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賭け

「皇帝。俺に提案がある。聞いてくれないか」


「言ってみろ」

皇帝は改めて俺の方に目を向ける。


ここで、帝国を味方につけないと王国は終わりだ。

俺は最後の賭けに出る。


「俺が王国を平定へいていし支配する。実質的な王になると理解してもらっていい。

3万の兵を俺に預けてくれないか。それでヘルド軍と反乱分子をおさえる。

兵力の足りない分は、王国内の反ヘルド陣営を取り込んで集める。

俺が成功して王国を支配した後は、そちらの都合の良い王と置き換えるなり、属国にするなり好きにしてくれ。

俺は権力に興味は無い」


但し、と俺は付け加えた。

「成功したらユマを含め仲間たちが安全に暮らせるよう取り計らってくれ。

それが条件だ」


ユマはびっくりして俺の顔を見る。


皇帝は恐らくユマの政治的な力量を疑っている。

ユマは優しい女性だ。平和な世の中なら良い君主になるだろう。

…しかし、今は平時では無い。

現状では恐らく、力を使うことを躊躇ためらわない俺の方が王には向いている。


そして、皇帝は恐らく軍人タイプの人間を、貴族より信頼する。


会話を聞いていて気がついたのは、過去において帝国は王国を支えようとしていた事実だ。

帝国にとっては王国がしっかりとし、ヘルドの脅威を自国から遠ざけられればそれが一番良いのだ。自分たちの負担は最小限度が前提だが。


しかし、過去において帝国の援助は上手くいかなかった。

理由は腐敗した王国の権力者達だ。

彼等は信頼できるパートナーを王国内に見つけられなかったのだ。

だが俺は信用出来るぞ。どうだ?


皇帝はしばし考えに沈んだ。


「フユトミは、ユマ・イベールの恋人と言っていたな。王になるのか。

そういうことか」

恋人と言うのは事実じゃ無いが、反論の意味は無いだろう。


考えが決まったのか皇帝は顔を上げ俺の目を見る。

そして結論を言った。


「無理だな」


…駄目か。

大言壮語だいげんそうごを吐いたと、俺自体も思ったからな。

ユマ。すまない。俺は君を助けられなかった。


だが、皇帝は言葉を続けた。

「その戦力では無理だ、と言っている。

シルフィード。フユトミを助けてやれ」


シルフィードが皇帝に向かって礼をしながら答える。

「承知致しました。陛下のお望みのままに」


イフリートが慌てたように皇帝に頼み込む。

「陛下。私もあねと一緒に戦いたく存じます」


「いや。駄目だ。お前にはまだ早い。本土防衛に専念してくれ」

皇帝は竜の頼みを拒否し、俺に向き直った。


「フユトミ、兵力は5万まで出そう。現状で俺が出来るのはそこまでだ」


皇帝は最後に言った。

「俺はお前に賭けてみよう」



会談が終わり皇帝の居城を去ろうとするが、シルフィードから一緒に夕食をとらない?と誘われる。

ずっと飛び続けて来たせいで俺もユマも食べていない。

シルフィードも飛ぶ前に、食事をしていなかったのだろう。

もう夜も遅い。他にあても無かったので好意に甘えることにした。


城の中に皇帝の家臣かしん達が使える控室のような部屋があり、そこで用意してもらう。


「ツカサとは、もう一回戦いたかったんだけど、まあいいっか。

取り敢えず味方って事で我慢してあげる」

シルフィードはどこか楽しげだ。戦えるのが嬉しいんだろう。


「姉さんに変なマネしたら許さないからな。

皇帝は何で僕を出してくれないんだろう。僕はもう一人前なのに」

イフリートは俺のことが気に食わないらしく、さっきからずっとこんな感じだ。

あね思いでシルフィードの事が心配なんだろうが、俺に対してそのたぐいの心配は無用だ。

自慢には全くならないが。


ユマは先ほどから、どこかモジモジしている。

…俺が王になるって言ったのを気にしてるんだろうか?

ユマを差し置いて俺が王になる云々は、本当は言いたくなかったんだ。

分かってくれるだろうか?


「ツカサ。私、嬉しかったです。私と一緒になって王国を治めてくれるなんて」

ユマがこちらを見た。目が少し赤い?

