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男子だと思っていた幼馴染との新婚生活がうまくいきすぎる件について  作者: はむばね
第2章

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第67話 一緒にお風呂

 無人島で見てはいけない場面を見てしまい、結局行きも帰りも競泳することになった俺たち。


 思い切り身体を動かしたおかげか、本土まで泳ぎ着く頃にはだいぶ気まずさも薄れていた。

 が、いかんせん全力遠泳の往復は流石に疲れた……!


「ねっ、ちょっと早いけどもう夕飯にしない?」


「賛成だ……今日はもう、これ以上動きたくないわ……」


 こういう時、二人だと臨機応変に決められるのが良いよな。


 皆での旅行も本当に心から楽しかったけど、やっぱり予定に縛られてる部分もちょっとはあって。

 そのせいで、バタバタしたところもあったわけだし。


「けど、夕飯ってどうする? 見たとこ、この近くに飲食店とかなさそうだけど」


 というか今回の旅は、ほとんどノープランで来ている。

 その場その場のノリで決めれば良いだろうってことで、俺たち二人の意見も一致していたから。


「近くの魚市場の夕市、今ちょうどやってるとこだと思うから覗いてみるっていうのはどう? 獲れたての魚介で、海鮮バーベキュー! いくつかお刺身にしても良いかもねっ」


「いいねぇ、それでいこう。あっ、そうだそれなら……来る時、途中に醤油の専門店があったよな? そこでいくつか醤油買って、食べ比べしてみないか?」


「天才の発想じゃん! それいただきっ!」


 そして実際、こんな風にポンポンッと次々予定が決まっていく。


 今の今までもう動けねぇって気分だったのに、こうして話していると楽しみでまだまだ動けてしまう俺たちなのだった。



   ♠   ♠   ♠



 魚市場でも醤油専門店でもどれを買うかで盛り上がり、烏丸家の別荘に着く頃にはなんだかんだ夕食にちょうど良い時間になっていた。


 唯華が魚を捌いている間に俺がバーベキューの準備をして、程なく夕食へ。

 新鮮な魚に舌鼓をうち、どの醤油が一番美味しいか協議し、唯華の思いつきでアヒージョなんかも作ったりして、夕食も凄く楽しんだ。


 全て平らげ満腹になって、食休みがてら雑談することしばし。


「じゃっ、そろそろお風呂行こっか」


「うん? ここのシャワーを使うんじゃないのか?」


 どこかに出掛けるような唯華の物言いに、俺は首を捻る。


「裏手の山をちょっと登ったとこに、温泉があるんだよねーっ。あんまり人も来ないからって、予約したら一時間貸し切りに出来るの」


「おぉ、そりゃ是非とも行ってみたいな」


 何気に温泉好きな俺は、一も二もなく頷いた。


「じゃあ、早速予約を……」


「もっちろん、この後の時間で予約済みっ」


「流石だな」


 俺の答えまで折り込み済みで先回りとは、本当に俺のことをよくわかってらっしゃる。


「あっ」


 とそこで、唯華はふと何かを思いついたようにニマーッとイタズラっぽい笑みを浮かべて俺の耳元に口を寄せてきて……。


「貸し切りだからね……混浴にも、できるよっ?」


 そっと、ささめく。


「……できるから、何だと言うのか」


 返す俺の声は、思ったより硬い調子となってしまった。


「んふっ、秀くんはそっちの方が良いかなって思って」


「そんなわけないだろ……」


「そっか……うん、そうよね」


 俺の返事を受けても、なぜか唯華は俺の耳元から離れないまま。


「おウチで、いつだって一緒に入れるもんねー?」


「っ……」


 そっと息を吹きかけるような囁きに……俺は、何て答えるのが正解なんだろうね……。



   ♥   ♥   ♥



 秀くんと二人、温泉場まで行って……勿論、男湯と女湯に分かれて入って。


「ふいーっ」


 身体と髪を洗い終わった後、お湯に浸かった私は気の抜けた声を上げていた。


 腰を落ち着けているのは、男湯との仕切りのすぐ近く。


「秀くーん、いるー?」


 男湯の方に向けて、声をかける……と。


「あぁ、ここにいるよ」


「っ……!」


 思ったより近くから秀くんの声が返ってきて、ちょっとビクッとしっちゃった。


 どうやら、秀くんも仕切りのすぐ向こうにいるみたい。


「良い湯だねー」


 どうにか、声に動揺を乗せずに済んだと思う。


「だなー。俺、このちょっと熱いくらいの温度もちょうど好みだわー」


「私もー。あとここねー、美肌効果もめっちゃあるんだよー」


「じゃあ俺、めっちゃ美肌になるまで浸かってるわー」


「ふふっ、私もー」


 秀くんと、そんなことを話しながら……ふと。

 のぼせたわけでもないのに、顔が熱くなっていくのを自覚する。


 だって、この状況……なんだか、ちょっとエッチじゃない!?


 お互い今、裸なわけでしょ……!?

 なのに、こんな近くで話してるなんて……!


 それにそれに、仕切りで分かれてるだけで一緒のお湯に浸かってるわけで……!

 これはもう、実質混浴なのでは……!?



   ♠   ♠   ♠



「景色も綺麗だなー」


「だねーっ。これを二人で独占してるなんて、なんだか凄く贅沢な気分っ」


 露天風呂から見える景色を眺めながら、唯華と会話する。


 ……この仕切りの向こうでは、唯華も裸……なんだよな?

 今日一日で水着姿には流石に慣れたけど、今はそれさえもなくて……いやいや、余計なことを考えるな!


 気を紛らわせるため、外の景色に意識を集中させる。

 この辺には他にも温泉があるみたいで、いくつも場所から湯気が上がってるのが見えた。


 ちゃんと整備された風呂場じゃなくて、自然に湧き上がってるものみたいだけど……あっ!


「ちょっ、唯華唯華! 向こうの温泉に猿がいる! 猿、温泉浸かってる! ホントに浸かるんだなー! しかも、めっちゃ気持ちよさそうな顔してる!」


「えっ、どこどこーっ?」


「向こうの……あっ悪い、そっちからじゃ仕切りで見えないかも……!」


「えーっ、良いなぁ。私もそっち、見に行っていーい?」


「良いわけないだろ……!?」


「ふふっ、冗談冗談」


「当たり前だ……」


 なんて、余計なことを考えないよう殊更はしゃいだ俺たちなのだった。


 いや、余計なことを考えないようにっていうのは俺だけなんだけど……。

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