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アバンダンド(見捨てられた学校で)  作者: 一天草莽


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28/41

28 ここは学校ですよ?(1)

 校長室にて、早朝の運営会議が開かれていた。

 いつものように集まったメンバーに対して、学帽を取って頭を下げるリーダー。


「運営会議のためとはいえ、こんな早朝から集まってもらってすまない」


「いえいえ、リーダー。それもこれも、この後に開かれる全校集会のためですから。みんなの前に出て行く前に、ここできちんと話し合っておかなければならないでしょう」


「……ふむ。リーダーと御手洗の二人は何か思いつめているようだが、それは生徒指導室に閉じ込めている佐波のことか? それとも、もっと大きな問題か?」


「それは……」


 三年の学年主任である末広の問いかけに答えられず、言い淀んだ御手洗。

 悩める彼に代わり、口を開くのはリーダーだ。


「ああ、遥かに大きな問題だ。まさしく死活問題と言っていい」


「その、先輩方。具体的に何があったのか聞いてもよろしいんですか?」


「そのために集まってもらっている。無論だ」


「……リーダーがそう言うのなら、聞きましょう」


 二年生の中津に続き、一年の高宮もうなずく。

 リーダーは各学年の主任である三人の様子を注視しながら説明する。


「先日、影ながら我々を支援してくれていた俺の祖父が政府によって捕らえられた。当然ながら、これからは祖父からの援助はなくなる。物資も、ライフラインも、情報も」


「なくなるって、そんな……」


「だが、少なくとも希望はある。確かに支援の規模は激減してしまうだろうが、まだ残っている一部の協力者が、物資についてはできる限りの援助をしてくれるそうだ」


「激減ってのは……?」


 主任の問いかけに対し、リーダーは答える。


「最悪の場合、今の十分の一になることは覚悟してくれ」


 校長室は重々しい空気に包まれた。





 体育館にて、全校生徒を集めての集会が開かれることになった。


「なわぁ、みんな集まっているみたいだね」


「そうか、綺羅富士も来たんだな」


 珍しいものを見るような顔で宗谷に言われた綺羅富士はふん、と鼻を鳴らす。


「邪魔なら帰るが?」


「そ、そんなことないよ! もう、宗谷の馬鹿は黙ってて!」


「わ、悪かったよ……」


 その近くで、リオが不安そうに髪をいじっていた。


「でも何かしら、こんな時期に全校集会って? もしかして、佐波のことについて何か決定したのかしら?」


「どうだろうな? こうして全員を集めて体育館で演説をするからには、何か重大なことがあるんだろう。最悪、あえてオレたちはカス呼ばわりされるかもしれないぜ」


 朽木の冗談に千藤が首を振る。


「それはないだろう。そんなくだらない理由でリーダーが出てくるとは思えない」


「じゃあ、なんだろうね? 早く始まらないかなぁ……」


 体育館の扉が開き、運営委員のメンバーが入ってくる。

 ステージに上がって、全校生徒を冷静に見渡す御手洗。

 マイクはなく、大きな声で伝える。


「いいか、みんな、聞いてくれ。思うことはあるだろうが、どうか黙って聞いてくれ。先日、リーダーの祖父が軍に連行された。彼に協力的だった一部の関係者も同様らしい。したがって、俺たちのもとに届けられる物資は間違いなく少なくなる。ライフラインも止まる可能性がある。最悪、ここが完全に孤立してしまうこともありえる」


「ええっ!」


 誰ともなく、ほとんどすべての生徒に動揺が広がった。


「落ち着いてくれ……というのも、ことが重大であるだけに無理な話かもしれない。だが、ここで焦っても仕方がないことだけはわかってくれ。みんなで協力して立ち向かうしかないだろ? な?」


「リ、リーダー! 本当なんですか!」


「そうですよ、リーダー! どうなるんですか!」


 生徒たちの声を受けて、御手洗がリーダーに顔を向ける。


「リーダー、お呼びみたいですが、どうされます?」


「答えよう」


「わかりました」


 御手洗は下がり、リーダーが壇上に立つ。


「まずは静かにしてもらおうか」


 ざわついていた生徒たちを黙らせるように、ゆっくりと見渡すリーダー。

 話を聞きたがっている彼らは口を閉ざしてリーダーの言葉を待つ。


「御手洗の説明だが、これは事実だ。俺たちは外部からの支援の大部分を失うこととなった。こういう場合に備えて備蓄されていた分も、おそらく月末には尽きる。今後はすべてにおいて窮するだろう」


 整列など無視して、ステージのすぐ前まで来た綺羅富士が壇上のリーダーに向かって声を投げかける。


「どうするつもりだ?」


「ああ、まさにその質問を待っていた。俺からの答えは用意してある。最大の問題は食料だが、今後は一人分を、現状の三分の一以下にまで減らす。少ない資源を過不足なく平等に分けるためには仕方のないことだとわかってくれるな?」


「そ、そんな……!」


「無論、食事を減らされれば誰だって文句があるだろう。だが供給量が減ってしまう以上、消費する量を減らすしかない。広大な土地があるわけでもなく、フェンスに囲まれているこの場所では自給自足することも難しいからな」


「そうですが……」


「この状況下において、一番の懸念は無秩序になることだ。物資が限られてしまった以上、規律は今まで以上に厳格なものとして必要となってくる。でなければ崩壊する。したがってお前たちには今後、いっそうの規律と秩序だった行動を求める」


「規律って……」


「もちろん、俺たちも厳しく取り締まっていく所存だ。全員の命に関わるからには、些細なことにも容赦しない。そのことを肝に銘じてくれ」


 そして、混乱が収まらぬまま全校集会は終了するのだった。





 集会後の教室。

 ものものしい雰囲気でリーダーたちが教室に入ってくる。


「全員、おとなしく自分の席に着け。授業を開始する」


 淡々と指示を出してリーダーは教壇に立った。

 だが、たった一人、この指示に従わない生徒がいた。

 挑発的な態度を見せる綺羅富士だ。


「よお、リーダー。あんな集会の後で、よく授業をするつもりになれるな」


「それが当初からの決定事項だからな。不可能になるまでは続ける」


「馬鹿馬鹿しい。それこそ道化だ」


「こちらとしては道化のつもりはないが、結果として道化になっているのなら素直にその指摘を受け入れるさ。笑いたければ笑えばいい」


「ふん、つまらぬ演劇で笑いたくもない。リーダー。俺は寮に帰らせてもらうぞ」


「勝手にしろ」


「もし今その逆のことを言われていたとしても、勝手にさせてもらうつもりだったさ。もし俺を止めたかったら、お前の大好きな規則を用意しておくんだな」


 捨て台詞を残して教室を出て行く綺羅富士。

 引き留めることもせず、学帽を深くかぶり直したリーダーは教室を見渡す。


「他の人間は?」


「僕らは続けるよ、リーダー。続けていくべきだよね?」


「……無論だ」


 そして、この日もいつものように授業が始まった。

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