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コイン磨きの聖女様 牧師の娘とウリエルが歩む異世界  作者: 聖魔鶏カルテペンギン
第1章 オクジェイト大森林 探索編
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033枚目 あいつ全滅したってよ

 大森林の中を進むこと数分。様々な魔物と遭遇した。時には戦ったり、敵意がない魔物は無視したりなどした。昨日遭遇したハクビーやグワッパとも戦った。一度戦ったおかげか、前回より琴花はうまく対処することができた。といっても100%琴花の力ではなくエルの指示通りに動いたり、援護をしてもらったりしていた。いきなり強くなれるのならそれに越したことはない。エルは盗賊をしているせいか、視野が広く、微妙な窪みや泥濘(ぬかるみ)などを事前に察知して琴花に教えてくれた。そのおかげか昨日より大森林を楽に歩いているような気がした。


「そういえば、昨日はそれどころじゃなかったけどゴブリンとかはこの森にいないの?」

 ふと疑問に思ったことを琴花は問うた。琴花の世界にいるような動物をモチーフにしたタイプには多数遭遇するが、ゴブリンなどには全く出会っていない。

 ゴブリンについて今更説明は必要ないかもしれないが、緑色の肌をした子供くらいの大きさの魔物だ。時には群を作り、中にはキングとか呼ばれる者まで成長することがあるファンタジー定番の魔物。

「太古の昔にはいたわよゴブリン。でも数百年前あたりに滅亡したはずよ」

「え? 滅亡? ゴブリンが?」

繁殖能力が高いと有名なゴブリン。放置しておくと災害まで発展すると言われている魔物が滅亡していることを知り、琴花は驚いた。

【ふん、あの醜い魔物は妾達4女神の怒りを買ったから滅ぼされてしまったわ】

「どんな怒りを買ったら滅亡するのか、あたしはそれを知りたい気がする」


 一体ゴブリンは何をやらかしたのだろうか。


【まぁー新しく作り変える世界にあのような醜い魔物は不要じゃったからのぅ〜。特に姉様がゴブリンやオークなどを毛嫌いしておって、瞬殺殲滅全滅と言っておったのぅ〜】

「……姉様?」

 琴花が首を傾げているとエルが優しくフォローを入れる。

「ウリエル様が《姉様》と仰ぐお方、残りの3人の女神様の事よ」

「残り3人……たしか、ミカエルとガブリエルとラファエルのことだね」

【琴花よ、妾は琴花とソウルメイトじゃから良いが。念のために姉様達は様をつけたほうが良いぞ。意外とマナーにうるさいのじゃ。敬意や尊敬がないと消されるかもしれんぞ】

「う……うん、わかったよ」


 さらにそこから少し歩き続けると、エルが琴花の肩を掴んだ。

「隠れて。いたわ、コイロちゃん。あなたの討伐相手のフライドフェザーよ」

 エルが頭を低くするのを見て、琴花も頭を低くする。少しずつ距離をつめていく。

「あれが…………フライドフェザーなの?」

【うむ、間違いなくフライドフェザーじゃな。ちなみに手羽先じゃないぞ】

 フライドフェザーは1体。鳥タイプの魔物。

 体長は約1.6m-2.0m程度あたりだろうか。並ぶと琴花より大きく見える。見た目はダチョウに似ていた。しかし、ややがっしりした体躯で、頸から頭部に掛けても比較的長い羽毛が生えていた。また、あしゆびは3本であり、先に丈夫な爪を備えていた。

「なんか、ダチョウみたいな鳥だね」

【そうじゃな、ダチョウというより、どちらかというとエミューに近いかもしれんのぅ〜】

「あんな爪でやられたら、あたしお嫁に行けない気がする」

「大丈夫よ。やられる前にやれば問題なしよ」

【だからこそ、不意打ちできるように身を潜めておるのじゃな】

「さすがウリエル様。ウリエル様のように先を見据えておられると私が説明をしなくてもいいから手間が省けますわ」

【ふっふっ、お主のやろうとしている事なぞ妾にはお見通しよ】

 どことなく接待なやり取りをしている2人を横目に琴花はフライドフェザーを眺めた。今のところこちらに気づいている様子はない。仕掛けるタイミングさえ間違えなければ楽に倒せるかもしれない。

