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男子だと思っていた幼馴染との新婚生活がうまくいきすぎる件について  作者: はむばね
第2章

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第62話 君との思い出

 旅行二日目。


 朝食を済ませた後に下山し、今日のメインは周囲の観光だ。

 一応、おおまかな観光ルートは事前に話し合ってたんだけど……。


「あそこの雑貨屋さん、可愛いーっ! ねっ、寄っていってもいいですっ?」


 高橋さんの希望で、雑貨屋さんなんかに寄り道し。


「おっ、肉串! 肉、食べてかねっ? あっ、ご当地バーガーも良いよなぁ!」


 衛太の提案で、食べ歩き。


「兄さん、唯華先輩、そこで向かい合ってください。はい、とてもエッチで良い構図です。やはり、記憶だけではなく記録も重要ですね」


 一葉のよくわからないリクエストに応えて、そこかしこで写真を撮られ。


「おぎゃー!? ラーメン屋さん、めっちゃ並んでます! 予約しとけば良かったー!」


「この手のお店は、恐らく予約は受け付けていないかと思いますが」


「どうする? 別の店探すかい?」


「回転早そうだし、今からあちこち探し回るより並んだ方が早いんじゃないか?」


「うぅっ、私の希望のせいですみません……!」


「高橋さんのせいじゃないって。ほら、並ぼ並ぼっ」


 想定していたよりも、お昼を食べるのに時間が掛かってしまったり。


 一つ一つはそこまで大したことじゃないんだけど、そういうのが積み重なって……。


「ほわっ!? いつの間にかもうこんな時間です!? すみません、美術館はちょっぱやで回らないとけつかっちんかもです……!」


 ということになっていた。


「それなら、もう美術館はカットでいいんじゃないかな?」


 たぶん、それで大体オンスケに戻るはず……と、提案する。


「でも、美術館って九条くんのリクエストですよね……?」


「こういうのは巡り合せ的なところもあるし、今回は機会じゃなかったってことで」


「そ、そうですか……? それじゃすみません、美術館はスキップとさせていただければと……! ホント、すみまーせん!!」


「ははっ、気にしないで」


 高橋さんは凄く申し訳無さそうに謝ってくれるけど、実際無理を通してでも行きたかったってわけでもないんで俺も気にしちゃいない。


「それじゃ……最後に、お土産タイムです! 三十分後にここに再集合で!」


『りょーかーい』


 これについては各々買いたいものも違うだろうからと、最初から決めていたことだ。


 それぞれ思い思いの方向に散っていく中……さて、俺はどうしようかな。



   ♥   ♥   ♥



「それ、買うの?」


「ん? いや、見てただけ」


 地元のマスコットキャラ、かな? 謎のキャラのキーホルダーを手に取って眺めていた秀くんに声を掛けると、秀くんはそう答えてキーホルダーを棚に戻した。


「もしかして、秀くんはお土産買わない感じ?」


「俺の人間関係は、ほぼこの旅行のメンツに集約されてるからな……」


 と、苦笑を浮かべる。


「ふふっ、私も同じだけど」


「実家にも買わないのか?」


「大体常にどっかから貰ったお土産があって、消化が追いついてない状態だから……」


「あぁ、ウチもそんな感じだ……」


 秀くんの苦笑が深まった。

 家族が、色んなとこのお付き合いで色々貰ってくるんだよねぇ……。


「だから、適当に時間つぶしてたとこ」


「あっ、それならさ!」


 一緒にいれば三十分なんてあっという間だろうけど、ふと思いついたことがあった。


「お互いにお土産を買って、交換っこしない?」


「……なるほど、それも良いかもな」


 私の提案に、秀くんは微笑みを浮かべる。


「どっちがより良いお土産を選べるか、勝負ねっ」


「だからそれ、どう判定するんだよ……」


 冗談めかして言うと、それがまた苦笑に戻った。


「それじゃ、スタートっ」


「はいはい」


 と、私達はそれぞれ別方向に歩き出す。


 さてさて、私はどうしようかなーっと。



   ♠   ♠   ♠



 帰りの電車を間違えて、あわや他県に行きそうになる一幕なんかもあったものの。


『ただいまーっ』


 俺たちは、無事一日ぶりの我が家に帰還した。


「やーっ、やっぱりウチが一番落ち着くねーっ」


「だなー」


 リュックを下ろしてソファに沈み込む唯華の隣に、俺も腰掛ける。


 実際、一日空けただけなのになんとも『帰ってきた』感が強かった。


「あっ、そうだ。忘れないうちに、お土産交換しとこっ?」


「ほぅ? その顔は、選定に自信アリってところかな?」


「ふふっ、どうでしょー?」


 イタズラっぽく笑う唯華だけど、俺も今回はちょっと自信アリだ。


『ほい、交換っ』


 互いに渡し合った袋は、全く同じデザイン。

 どうやらタイミングがズレただけで、同じ店で買ったようだ。


 大きさも、どちらも手の平に収まる程度だった。


 一つ頷き合って、開封すると……。


『……ははっ』


 お互い、微苦笑を交わし合うことになった。


「これは、ドローだねー」


「あぁ、完全に引き分けだ」


 何しろ……。


「まさか、全く同じの選ぶとは思わなかったよ」


「流石にこの被りは予想外だな」


 どちらも同じ、綺麗なライトブラウンの模造石があしらわれたキーホルダーだったんだから。


 きっと、着想元も同じ。

 小さい頃に別れた、あの日……自分の代わりにと俺が唯華にカプセルトイを渡し、唯華が俺に石をくれた時のことだろう。


「あの時は本当にただの石ころだったけど、今回は秀くんの誕生石を選んでみましたっ」


「あ、そうなのか。ありがとう……しまったな、俺もそういうのちゃんと考えて選べば良かったよなー……そしたら被らなかったし」


「ちなみに、秀くんはどうしてそれを選んだの?」


「唯華の瞳の色に似てるな、って思って」


「ふふっ、十分な理由だよ。それに……お揃いの方が、嬉しいしっ」


「……そうだな」


 前に貰った石は、ゆーくんが傍にいてくれるみたいで見れば元気を貰えたけれど……同時に。

 ゆーくんに会えない寂しさが、見る度に込み上げてくるものでもあった。


 だけど今度は、同じ想いを共有した証として……きっと、これを見る度に今回の旅のことを思い出して楽しい気持ちになれるんだろうな。

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