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男子だと思っていた幼馴染との新婚生活がうまくいきすぎる件について  作者: はむばね
SS

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SS20 ガールズトーク 光 / 闇

 とあるお昼休み。


「唯華さん唯華さん、恋バナしましょっ」


 高橋さんが、特に前フリもなくそんな風に切り出してきた。


「ちなみに好きな人がいない場合は、好きなおにぎりの具の話でも可としますっ! 私はツナマヨで、何が良いかと言うとツナの油にマヨネーズのジャンクさが加わって……」


「この流れで発案者が一抜けすることとかある……?」


 お昼ごはんのおにぎり──具はツナマヨみたい──を片手に語り始める高橋さんに、私は思わず苦笑する。


「好きな人がいないにせよ、せめて好きなタイプを語るとか……」


「マヨネーズ系が好きですねっ。エビマヨとか明太マヨとかっ」


「おにぎりの話じゃなくて」


 この人、もしかしておにぎりの話がしたいだけなんじゃ……?


「ふふっ、冗談ですよ」


 と思ったけど、一応ちゃんと通じてくれたみたい。


「そんな選り好み出来るような上等な人間でもないんで、基本的には私を愛してくれる人ならそれで良いんですけど。強いて言うなら……」


 おぉっ、意外にまともなこと言ってる……って、流石にそれは失礼か。


「九条くんとかですかねー?」


「……へぇ」


 お? その道を選ぶということは私達の友情はここまでになるかもしれないけど、良いんだね?


「ひぇっ……」


 たまたま高橋さんの後ろを通りかかったらしい衛太がなんかこっち見て変な悲鳴を上げたけど、今はどうでもいい。


「顔は結構好みだったりするんですけどー。でもまぁ、言うて九条くんは無し寄りの無しですよねー」


「…………へぇ」


 お? ウチの旦那のどこが気に入らないと?


 顔じゃないなら、性格か?

 性格面も最高オブ最高なんだが?


「ぴぇっ……」


 たまたま高橋さんの後ろを通りかかったらしい白鳥さんがなんかこっち見て変な悲鳴を上げたけど、今はどうでもいい。


「上流階級の人とお付き合いしたら、パーティーとか出なきゃいけないんでしょー? 私、ダンスとか出来ないですしー。堅苦しいのも苦手ですからー」


「なんだ、そういうこと」


 高橋さんの言葉に、ようやく私は心からの笑みを浮かべることが出来た。


 奥さんや婚約者ならともかく恋人をパーティーに連れていかなきゃいけないなんてこともないし、言うてダンスする機会もそんなにはないんだけど……この誤解は、解かないでおこうかな。

 一応……ねっ。


「それでそれで、唯華さんの方はどんな感じですかっ?」


 と、高橋さんはワクワクした様子で目を輝かせている。


「うーん……おかか?」


「あっ、おかかも良いですよね! 噛めばジュワッと旨味と醤油が一緒に染み出てくるあの感じ!」


「こっちの話でも広げるんだ……」


 思わぬ食いつきを見せる高橋さんに、また苦笑が漏れた。


「まぁ、冗談はともかく」


 私は、チラリと視線を外す。


「そうだなー、私の好みのタイプっていうと……」


 ちょうど秀くんがトイレから戻ってきたところみたいで……目が合っちゃう前に、高橋さんの方に素早く視線を戻した。


「優しくて、努力家で、ひたむきで、誠実で、隣にいると落ち着けて、一緒に遊ぶと凄く楽しくて、ちょっとだけ鈍感なところもあったりして、だけど私のことを大事にしてくれて……」


「もー、唯華さんったら欲張り過ぎですよー。そんな人、いるわけないじゃないですかー」


 まだまだ言い足りないんだけど、途中で高橋さんがおかしそうに破顔する。


「ふふっ、そうかもね」


 だけど、少なくとも私にとっては。


「……? 呼んだ? 唯……烏丸さん」


「ううん、呼んでないよっ」


「そう? 気のせいか……」


 ちゃんとここに、いるんだよ。



   ◆   ◆   ◆



 その日の夜。


『義姉さん、推しのNTR展開が来たらどうしますか?』


 一葉ちゃんと電話でおしゃべりしていたら、ふとそんな話を切り出してきた……けど。


「えーと……?」


 一葉ちゃん、相変わらず何を言ってるのかよくわからない時があるよね……。


『失礼しました。恋人が浮気したらどうしますか? という意味です』


 私が察せてないのを察してくれたらしく、そう続けられた。


「浮気かー……ちなみにそれ、どのレベル?」


「アヘ顔ダブルピースのビデオレターが送られてくるレベルとします」


「なんて?」


「失礼しました。もう完全に心は浮気相手に移っているものとします。なお実現性は問いませんので、義姉さんの一番の感情を曝け出していただければと」


「なるほど……」


 前にも考えたことがあるけど、秀くんが別の人とって思うと……勿論、誓ってくれた通り絶対ないってわかってるけど。


 想像するだけで、胸が締め付けられる。

 今でもそうなのに、恋人としての関係を築けた後だったら尚更だよね。


「もう彼の心が私にないのなら……愛がなくなっちゃったのなら……」


 そうなった時に、私が望むのはきっと……。


「彼に、私を殺してほしい……かな」


『ほほぅ? 彼を殺すでも浮気相手を殺してもらうでもなく、自分を殺してほしいと』


 ……あっ、ヤバ。

 一葉ちゃん、引いちゃったかな……?


 今の発言、普通に考えたら意味わかんないよね……。


「えーと、今のは……」


『わかりみです!』


 冗談、って言おうとしたら興奮した様子の一葉ちゃんの声に遮られた。


『せめて最期は、愛する人に終わらせてもらえる幸せと……何より、自分の浮気のせいで自ら殺すことになってしまった女のことなんて相手は一生忘れられるわけありませんものね!』


「そうそう! 愛が無理なら、せめて消えない傷となってその人の心の一番深いところに残り続けたいのっ! 愛する人には長生きしてほしいけど、死ぬまで引きずってほしい!」


 完璧に私が考えていたことを言い当てられて、思わず私も興奮してちょっと早口になる。


「あっ……でもこんな感情、ちょっとだけ……重い、かな……?」


 それから、不安になって恐る恐る尋ねてみた。


「ふふっ、何をおっしゃるんですか。これくらい、女の子ならみんな思うことですよ」


「そうかな? そうかも」


 なーんだ、考えすぎだったか。

 これくらい普通だよね、うん、普通普通。


 やっぱり私は、重さとは無縁の女だよねっ。

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