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男子だと思っていた幼馴染との新婚生活がうまくいきすぎる件について  作者: はむばね
第3章

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第113話 ベストカップルコンテスト

 秀くんにちょっとした(・・・・・・)イタズラを仕掛けてみたりしながら、私たちはまだメインステージの観客席に座っていた。


 高橋さんたちのバンド演奏の後に開催されたのは、放送部主催のミスタコン。

 その、結果はといえば。


「オレを選んでくれた皆さん、センキューッ。三年八組コスプレ喫茶やってるんで、皆良かったら来てくれると嬉しいぜっ」


 なんと、衛太が優勝……!


 ステージ上で優勝者のタスキを掛け、観客の皆さんに愛想を振りまいていた。


「なんで出てんだか……自薦って言われてたし、自意識エベレストすぎでしょ……」


「それで実際に優勝したんだから、実態に即してるんじゃないか? アピールタイムで見せた演舞も、流石に見事なもんだったし」


「まっ、それは確かに。中身知らないと、格好良いーっとか騙されちゃうのかもねー?」


 だけど。


「秀くんも出てれば、秀くんが優勝だったかもよ?」


「そんなわけないだろ……」


「えー、いけると思うけどなー?」


 実際、秀くんが出ても良い線はいってたと思うけど……下手に注目度が上がって、モテモテになっちゃっても困るし?

 これで良かったのかもねっ。


「それより、そろそろ」


「あっ、そうだね」


 秀くんが腕時計に目を落としたから私も時間を確認すると、文化祭実行委員の定期報告会がそろそろ始まる頃だった。

 その後はまたクラスのシフトだけど、もし報告会が早めに終わればまたちょっと時間ができるはず。


 外を回ったりステージを見たりしている間も、密かにずっと『巨大なハート』を探し続けてた私だけど……結局、それらしきものは見つけられないままだった。

 出来れば、もうちょっとだけ探してみたい。


 お願い、何の問題も起こってなくてサクッと終わってぇ……!




   ♥   ♥   ♥




 ……という、私の願いも虚しく。


「お姉、秀一センパイ、お願い! ベストカップルコンテストに出てくださいっ!」


 顔を出すなり、パンッと手を合わせる華音に頼み込まれてしまった。


「参加希望者が少なくてぇ! 絵面的に、せめてもう一組くらいは欲しいのっ!」


「いやでも、流石に俺らがカップルとして出るのは問題が……」


 秀くんが懸念してるのは、万一私たちの関係の発覚に繋がったらってとこかな?


 文化祭を一緒に回る程度ならともかく、ベストカップルコンテストに出るのは言い訳不能にカップルだもんね。

 尤も、そこから一足飛びに『結婚』まで繋がることはないと思うけど。


「そうだよ華音。皆にカップルだって思われたら困っちゃう」


 私も、それに乗っかることにする。


 コンテストに出ちゃったらハートを探す時間をなくなっちゃう……っていうのが、私が参加を避けたい主な理由だけど。


「私たち……付き合ってるわけじゃ、ないんだし」


 自分で言いながら、チクリと胸が痛んだ。


「そこは、二人はホントのカップルじゃないゲスト参加です! って明言しますんで!」


「それで俺たちが出る意味あるの……?」


「付き合ってない普通の男女だとこんな感じだけど、ベストカップルならー? っていう、比較のための出場枠的な? 的な的な?」


「あー、なるほどね? でもごめん、俺たちこの後もクラスのシフトが……」


「さっき衛太センパイに電話で聞いたら、『オッケーイ!』って軽~く了承してくれましたっ! 衛太センパイと陽菜センパイが代わりに入ってくれるそうです!」


「根回し早いね……」


 あっ、なんか秀くんが懐柔されかかってる……!?


「……ていうかそれ、華音が誰か他の男子と出ればいいんじゃないの?」


「あそっか! 私が秀一センパイと出ればいいんだーっ!」


 くっ、わざわざ『他の男子』って言ったのに……!


 あと、いちいち秀くんの腕に抱きつくのやめなさいって!


「って、言いたいとこなんだけどぉ」


 と思ったら、今回はすぐに秀くんから離れる華音。


「私には、会長さんと司会を務めるっていう大役があるのだっ」


 おどけた敬礼ポーズで言う華音には、そういやそんな役割が割り振られてたね……。

 割り振られたっていうか、めちゃくちゃ自分から立候補してたけど……。


「……私は、一人で司会を全うしても構いませんが?」


 そう言う会長さんは、たぶん華音の想いに気遣ってくれてるんだと思う。


「や、それは流石に申し訳ないですし、段取りも結構変わっちゃうと思うんでーっ! でもでもっ……お姉がどーしてもイヤって言うなら、やっぱり私が秀一センパイと出るしかないのカナー? もーっ、しゃーなしだゾッ?」


 と、秀くんの腕をつんつんと突付く華音。


 チッ、そういう手が来たか……。

 秀くんと華音で出させたくなのは勿論、私が断ることで会長さんに負担をかけることになってしまうという構図……仕方ない。


「……私が、九条くんと出ます」


「ホントっ? ありがとお姉、大好きーっ!」


 と、今度は私に抱きついてくる華音。

 ホント、調子いいんだから……。


 やれやれ、秀くんとベストカップルコンテストだなんて……。


 ……しゃーなしだゾッ?



   ♠   ♠   ♠



 こうして、ベストカップコンテストに出る羽目になった俺たち。


「一応聞くけど、普通に最下位狙いってことでいいんだよな?」


「そだねー。変に大会を邪魔しちゃわないよう、モブに徹してよう」


 事前に、方針を打ち合わせしておく。


「ちなみに、わざとカップルっぽくない振る舞いとかする?」


「華音の説明的にも、普段通りにしてればいいんじゃない? だって、私たち……」


「……そうだな、俺たち」


『カップルじゃ、ないんだし』


 重なる声に、チクリと胸が痛んだ。

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