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居るはずのない男
90.居るはずのない男
今でも説明のつかない不思議な話があります。夢だと言われればそれまでなのですが、私にとっては今でも鮮明に残る記憶です。
真夜中にふと目覚めると、枕元のアナログ時計が逆回転を始めた。
その時計に沿って、前日の行動が巻き戻されて再生されるのです。
その日にあったことを正確に刻む光景なのですが、そこに見も知らぬ男がボーッと立っているのです。視界の隅で延々と。
視界の片隅で、色白の中年男は、無精髭を生やした姿で呆然と立ち尽くしている。
その人の姿は今でもハッキリと思い出せるが、全くもって見も知らぬ男だった。
逆回転する時計に沿って、朝目覚めた時まで遡ると、私は夢から覚めた。
月明かりに照らされた時計を見ると、正常に回っていた。時刻は夜中の4時だった。
寝ぼけ眼を擦りながら身を起こすと、電源を入れてもないのに部屋の蛍光灯が灯った。私の枕元に夢の中に居た見も知らぬ男がしゃがみこんで私を覗き込んでいた。
次の瞬間に私は朝日に照らされて目を覚ました。部屋には無論私しか居なかった。




