表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/47

調査

俺は英雄エストラが剣士カミュに世界をたくしたと言われる、アケルの森の調査をする事に決めた。

時間は深夜を選ぶ。


今回は領地の奪回だっかいが目的ではない。 少人数で行動し、調査が済めば素早く撤退てったいするのが原則だ。

出来れば敵に気が付かれたくないところだが、戦闘の覚悟かくごはしておくべきだろう。


シルフィードだけを連れて行く。


ユマの絶対魔法防御の能力を考えれば、純粋に戦略的に考えるのならば、彼女を一緒に連れて行くべきだと思う。 しかし俺はいやだった。


アケルの森のそばにあるバドレアの街は、今となっては王国の中央部で唯一ヘルドが制圧している拠点だ。

エレシュキガルがる可能性が高い。前回の戦いで、奴は俺の心を読んでユマを殺そうとした。

彼女を連れて行くのは危険過ぎる。


「ツカサ。 私も一緒に行きます。 今回は危険なのでしょう? 私は回復もできるし魔法防御も…」


「駄目だ」


「嫌です。 一緒にいきます。 もう離れたところでツカサの心配してるのは嫌です」

ユマは人質になって離れていた時に余程よほど怖かったのだろう。 俺と離れるのを極度に嫌がる。


「前回の戦いで、エレシュキガルは君を殺そうとした。 今回の目的地には奴がいる可能性は高い。 一緒に居るところを見つかれば、君から殺そうとするだろう。 危険過ぎる」


