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コイン磨きの聖女様 牧師の娘とウリエルが歩む異世界  作者: 聖魔鶏カルテペンギン
第1章 オクジェイト大森林 探索編
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028枚目 ミステリアス

「まぁーエルっちが小さい子好きなの分かったよ。ところでお前さんさっきからそこで何してるんでぇい?」

 腕を組みながらレイは3時の方向に視線を向けた。そこには少年が1人。ボロボロのマントにロングソード。少し使い古された皮の鎧を着ている。村人ではない。おそらく、いや十中八九 冒険者(ランカー)であろう。

「さっきからずーっとこちらを見てるのは気づいてるんだ。しらばっくれてもダメだぜぇい」

 レイは腕を組みながら、少年 冒険者(ランカー)を睨みつけた。茶髪で後ろに伸びた髪を紐でくくっているのが特徴だ。

「別に好きでぼーっとしていたわけじゃない。いきなり土下座したり、小さい女の子が好きだと喚いたりして、話しかけるタイミングを逃しただけだ」

「たしかに俺っちもそんな状況では話しかけられんわ、ガハハ」

 少年はゆっくりと歩き、琴花の近くまで距離を詰める。

「探していたんだ、あんたを」

「ん〜コイロちゃん知っている人?」

「え……と初対面ですけど」

 異世界に来たばかりの琴花の交友関係は、エルとレイあと行方不明中のサーシャの3名くらいだ。

「そう? あんなにジーっと見つめちゃっているわよ」

「残念だけど、私には全く心当たりがないです」

「昨日の夜からずっと探していた。やっと見つけた」

「うふふふ、人と人が恋に落ちる瞬間を目の当たりにするなんて。今日は新しい出会いに乾杯ね」

 いきなり、のほほんと話し始めるエルに

「いやいや……」と琴花は否定した。


 たしかに少年はジーッと琴花を見ている。

 いや、正確には 見ているように見えた。

 少年は自分ではなく、その背後にいる何かを見ているのではないかと。


 もしかしてと琴花は1つの結論を出す。

 この場合、背後にいるのは4女神様が1人ウリエルしかいない。しかし、彼女の姿は眼鏡を外した時の琴花しか認識できない。考え過ぎかと思うが、やはり視線はどことなく琴花を見ているようで違う方向を見ている。そんな違和感しかなかった。


「ウリエル、もしかしてこの冒険者(ランカー)

『ふむ、さっきから若い男の視線をビンビンと感じるのぅ〜』

「あぁ見えてるんだね。やっぱり」

 ウリエルが動くのと同時に少年の視線も動く。どうやら見えているようだ。

「やはり見間違いじゃなかったんだな。なぁー、俺の見間違いじゃなければあんたの後ろにい…….」

「おいおい、まずは自己紹介が先じゃねぇか。いきなり初対面であんたとか言われてもいい気分にならねぇぜぃ」

 見間違いではなかったことに気づき、安堵した少年は琴花に矢継ぎ早に質問をしようとするが、そこをレイに止められる。

「あぁ、すまない。つい」

 少年はレイに頭を下げる。


「俺はノイッシュ。ノイッシュ=ゼーエン、冒険者(ランカー)Rank Dだ」

「俺っちはレイ=トレファスナー RankはCだ」

「私はエル。同じくRankはCよ。そしてこの子はコイロちゃんよ。よろしくね」

 自己紹介も無事に終えたところで、少年冒険者(ランカー)はさっそく疑問に思ったことをぶつけた。


「実は昨日の夕方、帰ってくるのを宿の窓から見ていたんだ。その時ふわふわと浮いているウリエルが見えて、高熱のあまり見間違えたかと思っていたんだ。でもさ、あんな神々しい姿を見間違えるわけないよなと思ってさ」

『ほぉーなかなか見所のある若者じゃな。お主が良ければ妾が漢にしてやるぞ』

 扇子を広げて口元に持っていくその仕草は女神ではなく遊女の振る舞いだ。

「ちょっと、今は静かにしてくれるウリエル」

「ところで、コイロだっけか? あんたの後ろにいるのはやっぱり4女神のウリエルで間違いないんだよな?」

「うん、でもあまり大声で公言しないで欲しい。あまり目立ちたくないんだ」

「ウリエル様のお姿が分かるってことは女神様の信仰が厚いのね」

「いや、4女神について書かれた書物を読み漁っていたことがあって、たまたま姿を覚えていただけなんだ。しかし、なぜウリエルはコイロの側にいるんだ?」

「うーん……気づくと目の前にいたって感じ」

 ウリエルの事はともかく、さすがに異世界から来ましたとは説明できないので、そこは伏せておくしかない。

「あぁなるほどな、ウリエルが取り憑いてしまったと……」

【こんのシャイニング馬鹿小僧がッ! 女神を……この4女神が1人ウリエルを捕まえて取り憑いてるなどと吐かすとは、罰当たりな奴じゃ。神罰を与えてくれるわッ! そこになおれ、修正してくれるわッ!】

