041枚目 石碑前での戦い その5
「ソんな事はなイ。現にオ前の独語カラ聞き取レナい言葉ガあル。ソンなことガデキるのは神か、モシクはそれニ準ズるモノに認めらレタ者のみ。しらバっくれテも駄目だゾ」
「……ウリエルの名前って、あいつには聞こえていないの?」
【当たり前じゃろ。妾の高貴なる名前は聞こえないようになっておるわ。ほれお色気番組のわーおの効果音で見事にカバーしておる】
「なぜ、それにしたの」
もっと普通の効果音にすれば良かったのに、なぜそんな効果音にしたのか。やはり女神様の考える事はよく分からない。
【いや、相手の集中力を削ごうと思っていたのじゃ】
「で、結果は?」
【効果なしじゃ。ケバブの肉を削ぐように簡単には行かぬわ】
「うん、とりあえずお腹が減ったんだねウリエル」
琴花は大きくため息をついた。
太陽がそろそろ上に差し掛かる時間帯。帰ったらお昼ご飯。メインはお肉。肉は世界を救う。
「てなワケでお前は強イ。ソロそろ力を出しテみロ」
「えぇー。力と言っても……」
非戦闘民族である琴花にそんな力はない。あればもう少し上手く立ち回っている。
「力って……もしかしてウリエル様関係かしら?」
小声で語りかける。
【もしかして……あの漆黒の……いや、偽サーシャか。琴花の持つそれに反応したかもしれぬな】
「え……と どれ?」
【そのナイフには妾の加護が宿っておる。あとコインも持っておるのぅ〜。なるほど、あの者は、それをどうやらお主のオーラーか何かと勘違いしたのだろうな。あっはっはっはっは】
笑い事ではない。
ウリエルが、エルのナイフに加護を与えるようと強制した結果、まさかそれが裏目に出ようとは……。
「どうしてくれんのよぉ〜」
【うむ。どうするかって言われたら……。あぁ〜そうじゃな。……答えは一つじゃぞ】
【戦 え】
「はぁ? 何を無茶言ってんだ、ウリエルのアホォォォォォォ」
【な、なんじゃとぉぉぉぉッ!! おのれぇぇい琴花、妾にアホォォじゃとッ!!】
「コイロちゃん、ウリエル様も落ち着いて」
「戦え……って言われたぁ〜。どうしようエル」
「あらあら。でもウリエル様の事だし、何か策でもあるのかもしれないわよ」
「本当かな〜」
「何かしらの勝算があってこその戦えだと思うわよ」
はたしてウリエルがちゃんと考えてモノを言っているのか怪しい。だが、今は戦わないことにはこの場を脱することはできない。
【そろソロ始メテいいカ?」
漆黒の者はお待ちかねだ。
「くッ!! サーシャちゃんの偽物に勝つための策はあるの? ウリエル」
【あっはっはっはっは……無論。
ないに決まっておるじゃろ】
清々しい笑顔でそう答えた。
答えたのと同時に琴花は眼鏡を装着した。アドバイスをくれない女神ならいないほうがいい。
琴花はナイフを抜いて構えた。
「エル、何としてもこの場を切り抜けるよ」
「えぇ、そうしましょう」
コインは残り1枚。これをどう使うかが生殺与奪に関わる。
皆様お待たせしました。
この子が今作のヒロインです。
漆黒の者こと偽サーシャと対峙すること数秒。
「ン? 待てチビっこイ方の顔、どコカで見たこトがあルぞ」
眼鏡を装着した琴花を見て、偽サーシャは首を傾げた。そして何かを思い出したようで手をポンと叩く。
「ソウだ、これヲ拾っタ時に、お前ノ顔が脳裏にヨギったンダ」
そう言って、偽サーシャはポケットからあるものを取り出した。
「あッ!!」
「どうしたのコイロちゃん」
琴花はすぐさま眼鏡を外してウリエルに問いかける。
「ウリエル、あいつが持ってるやつ」
【うむ、間違いない。妾のコインじゃ】
偽サーシャがポケットから取り出した物。それは2枚の女神のコインだった。
なくしたはずのコインが、今 貴女の目の前に……。




