表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
男子だと思っていた幼馴染との新婚生活がうまくいきすぎる件について  作者: はむばね
SS

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/158

SS4 神絵師の正体

「ふぉぉぉぉぉぉぉぉ……! エッモぉ……!」


 その日、私はタイムラインに流れてきた大変エモーショナルな漫画を読んで悶えておりました。


 繊細なタッチで描かれた、結婚を誓い合う幼馴染の物語。

 二人は仲睦まじく暮らしていたのですが、結婚を認めない意地悪な祖母によってヒロインが連れ去られてしまいます。


 ですがそれを取り戻しにヒーローは現れ、その時の台詞が特に良いのですが、「俺の一番大切なものを」………………んんっ?


 七回読み直すまで脳が尊みに支配されて頭から抜け落ちていましたが……人物名や細かい設定などで違いはあるものの、このエピソードって先日義姉さんから……。


   ◆   ◆   ◆


   ◆   ◆   ◆



「ちょっと、お婆様!」


 一葉ちゃんからの『報告』を受けた私は、実家に戻ってお婆様に詰め寄っていた。


「私たちのこと、勝手にコミカライズしましたよね!?」


 こんな台詞言うの、人生で初めてだよねぇ……!


「おや、何のことだい?」


「惚けないでください!」


 と、私はお婆様にスマホの画面を突きつける。


 表示されているのは、一葉ちゃんから教えてもらったアカウントが投稿している漫画で……ぶっちゃけ、この間の私たちの一件が大体そのまま描かれていた。


「この件の顛末を知っているの、私達と一葉ちゃんを除けばお婆様だけじゃないですか! わざわざ漫画家さんに依頼までして……!」


「失礼だねぇ、そんなことしちゃいないよ」


「もういいですって、そういうスットボケは……!」


「なにしろ、描いたのはあたし自身だからね」


「これお婆様が描いたの!? 絵ぇ上手っ!?」


 思わぬ情報に、ついつい敬語もすっ飛んでスマホの画面を凝視してしまった。


 や、だってこれ、てっきりプロの漫画家さんかと……。


「え、えーと……だとしても、どうしてわざわざ漫画になんてしたんです……!?」


「それには、深い理由があるのさ」


 と、お婆様はとても真剣な表情で私を見つめる。


「えっ……? そ、そうなんですか……?」


 思わず癖で、背筋が伸びた。


「思ったんだよ」


「何をですか……?」


「これを描けば」


「描けば……?」


 何か重大事を語るかのようなお婆様の態度に、私はゴクリと喉を鳴らす。


「めっちゃバズるかな、ってね」


「めちゃくちゃ普通にご自分の承認欲求が理由じゃないですか!? 凄い浅い!」


 喉の鳴らし損だった。


「案の定、投稿してから通知が止まらないねぇ」


「もう……! 何万もの人に私たちのことが知られちゃって、恥ずかしいじゃないですか……!」


「ほーう?」


「な、何ですか……?」


 私の心を見透かすかのようなお婆様の視線に、思わずちょっとたじろいでしまう。


「恥ずかしい……本当に、それだけかい?」


「う……」


 実際、お婆様のその言葉は私の心理を見事に言い当てていた。


「本当は?」


「ほ、ホントは……」


 お婆様に促されるまま、本音を言うと……。


「秀くんの格好良いところを皆に自慢出来た気分で、嬉しい部分も……なくはないかも……ですけど……」


 ウチの旦那様の格好良いとこ見てぇ!! って気持ちは……まぁ、うん、あるよね。

 バズったという結果がそれを肯定してくれてるみたいで、でしょー? ってドヤ顔したい気分でもあるよね。


「くくっ、だろう?」


 してやったり、とばかりにお婆様は笑う。


「あたしも、同じ気持ちだったから描いたのさ」


「えっ……?」


 思わぬ言葉に、つい目を瞬かせてしまった。


「ウチの孫とその旦那、良いだろう? ってね。自慢してやりたかったんだよ」


 お婆様は、イタズラを成功させた子供みたいに笑う。


「ま、あんたがどうしてもイヤだっていうなら消すけど……どうするね?」


 ズルいなぁ……そんな風に言われちゃうと。


「はいはい、わかりました! 好きにしてください!」


 そう返すしか、ないじゃない。


 なんて、ちょっとヤケクソ気味に返事しながら……ふと。

 随分自然と、お婆様と話せている自分がいることに気付いた。


 小さい頃、お婆様と向かい合う時はいっつも私は叱られるばかりで……そんなお婆様が、私は怖くて仕方なくて。

 だけどそれはきっと、お互いの想いがすれ違っていた結果で。


 お婆様は、こんな形で……ちょっと不器用ながらも、歩み寄ろうとしてくれているのかもしれない。


 そんな風に、思った。


「相わかった。もうネームまで仕上がってる玄関前でのイチャつき編も無駄にならずに済みそうだね」


「そこまで好きにしろとは言ってないですけど!?」


 いや、やっぱりこの人はただ自由に生きてるだけな気がするなぁ……!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
書籍版3巻、2022年12/1(木)発売!
広告
※画像クリックで個別ページに飛びます。

書籍版1巻2巻、好評発売中!
広告
※画像クリックで特設サイトに飛びます。

広告
※画像クリックで特設サイトに飛びます。



小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