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男子だと思っていた幼馴染との新婚生活がうまくいきすぎる件について  作者: はむばね
第1章

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第33話 大好きの言葉

 あの日、秀くんがそのままずっと抱きしめてくれてたから私は思いっきり泣けて。


 最後の日には、どうにか泣かずにお別れ出来たんだと思う。


「あの日の約束」


 秀くんの声に、私は意識を過去から今へと戻した。


「ちゃんと、果たしたろ?」


 きっと、秀くんも私と同じ日のことを思い出してたんだと思う。

 心が繋がってるみたいで、なんだか嬉しくなっちゃう。


「そうだねー、ちょっと悔しかったけどっ」


 なんてね。


 本当はあの時、凄く驚いて……それ以上に、すっごくすっごく嬉しかった。


 ──どんなに変わったって、ゆーくんのことなら一目でわかってみせるよ


 そう、約束してくれたけど。


 お見合いの席で再会した日、わかりっこないって私は思ってた。

 そもそもの話、秀くんは私の性別さえ誤認してるんだもの。


 だから、わからなくても秀くんを責めるつもりなんて少しもなくて……ネタバラシした時のリアクションを楽しもうとか、そんなことを思っていたのに。


「ははっ、何が悔しかったんだよ」


「だって、私的にはかなりイメチェンしたつもりだったのに。そんなに変われてなかったのかなーって思うじゃない」


「や、見た目はマジですげぇ変わったって。ただ、なんつーかな……雰囲気? 空気感? そういうので伝わってきたんだよ」


「なーんか根拠がフワッとしてるなー」


 本当の本当に、一目でわかっちゃったんだから……平気そうな顔を取り繕うのに全力を尽くさなきゃ、頬が緩みきっちゃってたところだったよ。


「……ねぇ、秀くん」


 ふと、ちょっとしたイタズラみたいなのを思いついた。

 

「あの時の約束、他のも全部守ってくれてるぅ?」


 答えはわかってるけど、微妙にイジワル風に質問してみる。


「ちゃんと守ってるだろ? また会えたわけだし、俺たちの友情は変わってないし、大体は笑って過ごしてるし……」


 秀くんは指折り数えながら、そこで少しだけ言い淀んだ。


「その……あの時から、俺の気持ちも変わってないし」


「ホントに?」


 私は、秀くんをジッと見つめる。


「ホントに、全然、少しも……その種類も、変わってない?」


「あぁ、もちろんだ」


 自信満々に頷く秀くん。


 自分から言わせておきながら勝手なことに……ズキリと、少しだけ胸が痛んだ。


「じゃあ、ちゃんと言って?」


 それを誤魔化すのも兼ねて、言葉を続ける。


「や……そんなの、普段の色々からわかるだろ?」


「えー? 女の子はー、ハッキリ言葉にしてくれないと不安になっちゃう生き物なんだよー?」


「むっ……」


 テキトーに言っただけなんだけど、秀くんは「一理ある……か?」とか思ってそうな顔になった。


「わかったよ……」


 両手を挙げて、降参のポーズ。


「唯華のこと、すっ……」


 そこで、少しだけ言葉に詰まって。


「好き、だし」


 視線を逸らしながらの言葉に、今度は胸がトクンとときめく。

 ホント、我ながら身勝手なもんだよね。


 なんて思いながら、私はニッコリ笑って……。


「不合格」


「判定とかあんの!?」


 不合格を告げると、秀くんはビックリ顔になった。


「だってさ、あの時とはちょっと言葉が違ったよねー」


「う……それは、まぁ……」


 私の指摘に、小さく呻く秀くん。


「さて、一度不合格が出てしまったので次はハードルが上がります」


「どんなシステムなんだよ……」


 と、今度は苦笑を漏らす。


「んっ」


 そんな秀くんに向けて、私は両腕を軽く開いた。


「えっ、っと……それは?」


 尋ねてくる秀くんだけど、ホントはもうわかってるって顔に見える。


「あの時と同じ格好で、言って?」


「や、それは流石に……」


「昔できたんだから、今だって出来るでしょー?」


「その理屈はおかしくないか……!?」


 なんて、最初は渋ってた秀くんだったけど。


「……はぁっ」


 一度、深い溜息を吐いて。


「これで……いいか?」


「んっ」


 そっと、私を抱きしめてくれた。


 美術品でも扱うみたいな慎重な手付きが、なんだかちょっとだけくすぐったい。


「大好きだよ……唯華。俺の気持ちは、あの頃から変わらない。いつまでも、ずっと」


「っ……」


 少しだけ複雑な気分にもなるけど……それ以上に、嬉しい気持ちが胸に広がっていく。


「ふふっ」


 秀くんの胸に耳を当てて、私は微笑んだ。


「秀くん、凄くドキドキしてるね」


「う……スマン」


 気まずげに謝ってくる秀くんだけど。


「何も、謝ることなんてないよ」


 あの時は、落ち着いていた秀くんの鼓動。

 ドキドキさせられてることを、嬉しく思ってるんだから。


 ねっ、秀くん……私のドキドキも、秀くんに伝わってるのかな?


「私も……大好き」


 あの頃から、ずっと。


 あの頃より、ずっと。


 そんな気持ちを込めて伝えると、秀くんの鼓動の音はどんどん速まっていく。


「は、はいっ! 終わり終わりっ! これで、ちゃんと全部の約束を守ってるってわかったろっ?」


 かと思えば、秀くんがパッと私から手を離して飛び退いた。


「ふふっ……仕方ないから、ギリギリで合格ってことにしといてあげるっ」


「判定厳しくないか……?」


 秀くんが、私と同じ意味で「大好き」って言ってくれてたら花丸合格だったんだけど……今日のところは、この辺りで勘弁してあげますかっ。


 だって、私と秀くんの時間はこれからもずっと続いていくんだから。

 ゆーっくりじーっくり攻略してあげるから、覚悟してよねっ?


 なんて。


 私達の関係の原点で。

 私の気持ちの原点でもある場所で、決意を新たにする私なのだった。

昨日は体調不良につき更新出来ず、申し訳ございませんでした。

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[良い点] もう結婚しろよ
[一言] 暑い日が続きます。無理をなさらずにお身体をご自愛ください。
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