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コイン磨きの聖女様 牧師の娘とウリエルが歩む異世界  作者: 聖魔鶏カルテペンギン
第1章 オクジェイト大森林 探索編
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幕間001枚目 あの日、窓から見た風景を俺は忘れない

 その日、少年は村の北にある森で激しい光が夜空に昇っていくのを宿屋の窓から見ていた。


 突然起きた発光現象に真夜中だというのに村人や冒険者達が昼間のようにざわついた。

 その後に発令された緊急クエスト。


 クエストの内容は、白い靄が発生している森に村の子供が単独で行ったので探して連れ戻して欲しいとのことだ。


 なぜ森に入っていったかというと、謎の光が原因だ。そう、子供が興味を示したのは謎の光。


 日常では見られない夜空へと昇っていく光に心を動かされたのだ。

 好奇心旺盛なのは肉体や心の成長に繋がるが、ときとしてそれは過ちを生むこともある。

 若さゆえか勢いがあるというか。


 かつてそういう気持ちを抱き、色々と興味を持って過ごした幼少期があったのでその気持ちが全く分からないというわけではない。

 むしろ同調してしまいそうになる。

 まぁなにはともあれ子供は単身、白い靄が発生する森の中へ行ってしまったのである。


「はぁー行きたかったな緊急クエスト」

 咳をしながら冒険者の少年は呟いた。


 彼の名前はノイッシュ=ゼーエン。

 年齢は16才。

 本来ならば緊急クエストは全員参加の義務が生じているので参加しなくてはならないのだが、生憎なことに彼は高熱にうなされていた。

 先日魔物と戦った際、爪による攻撃を受けてしまい、そのまま何かの菌か毒に侵されたようで、現在治療中の身である。

 薬を飲んだり、神官による治癒術によって回復はしてきたのだが、まだ外に出る許可は得ていないので出られない。

 その気になれば武器を持って飛び出すくらいは可能だが問題が二つある。


 一つはマッチョな宿屋の主人が入口のカウンターで待機しているので出られない。特技はその巨体から繰り出される素手や足による攻撃。


 もう一つは主人よりも恰幅が良い女将さんが主人が不在の時はカウンターで待機していて出られない。特技は素早く懐に潜り込んで繰り出す投げ技。

 かつて冒険者(ランカー)だった夫妻の熟練の技に敵うわけもなく。

 通常時でも怪しいのに、病み上がりのノイッシュが喧嘩売って勝てるわけがない。

 それこそ奇跡か女神の力でもなければ……。


 命は大事にしろと長老様が仰っておられたので、やはり守るしかない。


 怖じ気ついたわけではない。

 長老の教えを守ろうとしているだけだ。




 そう、けっして怖じ気ついてはいないのだ。


 結局脱出を諦めてベット上にてノイッシュは過ごした。女将さんお手製のお昼ご飯を食べ終え、気づくと眠っていたようで空はすっかり赤く染まっていた。

 ぐっすりと休んだので体調は万全だ。


「明日にはクエストに行けるな」

 ノイッシュは首や腰などの全体的な柔軟運動を行っていく。最後に身体をググッと伸ばして運動終わりと窓の外を見ると緊急クエストから帰還したばかりの冒険者達が歩いているのが見えた。


 赤毛の青年とエルフの美少年。

 装備などからしてこの2人はおそらく冒険者(ランカー)だ。


「無事に緊急クエストは終わったようだな」

 宿屋の前を歩いていく冒険者達の背中にはそれぞれ子供らしき人物が背負われていた。赤髪の青年は少年を。金髪のエルフは少女を。それぞれおんぶしていた。


「あれ? たしか探索対象って……」

 ノイッシュは首を傾げた。


 緊急クエストの内容は宿屋の主人から聞かされていたが、たしか1人だったはずだ。

 しかも少年だけである。

 少なくとも少女とは聞いていない。

 となるとエルフの美少年らしき冒険者が背負っている少女は一体誰なのか……。


 高熱でうまく聞き取れなかったんだろうとノイッシュは自分で納得する。

 もしかしたら少年ではなく少女だったのかもしれない。だが結局緊急クエストに参加できなかったノイッシュにとってはどうでもいい話である。

 無事に帰ってきたのだから良しとすべきなのだ。

「まぁ明日から頑張って稼がないとな」

 そのままギルドの方向へと歩いていく冒険者達の背中を見届けてからベットに戻ろうとして、ノイッシュは足を止めた。

 宿屋の前の道に見慣れぬ服装の少女が通り過ぎていく。それだけなら大したことはない。

 少し遠い村や町からやって来たとか、王都の最新ファッションだとかで答えは出る。もしくは変わり者か、変人か。

 だが、問題はそこではない。


 その少女はふわふわと飛んでいた。


 浮くだけならば魔術師にでもできるが、その少女はスイーっとまるで鳥が飛ぶように優雅に飛んでいる。

 たしかにノイッシュの目には飛んでいるように見えた。


「はぁ?」

 ノイッシュは目をゴシゴシと擦った。


 己の見間違いかもしれないからだ。

 だが見間違いではなかった。

 目を擦っても少女はふわふわと飛んでいるようしか見えない。

 行き先は分からないが、冒険者達が向かっていた方向と同じだった。


「な、なんだ。あんな奇妙なことをしているのに何で村の人は驚かないんだ」

 少女が鳥のように飛んでいるのに通り過ぎる冒険者や村人が誰も驚いていない。

 この村では人が空を飛ぶのが当たり前なのだろうか。

 もちろんそんなカルチャーショックな話はない。


 ノイッシュがこのオクジェイト村に来た理由は単純だ。なんでも共に行動する冒険者仲間がご利益のある焼鳥があるから食いに行こうぜと誘ってきたのが始まりだった。

 そうでなければ特にオクジェイト村に寄る用事もなく、適当に王都あたりに繰り出していた予定だった。

 焼鳥ならば王都でも食べられる。わざわざこんな田舎のオクジェイト村まで来る必要はない。

 ただし王都で食べられるのは鶏肉の焼鳥で、豚肉の焼鳥はこの村でしか食べられない。


「もしかして他の人は見えていない?」

 一瞬高熱による幻覚を疑うも否定する。

 しっかりと眠ったことにより熱なんぞ、とうの昔に下がっている。となると考えられるのは他の人には見えていないということだ。

 どういう原理かは分からないが、見えていないのならば驚くことはできない。


「そんな馬鹿な話はねぇと思うが、一応確認してみるか」

 かつては好奇心旺盛だった幼少期を過ごしたノイッシュ。確認に行かずしていつ行くか。


 まさに今でしょッ!だ。


 ノイッシュは着の身着のまま、部屋を飛び出した。

 階段を勢いよく駆け下りていく。

 今は夕食の時間帯でバタバタしている。

 外に飛び出すなら、まさにうってつけだ。

 ノイッシュは階段を降り切って、そのままドアに向かってダッシュした。









 その数秒後、床と熱いキスを交わす少年の姿が宿屋にいたお客様により目撃された。

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