらんからな)
つまらないか。
たしかに今まではいろいろな場所に行き、見るものが新鮮だから飽きなんてなかったから考えもしなかったが同じ場所で獲物が来るのを待つのは飽きてしまうかもしれない。うまいやつが食えたら楽しいのかもしれないというものだが、アリエルとの旅は楽しかったという事実がある
それにこの体になってすぐの頃にせっかくなので好き勝手に生きようと決めたではないか。うまいものを食うのは好き勝手に”生きる”ことの次に見つけた楽しみではないか。つまらないのはよくないな。安定を求めすぎて生前のようなつまらない行動をするところだった。
(そんなことより鬼族が街を滅ぼされたわけでないのなら鬼族くらい食えるかもな。食いに行かないか?)
アリエルが一番好き勝手に生きているかもな。
こういった姿勢を俺も見習うべきかもしれないな。
死にたいわけでも危険を楽しむわけでもないがとりあえず外に出て何か食うか。
『ようやく外ですか。早くこの目で見たいものです』
ジズドも外に出たがっていたしこれでよかったのかもしれないな。
迷宮核を鎧の中にしまい食いものを求めて外に出ることにした。
結論
もし迷宮を作るとしても自分に有利すぎるとなにも来てくれない。
なので最初に考えたようにどこか適当な場所に迷宮核を置いてそこに自分が陣取るのが効率としては一番いい。
ただし危険度が増すため一番最初の方法は何か保険のようなものがないと主人公の性格上使わない。