 ノイッシュの言動に過剰に反応したウリエルが指をポキポキと鳴らし始めた。

 いつでも喧嘩できる状態だ。

 ハチマキをいつ巻いたのか……。

 闘魂(ボンバイエ)と書かれている。

 ビンタでもするのだろうか……。

【妾のコインを汚物と吐いた赤髪の野郎にも腹が立ったが、まずはこの罰当たりな小僧のほうを先に説教してくれるわッ! 琴花よ通訳せぇぇぃッ!】

 通訳はともかく、耳元で怒鳴られるのはもう勘弁して欲しかった。そろそろ鼓膜が限界サバイバーだ。


「もううるさい、本当にちょっと黙っててッ!!」

 琴花は眼鏡をはめた。

 これでウリエルの姿や声を認識できなくなる。

 話もスムーズに進むってものだ。

「お、おいウリエルが何やらギャンギャン吠えてるけどいいのか?」

 ウリエルの姿が見えているノイッシュは、何やら同情している。だが、見えない琴花にとっては知ったことではない。

「今は邪魔だから…………その一旦退場」

「コイロお前、結構罰当たりな女なんだな。仮にも女神に向かって邪魔とか退場とか……」

 ノイッシュは呆れた。

「ところでエルさんよ、一つだけ聞きたいんだが」

「あら何かしら?」

「あんたはその見た目が美しいから迷うんだが、男なのか? それとも女なのか?」

 ノイッシュは素朴な疑問をエルにぶつけた。見た目が美少年だが口調は女性。どちらなのか分からないのだろう。

「うふ、そういうのは答えないようにしてるのよ」

エルは片目でウィンクした。


「く、性別不明か……」

「うふ、ミステリアスでしょ?」

 悪戯じみた笑みを見せるエルに、ノイッシュはため息をついた。



「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 突然、レイが叫び声を上げた。それに驚く一行。

「な、なにいきなり」

『ふむ、ついに壊れたか赤髪』

「どうどう落ち着いてレイ、ご飯はさっき食べたばかりでしょ」

「違うぜぇい、お前さんらはウリエルが見えたり、声が聞こえたりしてるかもしれねぇが、俺っちは見えねぇし聞こえねぇし、すげぇー仲間外れの疎外感なんだよッ!!」

「あーそういえばそうね。私は聞こえているからつい」

 たしかにレイの言う通りだった。今この場にいてウリエルと何かしらのコンタクトが取れているのは、琴花、エル、そしてノイッシュのみであり、見えない聞こえないのレイにとっては仲間外れにされているようなものである。仲間外れにした覚えはないが、まぁーされているようなものだ。

「俺っちはもう我慢ならん。ノイッちッ!!」

「え、あ……ノイッち?」

「ちょいと身体が鈍ってきたからトレーニングに付き合ってくれぇい」

「はぁ? なんでだよ」

「仲間外れで落ち込んでいる俺っちを励ますためでぇいッ!!」

「いやいや、落ち込んでねぇだろ。それに俺は今からクエストに行くんだよ」

「それはどんなクエストでぇい?」

「あ、そんなの素材収し……」

「はぁーい、お一人様ご案なぁぁぁぁぁぁぁぁぁい」

「はぁ、待てよ、おい、こら担ぐなぁぁぁ」

 レイはヒョイっとノイッシュを担ぎ上げて歩き始めた。

「担がれちゃった」

『担がれたのぅ〜』

「担がれてしまったわねぇ〜」

「お、おい見てねぇで助けろよッ! 俺は行かねぇぞ、トレーニングなんか絶対にやらねぇぞッ!」

 ノイッシュがバタバタするも残念ながらレイにしっかりと固定されており逃げることができない。

冒険者(ランカー)規約その1、上位Rankの人間のお誘いを断る奴ぁ死刑なんでぇい」

「そんな規約はどこにも存在しねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!」

 こうして抵抗虚しくノイッシュはレイに連れ去られていくのであった。


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