第99話 岩の操作
水の操作の発動をし続けていたので、行動値が回復していなかったので少し待って行動値を全快させる。よし、全快したし準備完了!
「それじゃ改めて『岩の操作』行くぜ!」
「今後こそ、わくわく!」
<行動値を20消費して『岩の操作Lv1』を発動します> 行動値 5/25(上限値使用3)
よし発動した。支配の指定方法は水の操作と大差なしか。具体的な基準がよく分からないけど、ある程度以上の大きさの物しか指定が出来ないな? 大体、人が抱えられそうな大きさくらいが下限か。上限は……よく分からん。ここらにある大きめの岩は全部操作は出来そうだ。よし、サヤが持ち上げれそうなぎりぎりくらいの大きさで、転がりそうにない形の岩を選ぶか。
「お、お、おぉ!」
「岩が浮いたね」
「これだけでヨッシやハーレは潰されそうだよね?」
「あー確かに」
「ケイさん、やらないでよ?」
「そんな事やらないぞ!?」
心配しなくても自発的にそんな事をする予定はない! 事故ならあるかもしれないけど……。
やっぱり岩の操作はLv1だからかなり集中力がいるし、操作の速度も遅い。何よりこれは水の操作より扱いが難しい。流石は応用スキルという訳か。もしかしたらステータスの器用辺りが影響している可能性も……。だがそれでも、ゆっくりとだけどほんの少しだけど確実に岩が浮いた。よし、これならLvを上げれば切り札になるかもしれない!
「ねぇ、これって上に乗っても大丈夫なのかな?」
「どうだろうな? 水の操作の感じからすれば不可能って事もなさそうな気はするけど」
「よし、乗ってみよう!」
「ハーレさん、待った! 流石にLv1じゃ厳しいって……」
今のLvだとなんとかぎりぎり浮かせるので精一杯だ。せめてLv3くらいまでは待ってほしい。そういや水の操作はLv3で行動値の消費量の減少と操作数の増加があったけど、岩の操作はどうなんだろうか? 上げてみないと分からないか。
「とりあえずこれなら誰かを轢く心配はなさそうかな?」
「転がりそうにない岩を選んでるからな」
「でも転がすのって、操作が出来るなら凶悪そうだよね」
「確かにそうだね! 縦横無尽に大質量の岩を自由に転がせれたら驚異だね!」
「浮かばせる事ばっか考えてたけど、それもありか」
岩を転がしながら、邪魔な敵を轢き殺して行くというのもありだな。成長体の黒の暴走種にどこまで通用するかはやってみないと分からないけど。でもいつかの転がり騒動の時はサヤとアルの2人がかりでやっと止められたんだしな。あ、でもあの時は2人とも幼生体か。
まぁとにかく岩の操作から取得出来ると思われる魔法に向けて操作系スキルのLv上げは有用だろう。魔法は結構操作系スキルのLvに依存する要素もあるしな。
とりあえずこの調子で鍛えていこう。ただ、これ思った以上に時間がかかりそうだ。そろそろ操作の時間切れだし、1回操作を切って行動値の回復でもしようかな。そのまま動かすだけってのも味気ないし、なんか捗る手段はないものか。
「なんか岩の操作で、他の操作系のスキルみたいに楽しみながら出来るようなことないか?」
「そっか。岩が相手だと流石に今まで通りとはいかないもんね」
「岩の操作で特訓ね。なかなか難しそうな問題だね」
「あっ……」
「わっ!? びっくりした!」
「考え事してたら操作時間切れになってた……」
「ダメージないとはいえ、衝撃はあるんだし気を付けてね」
「以後気を付けます! すみませんでしたー!」
とりあえず失敗したら謝る。これ重要! なんにしても効果時間には気を付けないと危ないな……。
さてと岩の操作も切れたし、行動値の回復を待とう。それにしても岩の操作の飽きない強化方法か。岩を積み重ねてみるとか……? 崩れると危ないか……。岩、岩、岩……。岩を使った出来そうなもの……。岩を材料に出来たもの……?