 ユマが聞きたがっている言葉とは違うだろう。 だが俺は、事実だけを端的たんてきに伝えた。 恐らくこれが俺の欠点だ。 

「君がると俺は全力で戦えない。 分かって欲しい」


「…足手まといと言うことでしょうか。 ごめんなさい。 無理を言って迷惑をかけるつもりは無かったんです」

ユマは下を向く。


「私、ドラゴンになりたい。 そうすればシルフィードさんみたいにツカサと一緒に戦えるのに」


そこまでおもってくれるユマに、俺は動揺どうようするが絶対に連れてはいけない。 

なみだ混じりになったユマの顔に俺は気づかないフリをした。 確かに俺はフェミニスト失格だ。


深夜になった。

シルフィードは竜に変身して夜空に舞い上がる。

俺はアパッチで、シルフィードと一緒にアケルの森を目指して飛ぶ。


魔族は当然、魔法が得意だ。 夜に飛んでいるからといって気が付かれない保証はない。



『ツカサ。 もうすぐ森の上空よ。 じゃあ打ち合わせ通り、私は魔力が集まっている場所を探すわ』

俺達は、森の中の目的の場所に何か目印めじるしがあると推測すいそくしていた。 目印は魔力を使った何かである可能性が高い。


『頼む。 俺も赤外線で疑わしい場所を探してみる』


二人で上空から手がかりを懸命けんめいに探す。


俺の視覚は、ヘルメット内の表示照準システムに浮かび上がる赤外線画像だ。

あやしそうなのは、ぽつりとある井戸のように見える穴。それとがけに開いた洞穴どうくつのようなものくらい。 井戸と洞窟の間は2kmほど離れている。


『シルフィード。 どんな具合ぐあいだ?』


『井戸のようなものと、がけにある小さな洞窟どうくつに、ごく弱い魔力を感じるわ。 魔力を感じるのはその二つだけね』


『では、井戸から探そう』


俺は井戸の上空にヘリを飛ばす。


まわりは森が深く、ヘリを降ろす場所が無い。

シルフィードが飛んでいるヘリの下に来て、乗り移れるように速度を合わせてくれた。 俺は彼女に飛び移る。


一緒に地上に降り、彼女は少女の姿に戻った。

目的の場所のすぐそばだ。


「ハズレみたいね」 シルフィードがつぶやく。

レンガを丸く組み合わせて造られた西洋式の井戸は、中をのぞくとにごった水が底の方にまっている。

「恐らく魔法で水を汲み上げる仕掛けなんだと思う。 もう動かないけどその名残なのこりで魔力が少しだけ残ってる」


昔、近くに村落があったのだろう。 そこで使っていたと思われる何の変哲もない、ただの井戸。


「次の場所に行こう」


俺達は急いで、もうひとつ見つかった怪しい場所である、がげに開いた洞穴どうくつに飛んだ。

今度の場所では洞窟前で森が消え、岩や石混じりのむき出しの地面が広がっている。

そこには低い木がまばらに生えているが、ヘリをなんとか降ろす事が出来た。


俺は機体から外に出ると、警戒けいかいさせる為にアパッチを単独で上昇させる。

シルフィードは地上に降りると、魔法の光で周囲を照らした。

俺は、少女姿の竜と一緒に洞窟どうくつに向かう。


『テキ セッキン』


アパッチが警告けいこくする。 やはり来たか。


「シルフィード、敵だ」 伝えるのと同時に、俺はアパッチの視覚で敵を見る。

赤外線で浮かび上がる高速で迫る人型ひとがたの影。 悪魔のような羽に女性らしい柔らかな身体のシルエット。 魔族だ。 エレシュキガルだろう。 もう間近だ。


『攻撃だ。攻撃しろ』

アパッチのチェーンガンが咆哮ほうこうし、射撃を開始する。


「急ぐぞっ」 俺はシルフィードに声をかけ目的の洞穴に走った。

調査さえ済ませれば、エレシュキガルの相手をしてやる必要は無い。


突然、後方からゴンっと大きな音がする。

振り返った俺が見たものは、巨大なやりつらぬかれ、コントロールを失った相棒―アパッチの姿だった。

機体を空にとどめることが出来ず、ヘリは墜落を始める。


地面に叩きつけられた相棒は、瞬時しゅんじ耐久限界たいきゅげんかいを超え、光の粒と成って崩壊ほうかいする。


愕然がくぜんとする俺の前に、上空からなまめかしい女の声がする。

「ツカサちゃーん。 お久しぶり。 会いに来てくれるなんてうれしい!」


「しつこい女は嫌われるわよ!」

シルフィードが魔法シールドが発動。 青色の光が俺たちの周囲をかこみ魔族への防壁ぼうへきと成る。


俺は87式自走高射機関砲を召喚する。 そして、エレシュキガルに言ってやる。

「お前の顔なんて見たくもない」 


奴は、微笑ほほえみながら右腕を上げた。

「じゃあ、死になさい。 死んで私のものになりなさい」


実体化した87式が、巨大な車体に搭載した二門の90口径35mm対空機関砲での砲撃を開始する。


35mm機関砲弾の雨が、エレシュキガルの展開したシールドにぶち当たった。 奴のシールドが反応し着弾点が輝き出す。

砲弾はシールドにさえぎられ、奴の身体には達していない。

しかし一分で1,000発を超える連射は、奴をその場に釘付けにした。


「くっそぉー。 フユトミー。 そこに居ろ~。 待ってなさい。 すぐ殺してやる」

シールドの維持いじがキツイのだろう。 魔族の女は苦痛に顔をゆがめる。


「シルフィード。 今のうちだっ!」


俺達は目的の洞穴に駆け込んだ。 だが中に入れたのは俺だけだった。

一緒に入ったシルフィードは、穴の奥から爆発的に溢れ出た光に、外へはじき飛ばされる。


俺の方は何とも無い。 光はシルフィードだけを外に弾き飛ばした。

彼女の元に駆け寄ろうとしたが、入り口が光の壁でふさがれている。

外に出られない。 閉じ込められたようだ。


『シルフィード。大丈夫か?』


『痛い~。でも大丈夫。 あんたは?』


『俺は大丈夫だ。 だが閉じ込められた。 シルフィードは逃げろ。 87式はそんなにたない』


『でも、あんた…』


エレシュキガルが苦痛をこらえて、87式自走高射機関砲に魔法のやりを投げつけた。

87式は瞬時に光の粒と成って崩壊ほうかいする。


『逃げろ! 今は戦闘でリスクを負う必要は無い。 俺は大丈夫だ。 多分、エレシュキガルもこの洞穴には入ってこれない。 この洞窟が俺達の目的地だ』


『分かった。 今は逃げる。 必ず後で迎えに来る! 死なないでよ。 絶対!』


シルフィードは竜に変身して空に舞い上がった。


エレシュキガルは、戦闘で消耗したのか、ぜーぜーと息をしながら、俺の居る洞穴に向かってくる。

俺は相手なぞしない。 洞窟の中を奥に進み始める。


「ちょっとー 何よこれ。 開けなさいよー フユトミー 逃げるなああ!」


やはり、入って来れないようだ。 俺は読みがあたってホッとした。


調査用に持ってきたLEDライトを使いながら、俺は、洞窟の奥の方へと進んだ。

洞窟はゆるやかに下の方へ傾斜けいしゃしている。


長い洞窟だ。 俺が通るには十分な高さだ。

空気は湿っぽく壁面にはこけらしきものがびっしり生えている。

上から時々、しずくが落ちてくる。


300mほど進んだろうか。 俺は落胆らくたんした。 行き止まりだ。 

洞窟は細くなりいくつかに分かれている。 分かれた小さな洞窟は人間が入り込める大きさではない。


何らかの仕掛けがあるのかと思ったが、どう見ても自然の洞窟だ。


ここは目的地ではないのだろうか? いや、そうだとしたら、あのシルフィードを跳ね飛ばした光は一体何なのだ。


来る途中で何か見落としたのだろうか? 俺は洞窟を元に戻り始めた。 今度は何も見逃さないように周囲に十分注意を払う。


何も無い。 もうすぐ入り口だ。 エレシュキガルはまだ居るのだろうか?


…いや、おかしい。 入り口付近が明るい。 人工の光や、魔法の光では無い。 明らかに自然光で太陽の光だ。 今は深夜のはずなのに。 俺は腕時計を見直す。 

旧式の針が指している時間は深夜で間違い無い。 


俺はゆっくり洞窟の入口に向かう。 エレシュキガルがいれば、今の俺では対抗出来ない。

さいわい奴の気配けはいは無い。


洞窟の入口から入ってくる光は、どう見ても今が真っ昼間なのを示している。

俺を閉じ込めた光の壁も無い。 外に出た。


周囲を見回す。 太陽が高い。

それにあつい。 今は秋の終わりなのに。

この気温は、春か初夏だ。


頭上から爆音が聞こえる。 この音は久しぶりだ。 ジェットエンジンの作動音。

見ると、一機の軍用機が青空を背景に降下してくる。


垂直離離着陸機すいちょく りちゃくりくき ハリアーII 攻撃機だ。

ハリアーIIは滑走路を使うこと無く、エンジンの噴射方向を変えることによってヘリのように飛び立ち、降りることが出来る攻撃機だ。


ハリアーIIはゆっくりと降下し、洞窟の前の空き地に着陸をした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