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コイン磨きの聖女様 牧師の娘とウリエルが歩む異世界  作者: 聖魔鶏カルテペンギン
第1章 オクジェイト大森林 探索編
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022枚目 投獄、その先にファイナルアンサー?

『窓を開けましょうルルル〜呼んでみまし……』

「はぁ〜」

 膝小僧を抱え込みながら琴花はため息をついた。

 とてもじゃないが歌を聞けるテンションではなかった。



『おいこら琴花よ。ため息なんぞついてると幸せが逃げるぞ』

「もうとっくの昔に逃げてるよ、にーげーまーしーた」

 異世界に飛ぶ前に琴花は好き合っていた男に振られて、なおかつ財布を落とすという最悪な出来事に遭遇している。

 その事を思い出してしまい、琴花は大きくため息をついた。

 琴花の両手首には手錠がかけられている。


 現在、琴花は薄暗い豆電球がついた小部屋にいた。

 外側からはしっかりと鍵をかけられて中からは開けられないようになっていた。

 広さでいうと八畳程度。

 ちなみにおトイレは完備されている親切設計。


『ヤケクソになる気持ちは分からないわけじゃないが。しっかし災難じゃの。森から脱出したと思ったら今度は豚箱行きとはのぅ〜』

「森に関してはウリエルにも責任があると思うんだけど……」

 手荷物やサーシャの槍は没収されている。

 もしステータス確認ができるシステムならば装備欄には服くらいしか表記されていないだろう。

 時間の確認をしたくてもできない。


「あ、そういえば今何時?」

『そうね〜だいたいね〜。日本で言うと20時は過ぎたようじゃぞ』

 失礼、時間の確認はできるようだ。


「20時かー、なんか時間聞いたらお腹すいたよ。ウリエル何か出してよ」

『無茶言うな琴花。妾は青狸でもないし、それにコインがなければ何もできぬ』

 オクジェイト大森林から無事に脱出した後、琴花達は食事の前にギルドに立ち寄っていた。

 冒険者(ランカー)は、依頼やクエストが終了したら真っ先にギルドに終了したことを伝えに行く義務がある。

 ギルドでの終了手続きなども理由としてあげられるが、大事なのは早く報告することによって少しでも早く依頼した人を安心させること。

 それが冒険者(ランカー)として大切な事である。


 だが実際大事なのは素材を換金したり、成功報酬がもらえないとおマンマにありつけないということだ。

 冒険家(ランカー)の大半は貧乏だ。

 それはエル達にも当てはまる。

「報酬がもらえたら美味しいご飯が待ってるわよ〜」とエルが笑顔で言っていたのが、ほんの数分前の出来事だった。

 だから何も食べていない。

 何も食べていないのだ。

 お腹と背中がくっつきそうなのだ。


「まさか、その数分後に投獄されるとは夢にも思わなかったよ」

『事実は小説よりも奇なりじゃな』

告白が玉砕したり異世界に飛ばされたりと、まさに事実は小説よりも奇なりだ。

「あんな見知らぬ森の中で兎の魔物を滅多刺しにして踏みつけた人間に、いきなり胸ぐらを掴まれたら普通に抵抗するよね」

『うむ、まぁ怖いわな。』

 琴花達が話している人物とは、琴花が森の中で一番最初に兎の魔物に襲われた時に颯爽と現れたロン毛の冒険者(ランカー)のことだ。

 森に入るのをすごく嫌がっていて、琴花が村の子供じゃないと分かると胸ぐらを掴んできた乱暴者だ。

 あのままの状態でいたら琴花の首は締まり、酸欠になって気絶していたであろう。

 そうなる前に琴花はスプレーで相手を目潰ししたのだ。


「だって普通に考えて、あの状況で目潰ししなかったら、あたしどうなっていたか……」

 見知らぬ森で花を散らしていたかと考えるだけで琴花は寒気を感じた。

『大丈夫じゃろう、お主のその貧相なボデーには、誰も欲情せぬわ』

 そこをウリエルが容赦なく斬り捨てる。

 成人女性と比べると残念ながら貧相なボディー。

 巨乳じゃないからという理由で男に振られた琴花にとっては傷口に塩を塗りたくる行為だ。


「何よッ! 自分だって貧相じゃんかッ! 人の事言う前に自分の身体を鏡で見たらどうなのよ」

『な、なぬッ! 妾は今が成長期なんじゃッ! 人が心配しておるというのにその言い草は何じゃい。歯を食いしばれぇい。修せ……』

 琴花は眼鏡を装着した。


