コンビニの棚の向こう
99.コンビニの棚の向こう
コンビニで夜勤している時に、変な経験をした。
相方が事務所に込もって休んでいるときに、俺は一人で棚に商品を陳列していた。
その時は何にも考えずに、ただいつもの事だから事務的にこなしてた。
お菓子の並んだ棚に商品を陳列していると、しゃがみこんだ自分の視線の先に、向こう側に立っている人の足元が見えた。
陳列した商品の上に出来た微妙な隙間から向こう側って見えるんだよ。
で、俺はその白いヒールを履いた足を見て、おかしいなぁと思ったんだ。だって客なんて居なかったし、来ても入店時に音が鳴るからわかるんだ。
でも少し眠かったし、ボーと商品の陳列に没頭してたから、気付かなかったのかな、とその時はそれくらいに思ってた。
そこの棚の陳列を続けながらその足元を見てたんだけど、その足元がピクリとも動かない事に気が付いた。だから何となく異様に思って、女の足元があった棚の向こう側に回り込んで見たんだ。
居ないんだよ。何処にも客なんて。一応店内中見て回ったんだけど、誰も居なかった。
急に恐ろしくなった俺は、相方の休憩する事務所に駆け込んで、驚く相方を無視しながら店内を映した監視カメラの映像を巻き戻してみた。
やっぱり居ないんだよ誰も。俺が例の棚の前にいる間に。
俺は訳がわからなくなって、また女の足元が見えた棚の前に中腰になった。それでそこに陳列した商品をかき分けて見たら、やっぱり白いヒールを履いた足元が見えた。
青ざめた俺は、また事務所に戻っていった。相方に事情を聞かれたが、怖がらせてはいけないと思って煙に巻いた。
後日、また同じような状況で例の棚に商品を陳列する事になった。前の事を思い出して恐々としながらも、棚の向こう側を見ないようにして作業を続けた。
すると、早く早くと思って雑に作業をしていたからなのか、一つ上の段の棚の商品がバラバラと頭の上に落ちてきた。
いけないと思って落ちた商品を拾って一つ上の段に顔を覗かせると、吹き抜けになったその箇所から棚の向こう側が見えてしまった。
そしてそこから、棚の直ぐ向こう側に密着する程の近くに、こちらを向いた生白い女の顔があった。虚ろな目をして俺の顔を眺めていた。
ずっとそこに立ってこちらを覗いていたかの様に、その女はそこに居たんだ。
そして飛び上がった俺はまた店内を見て回ったが、そこには誰も居なかった。




