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Endless Sphere Online  作者: てんぞー
二章 帝国-血戦編
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六十四話 帝国の明日

 服装はかなり変わった。


 まず下は黒のスラックスで、それに合わせるように上は黒いドレスシャツ、赤いネクタイはドレスシャツと共に軽く着崩してある。赤いアンダーフレームの眼鏡にグレーのロングコート姿、ほぼ完全に白髪となってしまった髪は完全に伸びきったのか長くなっており、切っても勝手に生え直してくる為、根元ではなく先の方で二房に分けるように紙紐で縛ってある。こんな風に、服装はかなり変わってしまった、というのも理由はシンプルだ。


 汚い。


 臭い。


 ぼろぼろ。


 皇帝という最強クラスの化け物を相手にした結果、なんとか生きてはいるが、それでも服装や装備品は無事ではなかった。当たり前の様にボロボロになってしまったし、新しい着替えが必要になってくる。それ以外にも、割と困ったことに有名になってしまった、という事実もある。掲示板、噂、そして実際に戦場にいた者。そういう人たちが戦いや、参加者を目撃してしまっている。そういう意味でがらりと服装を、イメージを変える必要があったのだ。眼鏡だってもちろん伊達眼鏡で、度が入っていない。ここまで来るともはや完全に別人の様に見えるのは―――間違いなくカルマの侵食で、見た目にも影響が出てきているからだろう。


 ともあれ、そんな風に服装ががらりと変わった中で何をやっているのかというと―――。



                  ◆



「―――ねーねー、見て見て! 大道芸よ大道芸!」


 絡める腕を横を歩く姿に引っ張られる。彼女の服装は新品に青のツーピースドレス―――元々着させられていたものだが、体にフィットするように作られている上に性能が高く、修復して利用しているものだ。スカートの下から伸びる尻尾を揺らし、頭の上の耳を動かし、道路脇で人を集めながら大道芸を披露している人混みの中へと引っ張られる。長く伸びる獅子の鬣を思わせる様な金髪や、十五歳程の少女を思わせる体格にはもはや本来の姿の面影はないし、言葉をはきはきと快活に喋る彼女はまるで別人の様に見えるが、


 それでもそうやって腕をぐいぐい引っ張る彼女は、ニグレドだ。


「引っ張らなくても見えてるっての」


 苦笑しながらニグレドに引っ張られるように大道芸人の姿を確認する。人混みに隠れていて見難いので、軽く人混みをかき分けるように進み、そして再度確認する。冒険者風の男がナイフを使ってジャグリングし、その相方らしき人物が横からクレイモアを投げ込み、それをジャグリングのサイクルに追加する。それを見て驚いた声が漏れ、周囲から拍手が溢れる。それを聞いた相方が被っていた帽子を脱ぎ、お布施を求める様に差し出すと、周囲から小銭が投げ込まれてくる。


「同じサイズや重さの武器だったらジャグリングって楽だけど、重さが変わったりするのと結構難しいのよねー」


『ちなみに刃物ジャンルだからお姉さんなら余裕で出来るわよ』


 剣聖の技量をんなしょっぱい事に使うなよ。そんな事を思いながら小銭を投げ込み、大道芸を眺め続ける。クレイモア、ダガー、ロングソードとサイズも重量も違う武器をジャグリングして来ると、調子に乗ったギャラリーの一人がダガーを投げ込んでくるが、ジャグリングを行っている冒険者をそれを蹴り上げ、そして行っているジャグリングを継続させる。見事な技量に感嘆の声が漏れ、更に小銭が投げ込まれてくる。大量の金が投げ込まれている様に見えるが、投げ込まれるのが10や50単位なので、実際はそこまで多く稼いでいる訳ではない。依頼を受けてやった方が早いんじゃないか、なんて事を思ったりもするが、それを口にするのは野暮だろう。


「うーん、楽しそうね! 今度私も練習してみようかしら」


「……何のために?」


「……自慢?」


 誰にだよ。そんな事を考えながら大道芸人から離れ、帝都の街並みを再びニグレドと二人で再び歩き始める。二人というには付属品が自分の中には多すぎるのが事実ではあるが、それに関してはもはや慣れきってしまったことだからぐだぐだ言わず、ある程度頭の中から押し出した状態で過ごせば問題ない。ともあれ、疑似的にではあるが、デートの様な事をこうやってニグレドとやっている事には実には少しだけ、意味がある。


