表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
男子だと思っていた幼馴染との新婚生活がうまくいきすぎる件について  作者: はむばね
第2章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

85/158

第59話 妹からの提案

 BBQの後は、近くにあったアスレチックで童心に返ってみたり、川で水遊びしたり周囲を散策してみたり。

 そうこうしているうちに、気付けば夕暮れ時となっていた。


 それから皆で作った美味しいカレーも食べ終えて、しばらく談笑タイムが続いた頃。


「先輩方、そろそろ肝試しと洒落込むのはいかがでしょう?」


 ふとした調子で、一葉が手を挙げそんな提案を口にする。


「先程確認してきましたが、裏手の森が程よく薄暗くて肝試し向きかと存じます」


「おーっ、いいですねぇ肝試し! 夏の定番、見落としてましたっ!」


 と、ノリノリな高橋さんだけど……。


『うーん……』


 俺と衛太は、揃って唯華に目を向けた。

 どうやら、衛太も唯華が怖がりなことを知っているらしい。


「あれ? 二人は乗り気じゃない感じ? あっ、さては怖いんだーっ?」


『うーん……』


 そして、乗り気を示した上に煽ってくる唯華に二人して再度唸る。


「まぁ、お嬢が良いならオレは構わんけど……」


「俺も、別にいいけど……」


 唯華がこのスタンスだと、俺たちも消極的賛成を示さざるを得なかった。


「それでは先輩方、二人一組を作ってください。私は脅かし役をやりますので」


「え? それじゃ、一葉ちゃんだけ楽しくないじゃないですかっ! いいんですよ、脅かし役とかしなくてもーっ!」


「違うのです、陽菜先輩」


 今度も気遣ってくれる高橋さんに、一葉はフルフルと首を横に振る。


「私は、常々こう提唱しております」


 真剣な表情で、すぅと息を吸って。


「脅かし役こそが、真の肝試し!」


『脅かし役こそが、真の肝試し……?』


 カッと目を見開き宣言する一葉に、俺以外の疑問の声が重なった。


 俺はまぁ、実際一葉は前々からこう言ってるから……。


「何かが『起こる』ことはわかっているがゆえ、驚かされる側は心の準備が出来ています。ペアとの会話や、常に移動していることによってある程度気も紛れることでしょう」


 ですが、と一葉は続ける。


「脅かす側は暗闇の中で一人佇み、いつ訪れるとも分からないターゲットをただ待つのみ……! 静けさの中に唐突に生じる物音、ふいに流れてくる妙に生ぬるい空気、今にも何かが『出る』のではないか、あるいは既に『そこ』にいる……?」


 ひゅっ、という音が聞こえたからそっと目をやると……想像してしまったのか、唯華が顔を青くしていた。

 皆からは見えないようそっとその背中に手を当てると、少しだけその顔色もマシになったような気がする。


「あの、一葉ちゃん、そんなのますます一葉ちゃんに任せるわけには……」


 そして、唯華は一葉を止めようとするけれど。


「最っ高です……!」


「えぇ……?」


 当の一葉は恍惚とした表情となっており、唯華はちょっと引いた様子だった。


「これぞ、どんなVRでも及ばぬ究極の体験型アトラクション『現実』の醍醐味というもの! それを完全ランダム仕様でプレイ出来るのは、脅かし役だけなのです!」


「あ、はい……」


 一葉が何を言っているのかはわかっていない様子ながら、その迫力に圧されて唯華も頷かざるをえないようだった。


 なお、俺も概ね同じお気持ちである。



   ♠   ♠   ♠



 一葉がいつの間にか用意してくれていたくじによって、俺と唯華、高橋さんと衛太のペアが決まった。


 そして、俺たちは後発で森の中に入ったんだけど……。


「ふふっ、ちょっと暗い程度で別に何でもないねー?」


「そう思うなら、服の裾を離してもらえないだろうか……すげぇ皺になってるから……」


「秀くん、そんなこと言って私を置いてっちゃうつもり!?」


「そんなつもりないって……」


 余裕顔を崩して途端に涙目となる唯華に、俺は苦笑する。


「皆の前でならともかく、二人の時まで強がることないだろ?」


「だって……秀くんにも、格好悪いとこ見られたくないもん……」


「それは今更じゃないか?」


「うぅっ、イジワルぅ……!」


 ぺこん、と全く力の入っていない拳が俺の背中に当たる。

 普段の唯華とのギャップも相まって……可愛い。


「大丈夫だよ。何があっても、何が相手だろうと唯華が俺が守るから」


「秀くん……」


 なんとなく庇護欲を刺激された気分で言うと、唯華は潤んだ目で見つめてくる。


「……んっ」


 それから一つ頷いた顔からは、さっきまでより少し恐怖が薄れているように見えた。


 なんか、だいぶ恥ずかしいこと言っちゃった気もするけど……まぁ、唯華がそれで少しでも安心できるんなら恥なんていくらでもかくさ。



   ◆   ◆   ◆


 エッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!


 あっあっ、エッチです……!

 エッチッチ警報発令中です……!


 普段大人びた女性の子供っぽい仕草というのは、どうしてこうもエッチなのでしょうか……!


 ちょんと兄さんの服の裾を摘む仕草など、もはや『繋がっている』ことのメタファーでしかありません……!

 最後の会話は、完全にピロートーク……!


 今は全年齢版なのでこうなっていますが、きっと成年版だとエッチシーンになっているところです!

 私は詳しいので知っているのです!


 ご安心ください、実際に成年版的なゲームのプレイはしておりませんよ!


『うぉわっ!?』


 おっと、興奮のあまりボーッとしていたらお二人に見つかってしまいました。


 完全に驚かすのを失念していましたが……なぜお二人共、そんな驚いた表情なのでしょうか?


「一葉……だよな?」

「今まさに成仏しようとしてる幽霊かと思ったよ……!」


 確かに昇天するような思いではありましたが、それしきで驚かれるとは……ふふっ。

 お二人共、存外暗闇で不安になっていたのかもしれませんね。


 何にせよ、結果的にではありますがお二人を驚かすことも出来たようで。

 みっしょんこんぷりーと、ですね。


 なお、先程の義姉さんの映像は心の『幼女』フォルダに保存しておくこととします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
書籍版3巻、2022年12/1(木)発売!
広告
※画像クリックで個別ページに飛びます。

書籍版1巻2巻、好評発売中!
広告
※画像クリックで特設サイトに飛びます。

広告
※画像クリックで特設サイトに飛びます。



小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