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男子だと思っていた幼馴染との新婚生活がうまくいきすぎる件について  作者: はむばね
第3章

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第85話 同担たちのオフ会


   ◆   ◆   ◆


 百合の間に挟まる男、純愛を謳っておきながらのNTR展開、親友カプ大好き侍。


 この世の三大罪悪です。

 皆様、見つけ次第殲滅にご協力ください。


 それにしても、あの女……!

 私だけの……もとい、今は私と義姉さんだけのサンクチュアリである兄さんの膝の上に座るという蛮行だけでは飽き足らず、こんな公衆の面前で告白ですって……!?


 びっち……!

 オタクに優しいギャルは存在しませんでしたが、びっちなオタクは実在しました……!


 最優先殲滅対象です……!


「あれっ? ワンリーフちゃんじゃん、何やってんのこんなとこで」


 教室から出てきた親友カプ大好き侍が、私のHN(ソウルネーム)を呼びながら首を捻ります。


「お義兄さんに会いに来たの? それとも、お姉? なんで入らないの?」


「入れるものなら数分前に速やかに突入し、貴女に鮮やかなドロップキックをぶちかまして退場させていましたよ……!」


「うん……? 恥ずかしいから学校では係わるなー、とかお義兄さんに言われてる系?」


「兄さんが私を拒絶するようなことを言うわけないでしょう!」


「じゃあ……わかった! 吸血鬼設定だっ? 招かれないと入れない、ってやつだよねーっ? おっしゃ、じゃあ私が招いてあげるよ。おいでおいでー」


「私は中二病患者ではありません……! あと貴女も招く立場にはないでしょう……!」


「うーん……じゃあ、なんで入らないの?」


「普通の人間は、呼ばれてもいない上級生の教室に堂々と闖入出来る程に心臓の毛がボッサボサではないからですよ……!」


「へー、そういうもん?」


 はい出ました、陰の者の感覚がわからない陽の者。

 くっ……! 一時は同志だとさえ思っていたことが今や黒歴史です……!


「てか、入れないなら何しに来たの? お散歩?」


「貴女を監視するために決まっているでしょう……!」


「そなん? おつー」


「本人が何をいけしゃしゃあと……!」


 本日、私のクラスにこの女が転入してきました。


 それはまぁ、よろしい。


 ネット上で繋がっただけの関係とはいえ、浅くはない仲。

 転校直後で心細いところを、私が一番に話しかけてあげましょう……などと、思っていたのですが。

 

 親友カプ大好き侍はむしろ自ら積極的にクラスメイトに話しかけ、半日経過する頃にはすっかりクラスの中心人物にまでのし上がっていました。


 それも、よろしい。


 私には持ち得ぬその圧倒的な陽の心には、ある種の敬意さえ抱いていたのです。

 ふっ……彼女には、私の助けなど不要でしたか……と、ちょっとニヒルな笑みを浮かべた私の静かな学園生活が再開されるはずでした。


 というか、ニヒルな笑みを浮かべるところまではやっていたのです。


 ──ねぇねぇ。変顔してるとこゴメンだけど、今ちょっと話せるー?


 そこに、あの女が話しかけてきました。


 ──……構いませんが。あと、変顔などしていません。


 返す私の声は、ちょっと硬くなっていたことでしょう。

 陰の者は、陽の者から話しかけられると無条件に警戒してしまうのです。


 ──九条一葉ちゃん……九条秀一さんの妹ちゃん、でいいんだよねっ?


 ──相違ございません。


 ──てことは、やっぱワンリーフちゃんだっ! リアルでは、初めましてだねっ。ふふっ、でも初めて会うような気がしないなーっ。イメージピッタリだったしっ!


 ──……そう言う貴女は、思っていたよりずっと陽の者でしたね。ネット上ではキモオタムーブを演じていたというわけですか。


 ──や、オタクなのもガチよ? 知ってるでしょ?


 ──……まぁ確かに、あれはファッションで演じられる域を超えたキモさですが。


 ──あはっ、ありがとーっ!


 ──真の陽の者には、闇魔法など効かないのですね……。


 ──ところで、お義兄さんって三年何組か知ってる?