「あっ!」
「ケイ、何か思いついたのかな?」
「おう、ハーレさんの土の操作の特訓にもなりそうなのを思いついたぞ!」
「え? 私の土の操作も!? え、なになに!?」
よしよし、食いついてきたな。俺も土の操作を取得するつもりだけど、それはアルが来てからの予定だしな。ふふふ、これは父さんの趣味が関わってくるから必ず乗ってくるはず!
「ここに池を作るぞー!」
「……また突拍子の無いことを考えるね、ケイって」
「おっ、こっちでも作るんだ! 良いね、それ!」
「……そういやハーレの家って庭に小さな池があったよね」
「あれは父さんの趣味でな。何年か前に家族総出で作ったんだよ」
「そうそう! あれ、結構楽しかったー!」
「ちょっとそれ見てみたかったかな……」
「後でサヤには写真を送ってあげるね!」
ちなみに我が家の庭のその池の中では今は金魚が優雅に泳いでいる。流石にコイとかは無理。貧乏って訳でもないけど、相当裕福って訳でもないからな。まぁ池を作る材料なんてまともに揃ってる訳じゃないけど、穴を掘って、岩と土を固めて、川の水でも流し込めばそれっぽい物は出来るだろ。
「ケイさん! それで行こう!」
「まぁ特訓にはなりそうなのかな?」
「ぶっちゃけ、単なる土木作業だけどな。黙々と岩や土を動かすだけより、なんか目的あった方が楽しいじゃん」
「確かに、ケイさんの言う通りだね。……ねぇサヤ、私たちも特訓しない? 毒の操作も鍛えたいし」
「味方には毒は効かないんだったよね?」
「うん、だから感覚的にはケイさんの水の操作と同じ感じになると思う。毒々しい色合いしてるけど」
「それならいいよ。みんな魔法が増えてるし、私は物理攻撃を鍛えようかな」
それぞれのとりあえずの特訓の方向性が決まった。俺が岩の操作、ハーレさんが土の操作を鍛える為に池作り。そして、サヤとヨッシさんが今まで通りの対戦式の熟練度上げ。まぁすぐには完成しないだろうから、じっくりとやっていこう。とりあえずはアルがログインするまではそういう方向性で決定だ!
という事で作業を開始していこう。池を作る場所は、崖下のところにでもするか。あの辺の岩をいくらか移動させて、穴を掘って、周りを移動させた岩で囲んでやってみよう。排水路とかはないけど、そこら辺は水分吸収でも使って手動でやれば良い話。
色々考えてたらそのうち滝でも作ってみたい気分になってきたな。『水流の操作』があるような気もしてるし、滝があってもいいと思うんだよね。まだ取得は出来ないだろうけど。
「よし、俺が邪魔な岩を操作で持ち上げていくから、ハーレさんは取り出しやすいように周りの土を退けていってくれ」
「分かったよ!」
<行動値を20消費して『岩の操作Lv1』を発動します> 行動値 5/25(上限値使用3)
話している間に回復していた行動値を使って、一番手前にある岩の除去から始めよう。まずは明らかに邪魔になる岩をどうにかして、どの範囲を池にするか決めないと。その後に土を掘り下げて行きながら、出てきた岩も退けていく。加工手段がないから大雑把なものになるけど、まぁゲームだしね。
後はどこまで自由に出来るかというのも試してみたいという気持ちもある。ヒノノコの魔法の火で焼かれた木はあっという間に復活したけども、手動で地形を弄ったらどうなるのやら。あの盛大に転がした岩がまだ近くに残っているので、魔法を使わなければ残る可能性もあるんだよな。
「まずそこの手前の半分埋まってる岩からな」
「この岩かなー!?」
「おう、それ! そこから崖の方まで、邪魔そうな岩を撤去していくぞ」
「岩は何処に置いとくの? 後で使うんだよね?」
「あー崖上にでも置いとければ一番邪魔にならないんだけどな。まぁ適当にその辺に置いとくよ」
「そっか! Lvが上がってから運ぶって事だね」
「まぁそうなるな」
目的はあくまでも岩の操作のLv上げ。池作りは熟練度稼ぎの退屈さを紛らわす為の手段の1つに過ぎない。まぁ上手いこと池が出来ればラッキーで、ゲーム的に地形が元に戻るならそれも良しだろう。流石にゲームで池作りなんて誰もやってないだろうしね。
「よし、ハーレさん、土の操作を頼む」
「分かった! 『土の操作』!」
ハーレさんが土の操作で岩周りの邪魔な土を退けていく。まだ土の操作もLvが低いのか、ちょっと時間はかかっているけどそれを鍛えるのが目的だしな。それで目に見えて早くなってはいる。操作の感覚に慣れてきたか?
