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万華鏡
58.万華鏡
子どもの時分に、お婆ちゃんちの古い倉から万華鏡を見つけ出した事があった。
覗くとそこに色鮮やかで幾何学的な模様が映し出された。僕がくるくると筒を回すのに合わせてそれは形を変えていく。
暗い倉の中で一人、夢中になって万華鏡を回していると、その幾何学的な模様がある時思いもよらぬ形となった。
目。
バラバラに動いていた模様たちは、ある時一つの集合体となり、筒を覗く僕を反対から覗いているかの様な大きな瞳を映し出した。
唖然としてそれをしばらく眺めていると、その瞳はパチリと瞬きをしたのだ。筒を回してもいないのに。
僕はその万華鏡を投げ出して母屋のお母さんの所にまで逃げ帰った。
以来、万華鏡が怖くて覗けなくなった。
あの時の様に、また何者かの目に見返される事を想像してしまうからだ。