 ──当然です。八組ですよ。


 この時、私は全く以て油断していました。

 推しのクラスさえ知らない同担に、ノブレス・オブリージュを発揮するつもりで教えてしまったのです。


 完全に、失言でした……!


 ──ありがとーっ! お姉に聞いても、教えてくれなくてさーっ。一組から順番に回っていくしかないかと思ってたから、助かったよっ。じゃ、ちょっと行ってくるねーっ♡


 ──……?


 違和感を覚えるのが、遅すぎました。


 最初は普通に、義姉さんに会いに行くのかと思っていましたが……思えばあの女は、最初から『お義兄さんの』教室を尋ねていたではないですか。


 ──まさか……!?


 慌てて追いかけてきてみれば、この有様ですよ……!


「てか昼休みもう終わるし、そろそろ戻ろうよ」


「……それはまぁ、そうですね」


 一応これは正論なので、我々は連れ立って歩き始めました。


「それはそうと、何ですか先程のハレンチの数々は!」


 ですが、キッチリ糾弾は続けます……!


「ハレンチて。てか、どれのことー? もしかして、お義兄さんの膝の上に座ったやつ? あんなの、ただのスキンシップじゃーん」


「ハレンチなお店の基準で語らないでください! しかもそれだけに飽き足らず、あんな大勢の前で告白だなんて……!」


「や、流石にそこは純愛判定してよ」


「NTRやんけ!」


「これは、『寝てから言え』って言う流れ?」


「お? 私が兄さんと同衾して明かした夜の数と貴女が推しに赤スパした回数、どちらが多いか比べてみますか?」


「おっと、そういやガチで推しと寝たことのあるタイプのオタクだった。初めて会ったけど、ちょっと厄介かもしれないなー」


「兄さんには義姉さんがいると、貴女も知っているでしょう! というかそもそも、公式凸は圧倒的ギルティです!」


「いいじゃん、告白くらーい。十年越しの初恋の人に、やっと会えたんだもんっ♡」


「お? 古参マウントですか? 残念でしたー、こちとら生まれた瞬間から推しとの絆が結ばれている推し歴十六年の最古参勢でーす」


「ふっふーん? でもでも私だって、半裸で推しの上に乗っかったことあるけどねっ?」


「おぉん? こちとら、全裸で推しにオムツを替えて貰ったことさえあるのだがー?」


「えっ、お義兄さんそういう趣味が……? うーん……でも私も、何でもしてあげるって言っちゃったからなー。それに、意外とやってみると良いのかも? とうわけでお義兄さん、私も……いいよっ♡」


 などと、教室に戻るまで私たちの口論は続いたのでした。



   ♠   ♠   ♠



「どしたい秀ちゃん、変な顔して」


「……俺の知らないところで、何かしら俺の不名誉が生成された気配を感じる」


「……?」


 何言ってんだコイツ? って顔で見てくる衛太だけど、俺も自分で言っててよくわからなかった……。

 ただ、俺の第六感がそんなことを告げているんだ……。


「まぁそれはともかく……さっき一葉があそこからこっち覗いてたんだけど、何してたんだと思う? 華音ちゃんと何か話した後、一緒に帰っていったみたいなんだけど」


「なら、華音ちゃんを見守りに来たんじゃない? 普通、転校初日に上級生の教室に行くとか心細いってレベルじゃないっしょ。華音ちゃんにはそれが当てはまらないだけで」


「あぁ、なるほどな」


 腑に落ちた。


 なんか以前からの友達みたいだし、やっぱり一葉は優しいなぁ……。

 あの目も、心配ゆえだったんだな……ってことで、いいんだよな……?


「一葉ちゃんは良い子だもんねー? ウチのにも見習わせたいよー」


「華音ちゃんだって、元気で可愛くて良い子だったじゃないですかっ。転校初日にお姉さんの教室にご挨拶しに来るなんて、とっても礼儀正しいですしっ」


「う、うん……ありがとう……」


 さっきの一連の流れを一から十まで全部見た上で真面目に断言してる辺り、やっぱり高橋さんって大物の器だよな……。

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