流した涙の分だけ愛してた。
目を覚めると着物に自分の部屋。
押し花にしようとしていた花弁と
しっかり手に握りしめている桜の花。
私……、戻って来たの?
幕末から戻って来たの?
少し考えが纏まらないまま急な出来事に私はぽろぽろと気付いたら涙が止まらなかった。
確かに私は幕末にいた。夢じゃない!
愛しい人と別れの言葉も交わせず
あんなに幸せな日々を過ごしたなんて
あぁ……トシさん!トシさん!私は逢いたくて触れたくて離れたくなくって……。
愛されていた。
どんなに涙を流しても、もう抱き締めてくれる事も
私をからかって笑ったり
温もりを感じながら一緒に眠ったり
甘くて切ない言葉を私に言ってくれたり
何処に行けばトシさんに逢えるの?
こんな酷な別れって……。
どんなに想っても、もう逢えない……。
泣き疲れて私は眠ってしまった。
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「ま……愛美!」
凄くまぶしい光に包まれ光と愛美が消えてしまった。
「どうしてなんだ?何も言ってないまま消えるんだ!」
一瞬にして愛しい人が目の前で消えた。
俺はきっと夢じゃないけど愛美と幸せな日々を過ごした事も
笑ったりからかったり
小さな手を握りながら温もりを感じた日も
一瞬にして失ってしまうのか?
こんなに愛してたなんて……。
もう触れる事も出来なくて
少し照れるけど俺の気持ちも伝えられなくて
どうしてなんだ?
生涯、愛した女は愛美だけ
もう2度とこんなに人を愛する事もないだろう
もう2度と……。
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私は眠ってどのぐらい経ったのかも
何もかもどうでも良かった。
ただ、スマホに撮った二人の笑顔は消えていなかった事も知らなかった。
日付も変わらずタイムスリップした日にちだった。
朝をベッドで久し振りに迎えた。
考える事もなく、仕事の準備をして
そして今日も変わらず何時もの日が始まる。
ただ夢に行ってきただけ。
自分に言い聞かせ泣き腫れた目を見て
「ふっ(笑)これじゃあトシさんに見せれないやん」
自然に出てくる愛しい人の名前。
いつか本当に生まれ変わって私を見付けてくれる、絶対に見付けてくれると信じてるから。
また逢えた時には
飛びきりの笑顔で
今度は私から……。




