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エピローグ

少年は本を読み終え、机に置いた。 本は、とある英雄えいゆうの活躍をしるした伝記でんきだった。


「やっぱすごいよな。 ツカサ フユトミ。 強すぎる」


ある日突然王国に現れた風変わりな英雄、ツカサ フユトミ。

彼が何処どこから来たのか、今となっては誰にも分からない。


記録に残っている事実は、以下のとおり。


その英雄は恐ろしい異界の怪物を召喚し、正義の為に使ったこと。

魔物たちの国、蛮国ばんこくヘルドの侵攻を仲間と一緒に退しりぞけたこと。

ヘルド国の狂った王が禁呪"かくみさいる"を使って世界を滅ぼそうとした行いを、激闘の末に止めたこと。

バラバラになって不安定だった王国を統一し、仲間と共に皆が安心して暮らせる国を築いたこと。

しかし、英雄は突然王位を後継者に譲り、歴史から姿を消した。


人々は言う。 英雄フユトミはまだ生きている。 影から常に王国を守っていると。


実際、英雄が姿を消した後にも王国の危機はいくつもあった。 妖魔ようまが王国を襲い人々をおびやかしたり、武装したごろつきどもの大集団が略奪りゃくだつを繰り返したり。


だが、いつも王国の守備隊の手に余るような大きな事件が起こると、奇妙な援軍がやって来るのだ。

大きな音をとどろかせながら飛んでくる鋼鉄のワイバーン、 もしくは地を這う地竜さえ圧倒する鋼鉄の化け物。

それらが集まり人々を守った。


いい気になって力を欲しいままに人々を蹂躙じゅうりんしていた妖魔やごろつきは、自分たちより強大な何かがこの国を守っているという事実を知らされることになる。


「早く一人前の召喚術師になって、フユトミのような英雄になる」 少年はもう暗記できる位に、何度も読んだ伝記を本棚に仕舞しまうと、部屋から出て外に向かう。


彼は子供がなかった夫婦に引き取られ育てられた。 その夫婦のもと、魔術師養成の学校に通っている。

養母ようぼは優しく、養父ようふも厳しくはあったが情の深い人だった。


不満と言えば、少年が尊敬する英雄フユトミを養父は嫌いな事くらい。

養父はいつも言う 「伝記は事実とは違う」 とか 「大げさだ。 奴はそんな大した人間じゃ無い」 とか。 

英雄に対する侮辱ぶじょくだ。と少年は思う。 大いに不満だった。


養母はそんな少年の味方だ。 養父がフユトミの悪口を言うと、いつも反対してくれる。

そんな時の養父は、困ったような顔をして黙ってしまう。

御母おかあさんも英雄フユトミのファンなんだ」 少年は誇らしかった。


彼らが住む家は、人里からかなり距離がある山の中。 学校からは遠いが少年はその大きな家が自慢だ。

習っている召喚の術式じゅつしきを試すのにも、里から離れた場所に家があるのは好都合でもあった。


「異界の神、ギルアデールよ。 契約に従い汝の眷族けんぞくを我が元にあらわせ」 少年は習ったばかりの術式を一生懸命唱えるが上手くいかない。 それはそうだ。 英雄フユトミが使役しえきしていた鋼鉄の魔物をそう簡単に呼び出せる訳がない。 少年は優秀な魔術師になる素質を十二分に備えていたが、それとこれとは別の話だ。


「困ったものだな。 あの術式で兵器の召喚が出来るわけがない」 少年を見ていた養父はつぶやいた。


「あら。 それだけフユトミを尊敬しているのですわ。 大召喚術士だいしょうかんじゅつしでもあった英雄フユトミを」

養母はいたずらぽい笑みを浮かべ養父を見る。

彼の横顔は相変わらず魅力的だ。 彼女は思った。 多くの女性をその魅力のとりこにしてきた私の最愛の夫ですもの。


彼女は言う。 「あの子なら、あなたの後を継げますわ。 優秀で優しい。 あなたそっくり」


「あの子は、重荷を押しつけられて俺をうらむだろうか?」


うらむなんてとんでもない。 ツカサ。 憧れていた英雄から認められて後を託されるのですから」


「英雄と俺を呼ぶのは、頼むからやめてくれ。 でも、そうだな。 そろそろ正体を打ち明ける時期だ。 後を継ぐかどうかはあの子が決めればいい」


ツカサと呼ばれた養父は、呪文の練習をしている少年をじっと眺めた。

そして彼の呪文の詠唱えいしょうの後に、一言付け加えた。


「ハリアー攻撃機 召喚」


練習をしていた少年の前に、大きな光の塊が現れ攻撃機が実体化する。 甲高かんだかいジェットエンジンの音が辺りにひびく。

突然現れたハリアー攻撃機を見て、少年は立ちすくんだ。


今日は天気もいい。 空の散歩には最適だ。

少年の養父―冬富ふゆとみ つかさは、愛妻ユマ・イベールの肩に手を掛け、少年の元に歩き始めた。



Fin

――――……――――……――――……――――……――――……――――……

<作者よりご挨拶>


最後までお読み頂きありがとうございます。

これにて、物語は終了とさせて頂きます。

いつか皆様と”小説家になろう”の何処かで、再びお会いできますように。


P.S.

感想いただけますと、大変嬉しいです。 次回作の参考にさせて頂きます。


名も知れぬ黒い文鳥より

――――……――――……――――……――――……――――……――――……


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