 目的は経過観察と労いだ。


 まず第一にニグレドの現在の肉体は帝国の最新技術と悪意を凝縮して生み出された完全な化け物スペックだ。プレイヤースキルに加え、”モンスター専用スキル”みたいなものまで習得し、利用できる、そういう状態に今はなっている。剣聖の超技量でキメラの精神干渉に関するものは全て斬り殺したはずだが、それでも自分の技量がまだまだカルマと比べて未熟である事に疑いはない。つまり、本当に切り裂けたかどうか、というのが全く分からないのだ。成功したにしてもニグレド本来の性格とは変わりすぎている為、経過観察と、何かがあった場合即座に切れる様に、こうやって自分がついているのだ。


 それとはまた別に、今回の件で一番苦しんだのは間違いなくニグレドだ。


 詳細は省くとして、実験中は”半分だけ意識がある”状態だったらしく、自分に何が行われていたのか、それを認識しつつ動けなかったらしい。そういう嫌な記憶を全部吹き飛ばす勢いで楽しい記憶を残そう、という話で持ち上がったのが―――デートだ。もはやこの娘、好意というものを隠さずに、あからさまに好きだ、愛しているだ、とか言って来るようになって来た。軽い恋愛経験ならあるのだが、ここまで激しいアピールは間違いなく初めてであり、若干困惑しているのも事実だが―――まぁ、悪い気はしない。


 そんな訳で、帝都の様子を観察しながら自由人二人で歩き回っている。


 空中城の落城、そして帝国が王国に敗北してから数日が経過している。その間に王国の治安維持部隊が素早く帝都を抑え、今でも駐留している。反発等がありそうな状況ではあるが、そんな事は一切なかった。現状、帝国の国民のほとんどがもろ手を挙げて王国による支配を喜んでいる、というのが状態だ。事実、王国が娯楽や生活に対する規制はほとんど行わない。麻薬等も暴走しない様に、そして出回りすぎないように程々にしか規制しない。今、こうやって街中を歩いて確認すれば王国の兵が治安維持に努めているのが解るが、その雰囲気は帝国兵の者と比べて遥かにやわらかい、というよりは親しみがあるのは事実だ。畏怖と恐怖で縛っていた帝政が終了したのだから当たり前かもしれない。


「しっかし、エドガーも大変だなぁ、これからは言論の自由を保障するから王国と比べたり、口を開けて批判する声が出てくるから、今まで以上に統治がめんどくさくなってくるぞ」


「んー……まぁ、でも貴族たちが利権を王国から守ろうと動くから、しばらくの間は協力してくれるだろうし、そこまでひどいって訳じゃないと思うわよー? だってだって、今は貴族としては王国が敵な訳よ? 財産やら利権やらを変革に持っていかれない様に耐えなきゃいけない時代よ? となると権力を持っている人間と協力し合わなきゃいけないのよ」


「あぁ、そうか。じゃあエドガーの事に関しては心配する必要もねぇな」


「そうよー」


 話をしながらそのまま、適当なオープンカフェを見つけ、向かい合う様に座る。メニューを確認し、ニグレドがサクサクと甘いものを頼み、その姿に苦笑する。ニグレドは前々から甘いものが好きだったからだ。そこらへんの趣向は変わらないんだな、と前から変わらない点に安堵を覚えつつ、頼みすぎない様にその姿を諌める。放っておくとそのままケーキやタルトを十個頼みそうな勢いだったからだ。だから適当に数を減らさせ、そして眼鏡の位置を調整し、そして息を吐く。


「ふぅー……疲れたな」


「そうだね、ウルもお疲れ様。苦労かけさせちゃって本当にごめんね! でも大丈夫、かけさせた苦労の分はしっか―――り、体で払うつもりだから! 勿論どっちの意味でもいいのよ! でもねでもね、ニグレドちゃん的にはしっぽりがっつりお近づきになりたいかなぁ、って思ってるの! だってだってほら、ウルってこう、奥手? というか全くアピールしてもそぶりを見せないじゃない! 誘惑しても乗ってこないならストレートに言うしかないわよね! 私、アニメや漫画の遠まわしに口にせずにアピールする残念系ヒロインとは違って、朴念仁は許せないから絶対解るように言うわよ!」


