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男子だと思っていた幼馴染との新婚生活がうまくいきすぎる件について  作者: はむばね
第4章

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第126話 ◯◯の秋

「秋といえば、性欲の秋だよねっ!」


「……なんて?」


 突如謎の発言をぶっ込んできた華音に向ける私の目は、胡乱げな光を帯びていると思う。


「ぶっちゃけお姉もさ、ムラムラしちゃってるでしょ?」


「ちょっともう、ホントに何言ってんの……!? 秀くんに聞こえちゃったらどうすんのさ……!?」


 今日は、華音が私たちのウチに遊びに来ていた。


 秀くんは今、キッチンでお茶とかを用意してくれてるけど……リビングからだと普通に声が通るから、慌てて私は華音の口を押さえにかかる。


「ぷはっ……ムラムラ、しないの?」


「その話、まだ続けるの……!?」


 だけど私の手から逃れた華音は、全然懲りた様子もなかった。


「寝起きのお義兄さんとかお風呂上がりのお義兄さんとか、日々見てるわけでしょ? ホントにしないの? 全然?」


「それは……別に……」


 しますけどね、はい正直に言いますと。


 秀くんは、ちょくちょく私のことを無防備だなんだって諌めようとするけれど。


 私から言わせれば、エッチぃのは秀くんの方だからね……!?


 私はわざとそういう風(・・・・・)に見せてるわけで、当然ながらちゃんと隠すべきところは隠してる。


 でも秀くんはさ、お風呂上がりに鎖骨を覗かせたりさ……。

 それどころか、筋トレ後なんかは半裸になってるのに暑いからって部屋の扉を開けたりしてて……。


 もう、変質者に見られちゃったりしたらどうするつもりなの……!


「にひっ」


 なんて考えていた私の目の前で、華音がニマッと笑った。


「やっぱり、ムラムラしちゃってるんだー?」


「ち、違うし……! これは別に、そういうのじゃなくて……! 心配! 心配してるだけだから!」


 そう、あくまで妻として夫を不埒な輩から守るための思考であってやましいことなんて何もないから……!


「わかってるわかってるってぇ♪」


 いや華音、それは明らかにわかってない顔だよね……!?


「秋だから。ねっ、お姉? 秋はそういう季節だから、仕方ないよねっ」


「そう……なの?」


 性欲の秋……聞いたことない気がするけど……でも、そういうのもあるのかな……?


 そういえば、発情期が存在する動物って多いし……。

 人間も、そういう季節が存在するってこと……?


 なるほどそう考えれば、私が最近ちょっと何かそういう気持ちになることが多い気がしないこともないような覚えがそこはかとなくあったりなかったりすると言えなくもないことに説明がつくという説も……。


「おへー、やっぱなんだかんだチョロいよねこの姉」


「ん? 華音、今なんて?」


「んーん、なんでもないよっ☆」


 パチコンとウインクする華音は、明らかに何かを誤魔化してる様子。

 でも可愛いからまぁいっかなって思ってしまう辺り、私も姉バカなのかもね……。


「なんか盛り上がってたけど、何の話してたの?」


 っと、お盆を手にした秀くんが戻ってきた……ここからは、一層華音の発言には注意しないとね……。


「や、別に何でも……」


「あのねあのねっ。今ね、お姉と『ハロウィンパーティーしようよ』って話してたんだー」


「ちょっと華音、そんな卑猥な話してないでしょ!?」


 誤魔化そうとした私の声に被さるような華音の言葉に、思わずちょっと声が荒ぶった。


『卑猥……?』


 って、しまった……!

 前の話の流れから、なんか『ハロウィンパーティー』を卑猥なものとして認識してしまってた……!


 だって、ハロウィンといえばコスプレだし……!

 『コスプレ』で『パーティー』ってなんか……! そういう感じじゃん……!


 いや、そんなことより……わざとらしく首を捻ってる華音はともかく、普通に疑問顔の秀くんに何か言い訳をしなければ……!


「にひっ、お姉はムッツむぐっ」


「違うからね!?」


 何かを言いかけた華音の口を、さっき以上の素早さで塞ぐ。


「ははっ……大丈夫だよ唯華、わかってるから」


 な、何を……!?


 違うからね秀くん、私は決して裏でエッチなことを考えたりしてるような女の子では……!


「華音ちゃん、冗談が好きだもんな」


 ん、んあー!


 そう、その通り!

 華音の冗談だからね!


 流石は秀くん、わかってるー!


「それで、ハロウィンパーティーだっけ?」


 良かった、そのまま話が逸れてくれそう……。


「開催場所は、もう決まってるの?」


「んー、まだ検討中ってとこかなー?」


 また私の手から逃れて、華音が顎に指を当てながら首を軽く捻った。


 そりゃそうだよね、だってさっき生えてきたばっかなお話だもん……。


「それじゃ、ウチでやるってのはどうかな? 一葉と……衛太や高橋さんも誘ってさ」


 おっとぅ?


「もちろん、唯華さえ良ければだけど」


 と、私の方に視線を向けてくる秀くん。


 前にウチで勉強会をした時は、私が半ば強引に押し通したようなものだったけど……今度は、秀くんから提案してくれるなんて。

 それだけ高橋さんや衛太に心を許してるって証拠で、なんだか嬉しくなっちゃうよねっ。


「私は、全然オッケーだよ~」


 当然、私の返答は決まっていた。


 華音の、咄嗟の誤魔化し? から生まれたこの展開だけど……思ったより、いい感じの流れになったっぽいかも?


 せっかくだし~……これまでに蓄積してきた秀くんナレッジから導き出された、一番『刺さる』格好をしてみたりとかしちゃったりして?


 ふふっ……ハロウィンパーティー、楽しみになってきたかもっ。



   ◆   ◆   ◆



 なんか見るからに浮かれた顔のお姉は、棚ぼた的にこの展開に流れたとか思ってるんだろうけど……もちろん(・・・・)計算通りである(・・・・・・・)


 身内だけのハロウィンパーティ……つまりは、ちょーっとくらいハメを外しても(・・・・・・・)許される感じだよね~?


 ふふっ……楽しみだなぁ♥



   ♠   ♠   ♠



 ハロウィンパーティー……なんとなくノリで、ウチでやることを提案してみたは良いものの。

 準備って、何をすればいいんだろうな?


 とりあえず、お菓子を沢山用意して……いや、子供が来るわけじゃないし必要ないのか?

 でも高橋さんは普段からよく食べてるし、一葉も来るならやっぱり用意しとかないとかな。


 あとは、部屋をデコレーションとかして……そうだ、こないだ実家からカボチャが送られてきたんだった。

 あれで、ジャック・オー・ランタンも作ってみようか。


 カボチャの加工方法とか飾り付けとか、調べてみて……はは、なんだか年甲斐もなくワクワクしてきた。


 楽しみだな、ハロウィンパーティ。

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