*従姉襲来・転
少しだけ様変わりした住宅街を歩く。
「うんうん、昴も色気づいちゃってまぁ……何々、一体どういう心境の変化? 好きな子でも出来た?」
「色々あったんだ。それを言えば真白、そっちも色気づいてるぞ」
「そうそう、昴を驚かせようと思って買ったんだけどなぁ。でも褒めれくれたから良しとしよう。お姉さん的にも嬉しいぞう?」
「まったく、真白は……」
先ほど感じた動揺を振り払うかのように、また久しぶりに再会した嬉しさもあって、積極的に話しかける。
些細な話でも楽しく感じる。それは真白にとって昴だからこそでもあり、次第にいつもの調子を取り戻していく。そんな変わらない関係性を噛みしめる。
「そういや平折ちゃんは? 元気にしてる?」
「平折か……」
倉井平折。6年前、突如として出来た義理の従妹。
彼女のことは、この3年の間に気にしていたことの1つでもあった。
昴と同じく笑えない女の子。初めて出会ったときは、昴によく似ていると思ったものだ。
そして、昴が積極的に彼女と仲良くなろうとしていたことも覚えている。相談だって何度も乗った。だけど、結果は没交渉のまま。
この半年は受験で自分のことで精いっぱいだったけど、ちょくちょく昴に電話をしては聞いていた。
真白は平折に対して、それほど良い印象を持っていない。
女子校でうっかり頂点を取ってしまうほどコミュニケーション能力に優れる真白をして、手ごわい相手、心を閉ざしている相手だったからだ。
「変わったよ、凄く変わった。俺が変わろうと思ったくらいに」
「へぇ、そうなんだ」
だから昴に変わったと言われても、いまいちピンとこない。
大方変わったと言ったところで、自分の殻に引きこもるのを止めたとか、その程度のことだろう。
物理的にも距離が離れていて、頻繁に会えない自分と違い、昴を託すには不安しかない相手――それが真白からみた平折の評価であった。
むしろ真白は、ようやく殻からでたか! 手間を掛けさせて! と憤りすら感じている。顔を合わせたら文句の1つでも言ってやろう、そんな決意をする。
だから一瞬、出迎えてくれた相手が誰だか理解できなかった。
「お久しぶりですね、真白さん」
「この人が昴のお従姉さん? あ、初めまして。有瀬陽乃と言います……もしかして知っていてくれると嬉しいでーす」
どう見ても女子中高生に大人気モデルであり、訳ありの姉と一緒に復帰した有瀬陽乃と、その姉ひおりだった。
「な、な、何でひおりと有瀬陽乃がここに居るのっ?!」
思わず叫んでしまうのも無理はない。
真白の女子校でもひおりと陽乃の姉妹の写真集は、受験の真っ只中にも関わらず連日噂に上っていたし、どうして従弟の家に行ったらその2人が出迎えてくれるのか理解できない。真白自身も、出来る事ならサインが欲しいくらいだ。
どうして彼女達がいると教えてくれなかったのかと、説明もちゃんとしれくれと言わんばかりに、涙目で昴をねめつける。
「だから言っただろう、平折は変わったって」
「変わり過ぎよ?! どういうこと?! え、うそ、ひおりと有瀬陽乃って……」
「腹違いってやつだな」
「何で昴の家にいるの?!」
「そりゃ平折は妹――いや、家族だからな。平折の異母妹も同じ家族だろうっていう理屈で、ちょくちょくうちに遊びに来ているぞ」
「うそでしょおおおおおーーーーっ!!」
そんな真白の叫び声が、倉井家の玄関で響き渡るのであった。
次回は夜に投稿します。