「私、心配してたんです。ツカサは気が多いし。女の子の間ふらふらしてるし」


ええと。いや。心配は杞憂きゆうだったようだが、取り敢えずこの問題は後回しだ。

結婚するつもりは無いし、色々と誤解がある。

王になったとしても、帝国の指定する王とすぐ入れ替わるのだ。


「ツカサ。これからどうするつもり?」

シルフィードが助け舟のつもりか、声をかけてくる。


「そうだな。とりあえずお願いしたいのは…」

俺はシルフィードに、やってもらいたいことを話した。


数日後、俺達は王国内の国境沿いにある街コリントスで、アネット&リンダと落ち合った。

俺達の本拠地として使える建物は帝国が貸してくれた。

帝国資本の商会が王国内に出していた支店の建物だった…て事だが、まあ信じておこう。多分、王国内での諜報ちょうほうや工作活動に使ってたと思うんだが。


俺は、シルフィード、ユマ、アネット、リンダに向かいこれからの戦いの方針について話した。


まず現状の確認だ。

シルフィードが持つ帝国側の情報と、リンダがギルドに調べさせた情報をまとめると以下のとおりになる。


王国の東側、タレントゥムを含む3つの街はヘルド軍に占領された。

ヘルド国境に近いこれらの都市は、一番最初にモンスター達の攻撃を受けて呑み込まれた。


中央部にあるエフェソスを含む5つの街は、現在王国の反乱分子達とヘルドの連合軍の攻撃を受けている。王国軍は粘ってはいるが敗色が濃厚だ。


帝国側にある西部は今のところ王国軍の勢力範囲だ。

恐らくヘルドは、帝国国境近くでの争いを避けている。

やはりヘルドも帝国は怖いようだ。


俺がやるべき事は決まっている。

何はともあれ、華々(はなばな)しい戦果だ。部分的でもいい。目立つ戦果が欲しい。

俺の名を上げ、ばらばらに戦っている王国の各勢力を取りまとめる必要がある。


それともう1つは、帝国が俺についた事を知らしめる事だ。

帝国の軍事力は恐れられてるし、良く知られている。利用しない手は無い。

味方を集めやすくなるし、帝国の参入により敵の士気は落ちるだろう。


俺の戦力は、召喚兵器達、戦略級ドラゴンであるシルフィード、それと皇帝に約束してもらった帝国軍の5万の兵士達。


敵軍は、ヘルドの戦略級ドラゴンが一匹、王国の反乱分子達が率いる地竜が数匹、ヘルド軍18万、王国の反乱軍が2万程度。


俺は作戦を決めた。


俺が決めた作戦は、まずヘルドの軍事拠点ザルメスクを攻撃すると言うものだ。

その後、ヘルド首都タリスへの侵攻作戦ディープ・ストライクを行う。


軍事拠点ザルメスクは、王国との国境沿いにある。

王国内に侵攻したヘルド軍が必要とする物資は、ひとまずザルメスクに集められそこから王国内部に運び込まれる。

つまり兵站へいたんの拠点を叩く作戦だ。


この作戦では召喚兵器達の中で最大の攻撃力を持つ、多連装ロケットシステム 自走発射機M270 MLRSを使おうと思う。

シルフィードにも手伝ってもらうつもりだ。


次のヘルド首都タリスへの侵攻作戦は、俺単独でやろうと思う。

ドラゴンは目立つし、作戦の危険度も高いのでシルフィードは出したくないのだ。

帝国から預かっている竜に今の段階で怪我はさせたくない。

危ない橋は俺が渡るしかないだろう。別に死ぬつもりは無いが。


この作戦で俺が名を上げれば、王国内の貴族で俺のがわに転ぶ人間も出てくるだろう。その兵力と王国から借りた5万の兵士を使って、ヘルドに押さえられている各街を個別撃破で取り戻すつもりだ。

首都侵攻は敵側に与える心理的ダメージも大きいだろう。


「私も一緒に行きます。私の絶対魔法防御アンチ・マジック・シェルは役に立ちます」ユマが強硬に主張する。


「あんた、首都侵攻とか一番美味しいところ独り占めする気? あり得ないわ。ツカサは私にイジワルだったって皇帝に言いつけるわよ」シルフィードも割り込む。


「私も一回ぐらい連れて行って欲しいんだけど。ヘリの中から魔法攻撃出来るし。属性攻撃も防御出来るし」アネットも売り込む。

直接攻撃しか出来ないリンダは悔しそうだ。


こりゃ駄目だ。一体どうしたもんか。

王になるとか言ってる人間が一人で仕事を抱え込むのも、いけない事なのかもしれない。


「私、一人で残されたらタレントゥムに乗り込んで、ヘルド軍説得してきます」

とユマ。

彼女だと、本当にやりかねないのが怖い。


その夜は皆で小さなお祝いをした。

王国を取り戻す戦いを今から始めるのだ。

王国=帝国 同盟軍結成のお祝いだ。


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