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男子だと思っていた幼馴染との新婚生活がうまくいきすぎる件について  作者: はむばね
第3章

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第111話 二人の今日には

 カップル限定イベントも、どうにかこうにか乗り越えて。


「ねぇ次、あそこ行ってみよっ」


 引き続き自分たちのクラスを宣伝しながら校内を回っている中で、唯華がふと前方を指す。


 二年生の教室前に設置された、目立つ大きな看板には……。


「占いの館、か」


 と、書かれている。


「確かに面白そうだ」


「ワンチャン、何かヒントになるかもだし……」


「ヒント……?」


 唯華の発言に、俺は首を捻った。


「や、なんでもっ。ほら、行こ行こっ」


 露骨な誤魔化しではあったけど、追及はしないでおく。


「おぉっ、なんか本格的だねっ」


「雰囲気あるね」


 ライトの使い方が良いのか、中はちょっと薄暗くも神秘的な空気感だった。

 アロマの香りもそれに寄与しているみたいだ。


 教室内は幾つかのブースに分かれてて、入り口に掲示された説明文を見るとカーテンが開いてるブースが今入れるところらしい。


「あそこ、空いてるね」


「他は……埋まってるか」


 というわけで、唯一空いていたブースに入ると。


「ようこそ、占いの館へ……おっと?」


 厳かな声の最後が、ちょっと可愛く跳ねる。


 俺も、少しだけ驚いていた。


 たまたまた入ったとこに、知り合いがいるは思ってなかったから。


「財前会長、よくお似合いですよ」


「ここ、会長さんのクラスだったんだーっ」


 いつものキリリとした雰囲気に、黒いローブがよく似合っていた


 ……言う程いつもキリリとしてたか? という気もしなくはないけど。


「お二人も、凄く美しいですよ。そうしていると、人外夫婦みたいですね」


 割と真実を言い当てている発言に、ギクリと頬が強張りかけるのをどうにか堪える。


「ははっ……ご存知かと思いますが、ウチのクラスはコスプレ喫茶をやっていまして。俺たち二人、宣伝を押し付けられたんですよ」


「おっと失礼。九条先輩には、大切な許嫁さんがいるのでしたね」


 言外に望んで二人でいるわけないことを匂わせると、ちゃんと伝わってくれたようだ。


 まぁ、その『大切な許嫁』に当たる存在が隣にいる彼女で合ってるんですけどね……。


「私のはタロット占いなんですが、何か具体的に占ってほしいことなどありますか?」


 尋ねながら、財前会長は慣れた手付きでカードをシャッフルしていく。


「実は、趣味でやってまして。結構当たると評判なのですよ?」


 俺の内心を見て取ったか、財前会長は少しイタズラっぽく笑った。


「占いの内容……烏丸さん、何かある?」


「うーん……会長さんに、お任せでっ」


 水を向けると、唯華はちょっと考えた末にそう言って親指を立てる。


「承知致しました。それでは、ざっくりお二人の近い未来について占ってみますね」


 カードをセットし、むむむと何かを念じるような表情で捲っていく財前会長。


 その手際を、感心の面持ちで眺めることしばし。


「ふむ」


 結果が出揃ったらしく、財前会長は一つ頷く。


「お二人には本日学校で、衝撃的な出来事が訪れる……と、ありますね」


「へぇ……二人共に?」


「えーっ、なんだろう楽しみーっ」


 ワクワクした様子を隠そうともしない唯華。


 一方の俺は、占いはそんなに信じる方じゃないけど……唯華と一緒にいると、衝撃的なことなんて割としょっちゅうだから。


 きっと、今日もまだまだ何かあるんだろうな……なんて思って、内心では結構ワクワクしているのだった。



   ♥   ♥   ♥



 会長さんとサヨナラして、占いの館を出る。


「衝撃的な出来事ってなんだろなー、ドキドキするーっ」


「まぁ文化祭だし、何かしらのハプニングやらはあるかもね」


「と見せかけて、文化祭中には何も起こらないかもっ?」


「なるほど、後夜祭でって可能性もあるか」


「そーそーっ、最後まで気が抜けないっ」


 なんて、笑い合う私たちは……まだ、知らなかった。


 この後、予想よりずっとずっと衝撃的な……一生忘れられないくらいの出来事が。


 私達に、訪れるんだって。

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