前を走る車
69.前を走る車
深夜にとある田舎を走っていたときの事でした。
そこは片道一車線の細い道路でした。その道は速度が出るので深夜なんかは法廷速度を大分過ぎた速度で走るのですが、その日は前に黄色い軽自動車がいてそうはいきませんでした。
時速四十キロ位で走り続ける前の車を正直鬱陶しく思っていたのですが、追い越せるような道幅でもなく、ひたすらにラジオを聴きながら肘をついていたんです。
車間も大分近くなって来てイライラしていたのですが、ふと前を走る黄色い軽自動車が異様なことに気が付きました。
トロトロと走る軽自動車の下の辺り、後ろのタイヤとタイヤの間に何かが見えるのです。
目を凝らして近付いてみました。
車の底の所に、逆さになって何かが貼り付いているのです。
暗闇でなんとなくシルエットしか見えないのですが、人の影のような物が、ヤモリの様に四つん這いで前を走る軽自動車の底に貼り付いてこちらに顔を向けているのです。
時折灯る赤いブレーキランプに照らされて、その影の顔が赤く照らされました。
無表情の中年男性の顔半分が真っ赤に照らされて見えたのです。
いや、そんなはずはないとより目を凝らして車間をキープしたのですが、チラチラと男の顔が見え続けたので、見間違いじゃないと気づいて、僕はその場で停車しました。
黄色い軽自動車は、相も変わらずトロトロと走り去っていきました。
あれがなんだったのか、今思えば見間違いとしか思えないのですが、あの時何度確認しても映った男の真っ赤な顔は、未だに克明に思い出せるのです。