「チャンスよ、琴花ちゃん」

「わかったよ」

「じゃあ、私がタイミングを測るわ。1.2の……3で仕掛けるわよ」

「うん」

 琴花は加護のついたナイフをギュッと握りしめた。そしてエルの合図を待つ。



「行くわよ、1.2の……」


 琴花はいつでも飛び出していけるように構えた。フライドフェザーを倒せば晴れて冒険者(ランカー)である。出て行くタイミングは全てエルに一任している。


 フライドフェザーは現在、琴花達のいる方向にある草を突いているところだ。エルが狙っているのは正面ではなく、フライドフェザーが後ろを向いた時である。


 なかなか敵は後ろを向いてくれない。ベテラン、またはある程度の冒険者(ランカー)ならば、正面を向いていようが問題はない。ただ今回は琴花だ。戦闘において全くの素人。そんな素人が敵を倒すにはどうしたらいいか、そう不意打ちしかない。


 不意打ちしかないのだ。先手必勝なのだ。大事な事は二度言う。これはお約束なのだ。


 エルの息遣いを感じた。珍しくウリエルも黙って様子を見ていた。ここまでのお膳立てをしてもらって失敗するわけにはいかない。琴花は大きく深呼吸をし……。



「3ッ! 今よ」



 しかし、深呼吸をしかけている時にエルの号令がかかった。琴花は深呼吸を中断して茂みから飛び出した。それが失敗だった。




 琴花は駆け出してから、






 派手にコケた。


 それはもう見事なほどに。転倒と呼べるほどバタンと頭からコケた。



【お前は頭が重たい乳幼児かー】とウリエルが叫ぶ。

「あらあら」と頬に手を添えるエル。

 乳幼児は頭に重心が行くため転倒しやすいのが特徴だ。何はともあれ不意打ちの予定だったのに、目の前で派手に転んだ琴花を見たフライドフェザーはクェェェ〜と鳴き声を上げた。


 気づかれてしまっては不意打ちもへったくれもない。さらにフライドフェザーは逃げるわけでもなく、転んでしまった琴花に襲いかかる。


【まずいッ!! 逃げるかと思いきや攻撃に転じたぞ】

 琴花はあいたたと呟きながら身体を起こし始めているところだった。そこに迫ってくるフライドフェザーを見て、ギョッとする。不意打ちに失敗した。敵が琴花に迫ってくる。


「させないわよッ!!」

 転んだ琴花の前にエルが躍り出た。迫ってくるフライドフェザーの足元を狙ってナイフを投げつける。投げたナイフが刺さったことにより、フライドフェザーの動きが鈍る。


「コイロちゃん、立ってッ! 今よッ!」

【援護はしないと言っておったのに、エルは鬼になりきれんようじゃのぅ〜】

 琴花は立ち上がり、動きが鈍くなったフライドフェザーに向かって駆け出した。こいつを倒して琴花は冒険者(ランカー)になるのだ。


 だが、相手もそうやすやすとやらせてはくれない。

 フライドフェザーは大きく羽根を広げて振りかぶった。無数の羽根と風が巻き起こる。琴花は思わず立ち止まって目を閉じてしまう。

 それを好機と見たフライドフェザーはクェェェェェェと鳴き声をあげながら駆け出す。そして琴花の身体に目掛けて鋭い蹴りを放つ。

「がはッ!」

 それを喰らった琴花は数メートルほど飛ばされる。

「フライドフェザーの固有スキルは名前の通り、羽根を飛ばすから注意しなきゃダメよ」

【ただし、一枚ではなく複数の羽根を飛ばずのが特徴じゃぞ】

 エルはいつでも攻撃に仕掛けられるよう構えた。

 琴花はゲホゲホと呼吸しながらヨロヨロと立ち上がった。

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