「うん、それは解ってるからテンション抑えよ、ね」


「えー」


 ピコピコと動かしている耳が実に愛らしい。まぁ、実際、異性なのだから、迫られると色々とマッハなのだが、それは置いておく。かなり肉食になっている彼女の姿を確認し、視線を外してウェイターが運んできた紅茶を受け取る。それに軽く口を付けつつ、一息つく。


「帝国の状況もかなり早い段階から落ち着きそうだな」


「そうねー。でもそういう話はつまらないからもっと建設的な話をしようよー」


「つっても俺、惚れたとかそういうのはそこまで得意じゃねーんだよ。それよりもこれから何をするかとか、そういうのを考えるのが楽しみだし」


「うーん、ウルは生粋の冒険家ね」


 まぁ、それはあるかもしれない。帝国では酷い事がいっぱいあったが、それでもまだ楽しかった。そう断言する事は出来る。悲しい事も、辛い事も、楽しかった事全部ひっくるめて”旅”なのだ。ここでの犠牲や殺した者の事を忘れてはいけない。それを全部記憶し、そして次の場所へと向かうのが旅人というものだ。


 チーズケーキが運ばれてくる。それを紅茶と合わせて食べ進める。


「近いうちに帝都を出ようと思ってる。まぁ、ダイゴの奴が復活したらだけど」


「どこへ行くかもう決めてるの?」


「おう―――聖国に行こうかと思ってる」


 王国、帝国、そしてそれに連なる三大国家の一つ、聖国。その内容は”宗教国家”になる。まだ人類が暗黒期を乗り越えようと毎日死にながら耐え凌いでいた時、”聖女”と呼ばれる女性が現れ、聖国の原型となった国々を救って回り、そして彼女が定めた法ともいえる教義を敷いたのだ。助け合う事、暴力の前に理解し合う事を、等その内容はいたってまともなものであり、”先進的”な考えなのだ。プレイヤー達の意見によるとこの聖女なる人物は運営が用意したGMかなんかのプレイヤーであり、その人物が聖国の原型を形成する為に、そしてバランス調整の為に生み出したのではないかと言われている。その証拠に、聖国の出没するモンスターは帝国や王国と比べると非常に殺意が足りないと評価できる。


 王国のモンスターは虐殺の末に環境への適応進化を覚えた。世代を経て少しずつ強化されて行き、違う地方の同じモンスターよりも遥かに凶悪な性能や特性を保有する様になった。そうやって環境に適応しながら人を殺す事を覚えた怪物の国だ―――それを完全に処理しきっている王国騎士団に関してはもはや言葉もない状況だが。


 帝国のモンスターは未曾有の繁殖という凶暴性を見せている。帝国は広く、そして果てしなく安全だ。なぜなら帝国がモンスターを寄せ付けない装置を生み出したため、要所におけるモンスターの間引きを必要としないからだ。それ故に帝国のモンスターは放置され気味であり、それを理由に数ばかりが増える。帝国でモンスターと戦う事はほぼ確実に群れと、集団と戦闘する事であり、物量の暴力を受けるという事でもあるのだ。


 それに比べ、聖国は本当に普通としか言いようがない。モンスターが環境適応して殺しに来る事や、常にトレイン状態で襲い掛かってくる事なんてなく、良くあるRPGの状態で生息している。だから戦うという事を覚えるのであれば、聖国がスタート地点としては最適であると最近は再評価されている。ちなみに王国は修羅の道、帝国はトレジャーハンター向け、と言われている。


 で、この聖国だが―――上層部は完全に腐敗しているという話なのだ。


 王ではなく教皇によって支配される聖国は、その上層部は利権などを求める者で溢れており、割とまともなのは末端の法の教会とかだったりするらしい。他にも元は小国の集まりだった故に、その子孫である王族等が領地を持ち、経営したりと、王国や帝国とは少々趣の違う環境になっている。その性質のせいで、聖国は帝国や王国よりも武力が少ない―――ならば何故帝国や王国に吸収されない? その疑問が残るだろう。


