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男子だと思っていた幼馴染との新婚生活がうまくいきすぎる件について  作者: はむばね
第1章

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第10話 彼について

 衛太との件について、唯華は一通り笑った後。


「あっはは……いやぁ、ごめんね笑っちゃって。なんか、衛太とのやり取りのくだりが変にツボに入っちゃって」


 笑い過ぎによって目の端に浮かんでいた涙を指で拭う。


「それと……ありがと、私のこと守ってくれて」


 それから、今度は嬉しそうに微笑んだ。


「まぁ、実際には唯華を守ってくれてる人に無駄に絡んでしまっただけなんだが……」


「それでも、私のことを守ろうとしての行動だったことに変わりはないでしょ? それが、嬉しいの」


 なんつーか……勘違いに対して感謝されると、更に恥ずかしい気分になるな……。


「ていうか、ごめん。衛太については情報共有しとこうと思ってたのに、すっかり忘れてた」


「まぁ結果オーライというか、結果的に情報は共有されたな」


 軽く苦笑が漏れる。


「……ところでさ、秀くん」


 と、俺を見る唯華の目にどこか探るような色が宿った。


「今後の衛太との付き合い方は、どうするつもり?」


 うーん……一方的にとはいえ、相棒認定までされちゃったしな……。


「まぁ、普通に接するつもりだよ……友達として」


 ぶっちゃけ、どう接して良いのかは未だによくわかってないけれど。


「そっか」


 俺の返答に、唯華は嬉しそうに微笑む。


「うん、秀くんにも一人くらいはそういう相手がいた方がいいと思うよ」


「……かもな」


 衛太には他人に興味がないとか誤解されてたみたいだけど、別にそういうわけじゃない。

 ただ、腹に一物抱えてる奴とそうでない奴の判別が面倒だから一律で遠ざけているだけである。


 なので。


「衛太なら信頼も置けるし、秀くんを利用して何かを企むとかも絶対ないって保証するから」


「烏丸家のお墨付きがあるなら心強い」


 裏がないってわかってる相手まで遠ざけるつもりはない。


「うん、ていうかね。本人がすっごい馬鹿だから、そんな謀略なんて考えもつかないの」


「お、おぅ……」


 保証の理由が、思っていたのとちょっと違った。


「あっ、でもね? もちろん、良いところもあるんだよ? チャラく見えて職務には忠実だし、一度友達だと認めた相手にならどれだけ力を貸すのも惜しまない義理堅いところもあるの。あと、悪ぶってるけど根は素直っていうか真面目だったりするんだよねー」


「……へぇ」


 んんっ、なんだろうな……。


 唯華が衛太のことを褒めるのを聞いてると、なんか妙に胸がザワザワするような……?



   ◆   ◆   ◆


   ◆   ◆   ◆



「……随分と、衛太について詳しいんだな」


「うん、昔から家同士で交流が深かったから。よく知らない相手をボディガードにするのも、なんだか不安でしょ?」


「……確かにな」


「衛太の家は道場をやってて、衛太も小さい頃から鍛えられててね。あぁ見えて割と努力家で、今じゃ結構な腕前だよ。ボディガードとしても、信頼出来るから」


「……なるほどな」


「……秀くん?」


 そんな会話を交わしながらも、ちょっと違和感を覚える。


 秀くん……なんだか、微妙に機嫌が悪そうに見えるような……?

 新しく友達になった相手が良い人なのに越したことはないと思うけど……。


「……あっ」


 とそこで、一つの可能性に気付いた。


「秀くん……もしかして」


 思わず口元がニヤけちゃうのが抑えられない。


「衛太を相手に、嫉妬してる?」


「……えっ?」


 私の指摘に、秀くんはそんなこと思ってもみなかったって反応。


 ありゃ、これはハズレだったかな……?


「いや、そんなこと……」


 たぶん否定しようとしたんだろう秀くんの言葉は、途中で止まった。


「……あれ?」


 それから、何かを思い出すように首を捻って。


「っ……!」


 何かに気付いた様子を見せた瞬間、秀くんの顔が真っ赤に染まった。

 秀くんは、思わずって感じでそんな顔を片手で覆う。


「悪い……どうやら、そうっぽいわ」


 どうやら、自分でも今の今まで気付いてなかったっぽいね。


「ふふっ、別に謝るようなことじゃないよ」


 それどころか、本当は。


 とっても……嬉しい、って思ってるんだから。


「安心してよ」


 だけど、それを直接伝えるにはまだ勇気が足りなくて。


「私の一番の親友は、いつだって……いつまでも、秀くんだから」


 あくまで、そのスタンスを貫く。


「……ありがとよ」


「ふふっ」


 ますます赤くなっていく秀くんの顔を見てると、思わず笑っちゃった。


「……そういや、友人といえば」


 それから、秀くんは気を取り直したように話題を変える。


「唯華の方も、高橋さん(・・・・)と上手くやってるみたいじゃん」


「あー……高橋さんねー……」


 その名前が出て、思わず苦笑が漏れた。


「そうだね、上手くやってはいるよ……ちょーっと、大変だけどね?」


「ははっ……」


 私の言葉に、同意なのか秀くんも乾いた笑みを漏らした。

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[一言] 「私の親友はいつまでも秀君だから」は恋心はないですよって言ってるようなもんだけどそれじゃ進展しないぞ
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