036枚目 再会 大森林の石碑にて
2020年2月 Twitterが悪用されてしまいました。復活するまでしばしお待ちください。
フライドフェザーを無事に討伐に成功した琴花達がしばらく歩き続けると開けた場所に出た。先程までの薄暗かった森林内とは打って変わり、木々の隙間から差し込んでくる光がどことなく幻想的な風景を感じさせた。
その差し込んでくる光の線に照らされているモノがあった。それが石碑である。
「あったわコイロちゃん。あれがオクジェイト大森林の中にある唯一の石碑よ」
「こ、これが……」
【うむ、間違いないぞ。大昔妾が記念碑として作った石碑じゃ】
満面の笑みを浮かべて頷くウリエル。琴花はじーっと石碑を観察する。何が書いてあるのかは全く読めなかった。
「うーん、でもこの石碑というか記念碑……? なんか小さくない、これ」
観察を終えた琴花は、ぼそりと呟いた。
大森林の奥地に存在する石碑は琴花が思っていた以上に小さかった。旅行雑誌とかで大々的に宣伝している割には行ってみると、どことなくイメージと違ってガッカリしたようなそんな気分。
【き、貴様、この琴花ォォォォォォ。数百年前、妾が初めてこの世界に降り立った記念すべき場所に建てた石碑をちちち……小さいじゃとッ!!】
だが、地獄耳である女神ウリエル様は、琴花の声に過剰に反応する。それをまぁまぁと笑顔で仲裁に入るエル。
「だって大森林の奥地にある石碑だから、さぞ大きいんだろうなと思っていたんだもの」
今琴花の目の前にある石碑は歴史的建造物というより、
「これじゃまるでお墓だよ」
まさに琴花の言う通りだった。石碑は琴花の身長とあまり変わらないくらいの高さであり、横幅もそんなに大きくない。
御供物と花、あとお線香があれば立派なお墓参りである。
【ぐぬぬ、この美しいフォルムをお墓と一緒じゃとッ!! お前の眼はどうやら欠陥品のようじゃな】
「勝手にあたしの眼を改造するからだよ」
「まぁまぁ、コイロちゃんもウリエル様も喧嘩は辞めて。さっさと石碑の見守……」
エルが最後まで言葉を発することはなかった。
エルが後方に突然持っていたナイフを投げつけたからだ。突然の行動に驚く琴花にエルは、人差し指を立てて静かにしてとジェスチャーをした。
「そろそろ出てきたらどうッ!?」
エルは自分がナイフを投げた方向に声を荒げた。
だが返事はない。念のためもう一本のナイフを鞘から抜き放ち、相手を威嚇するかのように構える。
「そこにいるのは分かってるわ。出てこないなら今度は当たるように投げるわよッ!」
「え、えーとこれって」
【うむ、つけられていたようじゃな】
「ウリエルは気付いていたの?」
【全ぜ……うむ、泳がしていたのじゃ。ここなら明るいしのぅ】
なぜ、言い直したのか突っ込みを入れたいところだが。
何はともあれ、何者かが琴花達の後をつけてきたようだ。一体何のために。
「ちぃッ! わーったよ」
エルがナイフを投げた方向から1人の男が現れた。
腰まで伸びた黒いロングヘアー。だがちゃんとお手入れされていないせいか、所々ボロボロな髪質。お笑いのロッ◯の髪の毛が長い方みたいなサラサラとは真逆である。さらに伸びきった髪の隙間から覗く鋭い眼光が、明らかに善人の類ではないと言い切れる。
その姿に琴花は息を呑んだ。
大森林で琴花に暴力を振るい、なおかつ一晩牢屋に閉じ込める原因を作った張本人。
「あいつは……」
その名前は……。
【うむ、アレはナヴァナじゃな。貴族のノサト家三男坊の】
「あなたは冒険者ね。一体私達に何の用なの?」
「はッ! 別にお前らに用なんかねぇよッ! それにこの俺がどこで何しようと勝手だろうがよ。それよりいきなりこんなもの投げ付けてくるほうがどうかしてるだろうがッ!」
ボサボサ髪(ボサ髪)の男は、そう吐き捨てる。それと同時にエルが投げたナイフを地面に突き刺すように投げ捨てた。
「殺気をわずかだけど感じたわよ。全く私達に用がないなんて言い訳は通用しないわよ」
「思い込みが激しいんじゃねぇの? まぁーこんな魔物がいるような所じゃ神経が過敏にならなぁな」
鼻で笑うボサ髪の男にエルは警戒を緩めずに応対する。
「ナヴァナ=ノサトッ!! あんたのせいであたしはッ!!」
それまで黙って見ていた琴花は足元に落ちていた石を拾って放り投げた。だが、コントロールが悪かったせいか、石はあらぬ方向へと飛んでいく。
「おいおい、文句言いてぇーのはこっちだぜぃ。なんたって目潰しされたんだからよぉ」
「ちょっと待って。ということは貴方がコイロちゃんをギルドの職員に報告した冒険者なの?」
「そりゃー悪い事したら報告するのが義務だろうがよ」
「あたし、あんたに首絞められて死にそうになったんだよ。抵抗するの当たり前じゃんか」
「だがよ、目潰しはやり過ぎだろうがよッ! 生きて帰れたから良かったけどよ。死んでたらマジでぶっ殺すとこ……」
「もう落ち着いて2人とも」
エルは今にも食ってかかりそうな琴花と、馬鹿にしたような笑みを見せるナヴァナの間に割り込むように立つ。
こんな大森林の奥地で喧嘩していても意味はない。今のところナヴァナは武器を抜いていない。だが警戒は緩めない。いつナヴァナが琴花に牙を剥くか分からない。
「コイロちゃんは、石碑の周りを確認して。ナヴァナはそこにいて。何かしたら肋骨か足の骨にヒビ入れるから」
「おいおい怖ぇな。まぁー何もしねぇよ。早くこんな所から帰りてぇし」
ナヴァナは両肩を軽く上げ、手を広げてため息をついた。