「これは時間掛かりそうだねー!」
「まぁ最悪完成しなくても問題はないけどな。のんびりやろうぜ、のんびりと」
「えー! 折角だしちゃんと完成させようよ! 池を作って泳ぎたい!」
「ハーレ、それじゃ池じゃなくてプールじゃないかな?」
「えー、ならお湯にして浸かる?」
「それはお風呂だね」
「そもそもお湯が用意出来ないぞ……」
池を作ると言い出したのは俺だけど、我が妹ながら自由人だな。まぁやる気があるのは良い事だ。アルと合流する前まではどうせ暇だしな。鍛えるのなら今のうち!
そうやってしばらく穴掘りというか、岩の撤去というか、土木作業っぽい何かをやっていく。これは目的意識がないとほんと単なる退屈な作業だな。にしても岩の操作はLvが上がらない……。流石は応用スキルという事か。……単純に毎回行動値の回復待ちをしなきゃいけないから効率が悪いだけなんだろうけど。
「あっ! ケイさん、晩御飯だって!」
「ん? 早くないか?」
「お母さんが待ちきれないみたい!」
「あー、ヨッシさんが送ってくれたカニだもんな」
「あはは、家族みんなで味わって食べてね」
「って事は、ケイたちも今日はこの時間なんだね」
「まぁそうなるな」
今はまだ6時。母さんが先に晴香の方に声をかけたのだろう。多分、間を置かずに俺にも声がかかるはず。いつもより早い時間だけど1回ログアウトしますかね。折角のカニだし、たらふく食うぞ!
「って事で、一旦解散! あとは予定通りに9時にここに集合!」
「カニだ、カニだー! その後はアルさんの進化だー!」
「アルはどんな風に進化するのかな?」
「『根脚拠点蜜柑』だったっけ? 確かに気になるよね」
それぞれが気になっている事を口にしながら一旦の解散となり、みんなログアウトしていく。今日の本番はここから後だからな!
◇ ◇ ◇
そしてログイン画面のいったんの所へとやってくる。胴体部分では『腹減ったけど、晩飯の買い出しのヤツまだかな……』とか書いてある。おい、ゲーム全く関係ないじゃねぇか!? 思考駄々漏れかよ、運営の人!?
「なぁ、いったん……」
「あー、気にしないであげてほしいかな〜? 急病で休んだ運営の人の代わりに休日出勤になっちゃってる人なんだ……」
「あ、そうなのか……」
それは果たしてプレイヤーに開示していい情報なのだろうか……? うん、気にしないでおこう。その方が色々と良いような気がする。
「それじゃ、1回休憩してくるわ」
「おつかれさま〜。また来てね〜」
そして現実へと戻ってくる。さてと、カニもだけど晴香の週末のゲーム没収の件も片付けないといけないからな。って、晴香がまた俺の部屋までやってきてるし……。勝手に入るなと言ってるのにな。
「兄貴、早く早く!」
「あーもう、そんなに慌てんな」
食い意地の張った晴香もカニが待ちきれない様子である。誰に似たのやら……ってこの辺は確実に母さんだな。まぁ折角の頂き物だ、ありがたく食べさせてもらおう。ヨッシさんに感謝!




