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コイン磨きの聖女様 牧師の娘とウリエルが歩む異世界  作者: 聖魔鶏カルテペンギン
第1章 オクジェイト大森林 探索編
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023枚目 塩 or タレ

「コイロちゃんいる?」

 ドアを開けて入ってきたのは金髪の美少年ことエルフのエルだった。

 通路はとても明るいため、そーっとドアを開けて申し訳なさげに覗き込んでくるのが見えた。


『これでおるように見えないならば、一度眼科の受診をオスス……』

「ちょ……」

 何とまぁ酷い言い草ではあるが、ここでウリエルに語りかけては変な人扱いされるので琴花は「うん……」とエルに返事をする。


 ちなみに琴花が今いる場所は、わずかに薄暗くエルからは光の関係で中が見えにくい状態となっている。


 分かりやすく説明できるかは分からないが、昼間にいきなりトンネルに入ると中は真っ暗で何も見えなくなったり、その逆にトンネルみたいな真っ暗な所から明るいところへ出ると眩しくて何も見えなくなることがある。

 人の眼球はその時々に応じて明順応や暗順応する機能を持つ。余談をあげると夜間運転中に対向車のライトで目が眩んだりするのもそれによる現象だったりする。現在はトンネル内は明るくしてあるので、いきなり真っ暗で見えねぇという現象はないと思われるが……。


「えーと何か用?」

「うんコイロちゃんがお腹すかしていないかと思ってご飯を持ってきたの。もし良ければ一緒に食べない?」

 1日中森の中を彷徨い歩いたのだ。

 お腹をすかしているに決まっている。


 エルはにこやかに微笑み、部屋の中へと足を踏み入れる。その笑顔はまるで天使様のように感じられた。


 ただ口調がオネェなのが残念ではあるが……。


 エルの右手にお盆。

 そのお盆の上には2枚のお皿とコップに注がれた飲み物が2つ。

 だが、お皿に蓋がしてあるので何が入っているかは分からない。

 蓋を開けるまでのお楽しみだ。


 ワクワクしながら手を伸ばそうとすると、横から性悪な四女神の1人ウリエル様がボソッと呟く。

『蓋とかしてあってまぁ怪しいのぅ〜。毒とか入っておるのではあるまいな?』

「大丈夫よ、毒なんて入ってないから。なんなら毒味する?」

 可愛らしく首を傾けるエルに琴花は苦笑いをしてお皿を受け取る。

 こんな仕草をする人間が毒を仕込むわけがないし、仕込まれる覚えもない。


「う、うん。ありがとうエル」

 とお礼を言いつつ、ウリエルを一瞬だけギロリと睨む。だが、当のウリエル様は口笛を吹いて琴花から目をそらしている。反省の色は皆無……。


「それではいただきましょう」

「いただきます」

 エルが両手を合わせる。

 それに続けて琴花も手を合わせて、蓋に手を伸ばす。

 今まで閉じ込められていた美味しそうな匂いが放出された。


 お皿の上には、琴花の世界で馴染みのある料理《焼き鳥》によく似たものが並べられていた。

 味付けはタレのようだが、一本の串に刺さってる量は残念ながら小さいし少ない。


 チェーン店の1本80円程度の焼鳥と並べると、その小ささが際立つ。


 肉食系女子ではないが、それなりにお肉が大好きな琴花にとってこの焼鳥に落胆の色を隠せない。

 これが異世界における1人前ならば全く足りない。

 腹八分目にも満たない。

 特にこの世界に来てからまともな食事もしてないし、森の中を歩き回っているので余計に物足りなさを感じた。せめて横にサラダかデザートでもあるならば話は違っていたのかもしれ……。


「コイロちゃん食べないの? やっぱり毒が入っ……」

「違う違うそうじゃなく……」

『違う違うそうじゃないそうじゃな〜いってか? あの歌は素晴らしい。だが妾はやはりお姉さんと歌っ……』

「本当に大丈夫だよ。毒なんて入っ……」

 安心させようと琴花の皿から1本手に取るエル。


『名曲じゃぞロンリーチ……』

「だからもうッ! 聞いてないし違うし、黙っててッ!」

 横からチャチャを入れてくるウリエルに怒鳴ったつもりなのだが、エルにはウリエルが見えない。

 必然的に琴花がエルに怒鳴ったという構図が出来上がる。ものすごく気まずい空気だけが流れる。


 心配して食事まで持ってきてくれた人に対する扱いではない。ゲスの極み、鬼畜の諸行。

 親の顔が見てみたいものだ。


「いや、ちょっと待って食べるからッ!」

 目の前で必死に両手をバタバタして、琴花はエルが持つ焼鳥を強奪する。


「だから……あのエルに言ったんじゃなくて……その〜えぇーと、あぁ美味しそうな焼鳥だぁ、わぁーいただきましゅ」

 焦っていて台詞が棒読みとなり、なおかつ焼鳥ではなく台詞を噛む琴花。大混乱時代の始まりだ。


『大根を両手に持って踊る妖精でも出てきそうじゃの』

 もちろんそんなものは登場しない。

 ジャンルは同じでも作品が全く違う。


「はぅあ」

 焼鳥をかじった琴花は思わず声を上げてしまった。

 口の中に広がるジューシーさに琴花は声を上げずにいられなかったのだ。


「これ……鶏肉じゃないよ」

 思わず2本目を手に取り、ムシャムシャモグモグする琴花。それを見てエルはにこやかに微笑んでから食べ始める。


「すっごく美味しいよエル」

「そう良かったわ」

『このオクジェイト村の名物 焼鳥じゃな。焼鳥といっても串に刺さっておるのは豚肉じゃがな』

 焼鳥は鶏肉を一口大に切ったものを串に刺して直火焼きをする料理である。


 だが今、琴花が食べているのは噛めば噛むほどジューシーな肉汁が溢れる豚肉だった。

 一部の地域では焼鳥を注文すると豚串が出てくることがあるので初めての人は「おいおい豚肉なんか頼んでねぇよ」と驚くことがある。


 ちなみに普通の焼鳥が食べたいときは鶏の焼鳥を下さいと言えば良いらしい。


「うふ、気に入ってもらえたようね。この村の名物なのよ。冒険者(ランカー)はこれをご利益として食べるのよ」

「ご利益?」

 焼鳥を食べてご利益だなんて発想、琴花の頭にはないので首を傾げた。


焼鳥食べたくなったなら、こちらの勝ちですね。

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