 ウリエルの姿もギャンギャンと吠える声も認識できなくなる。だが、こんな薄暗いところに1人は寂しい。

 先程までウリエルがいて賑やかだったので余計にそう感じてしまう。

 なので琴花は再度眼鏡を外した。



 するとウリエルがぶすーっとした顔で

『ナヴァナ=ノサト、あぁ見えて貴族の三男坊らしいぞ』と付け足す。


「ナヴァナ=ノサト……」

 琴花はボソっと呟く。どこかで聞いたような名前だが、もちろん思い出せるわけもなくすぐに考えるのを止めた。

 何はともあれ、こんな薄暗い所に放り込まれて、ご馳走にありつけないのはナヴァナ=ノサトのせいである。

 あいつさえ、ギルドに苦情を言わなければ……。

 あいつが森で琴花の胸ぐらを掴まなければ……。

あいつと出会わなければ……。



「でもあれで貴族なんだよね? どう見ても野盗にしか見えなかったけど……」

 貴族というのは、もっと優雅なものではなかろうか。兎型の魔物を踏みつけたりザクザクと突き刺したりと、とてもではないが優雅という言葉から程遠い。

 とにかくいい案が浮かびそうにない。

 琴花は身体を横にした。

 少しでもエネルギーの消費を抑えるために寝るしかないのだが、飽食の世界で生きてきた琴花にとって空腹は睡眠の最大の敵であった。

 ようはお腹が減って何もやる気が起きない。


『初日にしては色々あったのぅ〜』

 ウリエルはふぁ〜っと大きな欠伸をする。

 コテンと横になったが、すぐ何かを思い出したかのように起き上がってガサガサとし始める。

 おもむろに茶碗とサイコロを3つほど取り出して、それを茶碗の中に転がして、何を思ったのか『うむ』と頷く。その一連の意味不明な行動と、なぜかひとつだけ色の違うサイコロに疑問を感じた琴花は身体をムクリと起こした。


「何してるの、ウリエル?」

 まさかこんな薄暗いところで裏カジノでも始めようって腹なのか。もしそうなら今度は琴花からウリエルに修正を加えるしかない。

 もちろんウリエルと琴花は次元が違うので触れ合うことも殴りあうことも乳繰り合うこともできない。

 それ以前に女神様を殴ったら不敬罪になるかもしれないが……。


『ん、何をって? 明日のコインの支給限度額を決めようとしておるのじゃ』

 ウリエルは自信満々な笑みでそう答えた。


「え? コイン?」

『うむ、明日は何枚を支給するかを占っておるわけじゃ』

「毎日コインが7枚もらえるんじゃないの?」

『当たり前じゃ、毎日決まった枚数をもらっていては面白みがないじゃろうに』

「えぇ〜そこはケチケチしないでくれてもいいし、あたしは面白さとか求めてないし」

 今の琴花に必要なのは面白さではない。

 確実性である。

 コインがどれだけもらえるかという確実性のみ重視している。コインの力は先のハクトウパン戦で証明されている。それは危機的状況を覆す力。


『まさかと思うが忘れておらんじゃろうな。森に捨ててきた2枚のコインを……』

 ウリエルがギロリと琴花を睨む。

 サーシャを探索するために、2枚のコインを後回しにした事をまだ根に持っているようだ。


 全く器の小さな女神様である。

 それにあれは捨てたのではなく、兎型の魔物に投げたのだ。でも結局回収していないので捨てたと同意なのかもしれない。

「そういえばあの兎の魔物にも名前や……種族スキルがあるの?」

『あぁあいつは、セキネィじゃな。スキルは一閃じゃ』

「なんか、人の名前みたいな魔物なんだね」

『大昔にラビットと名乗る人がいて、それが名前の由来らしいぞ』

「そうなんだ、まぁよく分からないけど。あ、分からないと言えばさウリエル、どうせここから出られないしさ、この世界について教えてよ」

 当面帰れる保証がない。

 今はこの世界で生きていくための自衛手段を学ばなくてはならない。








『ふむ分かった。しかと聞くが良いぞ琴花よ』

 数十秒くらい間を貯めてからウリエルはそう言った。

 その貯め方はクイズミリオ◯アで正解か間違いかをすぐに言わないベテラン司会者を彷彿させた。




『では説め……む、待て琴花。どうやら誰か近付いてくるようじゃ』

「え?」

その直後、カチャンとドアのほうから音が聞こえた。

窓を開けましょう〜ルルル。

昔は日曜日と火曜日、週二回も磯野さんやっていたんだべ。

これ知ってる人、三十路は確定(・・;)

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