とばっちりを受けました
王太子が公爵令嬢に婚約破棄するのを他人事で見ていたら後日まさかの……
「ミリアム・ハウネスト!貴様との婚約は破棄する!」
「ピョッ」
私とお父さま、お母さまは、コーネリアたちと一緒に卒業パーティーの会場に向かった。
泣きぼくろのセクシーなお兄さんは、騎士総団長である王弟マロガス・ソルリディアのご子息で、名前をドルリチェというらしい。
ずっと他国に留学していたそうだ。
どうりで今まで見かけた事がないわけだ。
2人並んだドルリチェとコーネリアは優しく微笑み合い、柔らかな雰囲気が素敵だった。
私とコーネリアはのほほんと会話を楽しんでいたが、コーネリアがふと私のドレスに目を向けると言葉が消えた……。
「そのドレスは第二王子殿下から贈られたのかしら?」
「はい……」
「……奥深い色合いのドレスね……」
コーネリアは微笑んで、閉じた扇子を右頬に当てる。
"センスひどくね!?"
「……ありがとうございます……」
私は左手で扇子を半分開いて口元を隠し、ゆっくり微笑んだ。
" ですよね!"
なんてやりながら、会場に着いた途端の冒頭のエランシオ婚約破棄宣言であった。
お父さまは、いきなりの婚約破棄宣言にピョッて言った……。
エランシオはピョのお父さまを尻目に、私のドレス姿に目をやるとニヤニヤと底意地の悪い笑みを浮かべる。
「貴様は今日の婚約破棄を察してそんな存在を消すようなドレスで来たのか?」
エランシオの取り巻き三人がクスクスと馬鹿にしたように笑った。
私は左手首のスナップをきかせて下から上に扇子をバサリとはらうとにこやかに笑んだ。
「エランシオ様に贈られたこのドレスは、着心地は!素晴らしいですわ」
" 不快〜"
自分でこんな地味色ドレスを贈ったくせに人前で貶すのかと周りがざわりとする。
女性達は " 不快〜"、"不快〜"とバサリバサリと扇子を振るのでエランシオの地味髪がフワリと揺れた。
普段は自分に従い反抗しない私が、皆の前でエランシオがこんな地味色ドレスを贈ったとばらすとは思わなかったのだろう。
憎々しげに私を睨んだが、女性達の"不快〜"扇子コールに分の悪さを悟り、咳払いして仕切り直した。
「もう一度言おう!貴様との婚約は破棄する!王太子になる私に貴様は釣り合わない!私の隣は公爵令嬢コーネリア・レシャールカ嬢こそがふさわしい!」
初めて見る生き生きとした表情の、鼻穴を膨らませた自称王太子エランシオから、再度、婚約破棄を告げられた。
あれ?卒業式で王太子の婚約破棄を他人事で見てたのに、まさかのとばっちりを受ける感じ……?
私は婚約破棄を突きつけるエランシオを前にじわじわと体が震え始めた。
隣にいるお父さまとお母さまも同じように体が震えていた。
ウェルカム!婚約破棄!
とばっちり婚約破棄ウェルカムだぁ!
私もお父さまもお母さまも、喜びで体の震えが止まらない。
ちらと3人で目を合わせる。
家訓を胸に、この川の流れに乗って力いっぱい泳ぐべし!
小さく頷き合う。
私は悲しげな表情を作りエランシオを見つめる。
「エランシオ様……いえ、第二王子殿下、謹んで婚約破棄を承ります」
イエス!喜んで!!
心憎い配慮ができるエランシオは、あとは私がサインするだけの婚約破棄の書類と、何と文官も連れて来ていた。
グッジョブです!
さあさあ早く、婚約破棄の書類カモン!
私はすぐさま書類にサインする。
脇からエランシオが書類をむしり取ると文官に渡した。
文官は受理の印を押す。
速やかで良き良き!
「ここに第二王子エランシオ・ソルリディアと伯爵令嬢ミリアム・ハウネストの婚約は正式に破棄されたことを証明する。なお、いかなる者もこの婚約破棄は覆す事はできない」
文官は高々と宣言した。
ハラショー!
私は心の中でスタンディング・オベーションした!
いいね、ブックマーク、評価をありがとうございます。
やっと題名の事がおこってくれました。
私がこの作品で初めにイメージしたのがこの場面だったので感慨深いです。





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