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男子だと思っていた幼馴染との新婚生活がうまくいきすぎる件について  作者: はむばね
SS

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SS18 推し語り

 ──兄さん、義姉さんはエッチですか?


 未だ十八年しか生きていない若輩の身だけれど、実の妹からこんな問いが飛んでくる日もあるんだなという学びは今後の人生の糧にしようと思う。

 出来ればその糧、永久に役に立つ日が来ないでくれた方がありがたいけど。


「兄さん、義姉さんはエッチですか?」


 人生に思いを馳せていると、聞こえていないと判断したか一葉が再度問いかけてくる。


「兄さん、義姉さんはエッチですか?」


 なんだろう……妙に機械的な口調のせいもあるかもだけど、俺を見つめる一葉の目からはあらゆる感情が消失しているように見えてなんか怖い。


「兄さん、義姉さんはエッチですか? 兄さん、義姉さんはエッチですか? 兄さん、義姉さんはエッチですか? 兄さん、義姉さんはエッチですか? 兄さん、義姉さんはエッチですか? 兄さん、義姉さんはエッチですか? 兄さん、義姉さんはエッチですか? 兄さん、義姉さんはエッチですか? 兄さん、義姉さんはエッチですか?」


「ちょ、ちょっと待て! 答える! 答えるからにじり寄ってくるのやめて!?」


 これもう、この後戦闘になるロボタイプの敵のムーブじゃねぇか……!


「えーと、唯華は……」


 正直に言おう。

 俺も、唯華はエッチ……もとい、色っぽいな? とか思う時はあります。


 というか、今日はずっと思っています。

 ただ、仮にも夫婦関係とはいえ……というか仮の夫婦関係だからこそ、それを俺が口にするのはマズいわけで。


「エッチ……では、ないです……」


「んなっ……!?」


 俺の回答に、一葉は震天動地の出来事が起こったとばかりに目を大きく見開く。


 その傍らで、唯華はホッとしたような……けど、ちょっとだけ残念なような? 表情をしている……のか……?


「そうですか……」


 そんな呟きに、俺は一葉の方に視線を戻す。


「まさか、兄さんとの間で解釈違いが生じる日が来ようとは……」


 そう言いながら、悲しげに目を伏せる一葉。


 おっとぅ? これはまた、いつもの謎モードに入ってる気がするぞぅ……?

 ……と思ったけど、今日はずっとそっちのモードな気もするね。


「私は解釈違いにはかなり寛容なタイプですが、ここを譲るわけには参りません!」


 そう言いながら、カッと目を見開く一葉。


 いつものちょっと眠たげに見える目つきも可愛いけど、パッチリお目々も可愛いね?

 あっ、もちろん現実逃避です。



   ◆   ◆   ◆


   ◆   ◆   ◆



 こうして始まった……始まってしまった、私がエッチなのかエッチじゃないのかという議論。


「証拠提示! 太もも!」


 と、一葉ちゃんはサキュバス衣装によって大胆に露出してしまっている私の腿を指した。


「程よいムッチリ感に美しくセクシーなこの脚線……エッチです!」


 そう主張する一葉ちゃんに対して、秀くんは「ふぅ」と何かを決意するように息を吐いた後でカッと目を見開く。


「証拠棄却! それは健康美である! よく鍛えられた腿に向けられる感情は敬意! 芸術作品に欲情することがないように、ある種神聖にも感じられるそれはエッチではない!」


「棄却拒否! 健康美とエッチは両立します! 芸術作品にエッチさを感じても良いのです!」


「ぐむ……」


 あっ、これ秀くんが押されてる感じなの……?


 とりあえず、私の太ももに注目されての白熱した議論は結構恥ずかしいんだけど……。


「続いて証拠提示! おへそ! 縦に長く整い程よい深さのおへそ……エッチ! エッチです!」


「証拠棄却! それはただの個人的な性癖である!」


「おっとぅ? 戦争ですか?」


「流石に一般性癖ではなくないか!?」


「……まぁいいでしょう」


 おっ、今度は秀くんが盛り返した……ってことで、いいのかなぁ……?


「更に証拠提示! ……義姉さん、腕をこんな感じで上げていただけますか?」


「えっと、こう……?」


 一葉ちゃんのお手本? に従って、腕を持ち上げて頭の後ろで手を組む。


「……エッチです」


 えっ、どういうこと……!?

 なんでしみじみ感じ入ってるような表情なの……!?


「くっ……!」


 そんで、秀くんもなんで苦悶の表情になってるの!?


 ………………あっ、もしかして『脇』!?

 私の脇がエッチだって主張する一葉ちゃんに、秀くんは反論出来ない状況ってことで合ってる!?


 ……へぇ、ふーん。


 秀くん、そういうのが好きなんだ……?

 どっちが勝っても私が辱められる会かと思ったけど、意外と私にとっても有用情報が掴めるのかも……?


「こんなエッチなパーツが常に服の下に隠れているのですから、義姉さんはいつもエッチです! Q.E.D.!」


 ドヤ顔で胸を張る一葉ちゃん。

 うん、まぁ、その理屈はおかしいような気がするけどね……。


「……違う」


 一方、項垂れ気味だった秀くんがゆらりと顔を上げた。


「違うぞ一葉! お前は重大な要素を見落としている!」


 こっちはこっちで、今度は何……?


「唯華……笑ってみせては、くれないか?」


「え、えっと、こう……かな?」


 とりあえず、ニコッと笑みを浮かべてみる……と。


「ほぐぁ!?」


 なぜか、一葉ちゃんが胸を押さえて大きく俯いた。


 えっ、何? 何が起こったの……?


「じょ、浄化されていきます……!? ぐぅへへへへへ……」


 何が……?


 あと、それは浄化されてる人の笑い方ではなくない……? よくわかんないけど……。


「あぁ……わかってくれたか、一葉……」


 何を……?


 あと秀くん、なんで慈愛の笑み的なやつ浮かべてるの……?


「朝に見れば今日も一日頑張ろうって思える活力を貰えて、昼に見ればホッと安らぎ、夜に見れば一日の疲れが癒される……そんな笑顔こそが、清らかさこそが、唯華の本質なんだ。ゆえに……仮にエッチな服を着ていたとしても、エッチにはならない!」


 自分で言うのもアレながら、今の格好自体は結構エッチだと思うけど……。


 これ一応、秀くんは私の笑顔が魅力的だと感じてくれてる……って、話でいいのかな……?

 だとすれば、それ自体は嬉しくはあるかな……ふふっ。


「結論提示! 唯華は!」


「結論承認! 解釈一致! 義姉さんは!」


 そう言いながら、ガシッと固い握手を交わし合う二人。


『エッチではありません!』


 それから、とても良い笑顔をこっちに向けてきた。


 うん、あの……私、今……『血』って凄いんだなぁ、って感慨を抱いてるよね……。

新年あけましておめでとうございます。

引き続き更新して参りますので、本年もどうぞよろしくお願い致します。

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