 答えは簡単だ。


 どこまで腐っているかが解らない。


 国を奪った場合、そのまま、腐敗した連中とその体制まで奪うという事になる。どの人間が何処まで腐っているかを把握する事はほぼ不可能であり、面倒な事に聖国を滅ぼせば難民として紛れ込んでくるし、奪えば腐っている連中を国に抱える事になる。処刑すればいい、という言葉は帝国であれば可能だが、王国には取れない手段だ。しっかりと人権についての法があるからだ。故に、聖国は”戦ったら負け”な国であり、偉い人間と関わらない限りは非常に普通のファンタジーが楽しめる環境となっている。


「ドルネシ湖、フュンガ山脈、黒き血の森、そして魔王城に邪龍の寝床。回ってみたい場所はいっぱいあるんだよなぁ、聖国」


「最近WIKI見てないけど、聖国ってどういう国なの?」


 そうだなぁ、と答えながらWIKIを表示させる。


「聖国の性質はもう知ってるからいいよな? 聖国は俺達から見ると北の方に位置するんだけど、未開領域に接しているのは聖国も一緒なんだ―――」


 未開領域、つまりは人の調査が入っていない地獄の環境。木々は勝手に動き、清流に見えるものは毒であり、ただの地面に言える場所は底なし沼だったり、環境そのものが狂っており、どうにかして浄化するか開発しない限りは人の手が入る事が出来ない、”暗黒領域”とも呼べる場所になっている。この聖国の領土内の未開領域に魔王城が存在すると言われ、現代最後の魔王が生きていると言われている。


『魔王は強かったわよ。お姉さんも本気で相手にしなきゃいけないぐらいには。まぁ、確実に一騎当千級の猛者を集めて殺しに行く事案ではあるのよね、出現したら』


 そしてまた、大昔に天変地異を起こし、封印された邪龍が眠るのも聖国だと言われている。聖国の北方に存在するフュンガ山脈を越えた先に”邪龍の寝床”という底の見えない谷が存在し、その奥底で封印された邪龍はずっと眠り続けているらしい。暗黒期当時の馬鹿気たインフレ環境であっても殺す事が出来ずに封印という処理を行っているのだから、どれだけ迷惑な存在なのかは語る必要さえもない。現代は戦いの規模も、頻度も昔と比べて遥かに縮小されている。その為、この時代に邪龍が目覚める様な事があれば、一切抵抗できずに聖国は滅ぶとまで言われている。検証の為に邪龍の寝床へと向かったプレイヤーも存在するが、


 邪龍を確かめる為に谷へと降りた所、即死したと言われている。


 そんな訳で聖国は全体的に平和だが厄ネタ持ち、というイメージが強い。あとはダンジョンも点在しており、やっぱり正統派ファンタジーは聖国が一番それっぽいらしい。


「後はそうだな、聖国のギルドのシステムが帝国や王国とは違う所だな」


「確か階級を付けてるんだっけ」


「おう、そうだな」


 帝国や王国に関しては掲示板に張りつけてある依頼を取るか、或いは個人で申し込んでいたものを引き受けるスタイルだが、聖国におけるギルドの依頼関係はギルドが仲介し、危険性やランク分けして処理されるという事にある。これは純粋に聖国という国が悪い。何せ、聖国に関しては環境や法律ではなく、”依頼人”が一番危険だからだ。村人等ならいいが、教会に関わってくる人間などになると、依頼の内容が少々危なくなったり、抱き込もうと画策したり、めんどくさい行動を始めるのだ。そういう事でギルドが依頼の裏取りを行い、処理できる人間にのみ依頼を渡すようにしている。帝国と王国に関してはそこらへん、完全に自己責任になっているのは、どう足掻いても”生きていれば鍛えられる”という凄まじい環境が用意されているからだ。


 王国や帝国で冒険者が出来るほどに生きているのであれば、問題なく依頼を達成できるだろうという意味だ。何せ、本当に生きてさえいれば強くなれる、という言葉が正しい国だからだ。


 というわけで、聖国では冒険者の格付けが行われており、これが一種のステータスともなっている。ランクは純粋にギルドからの信用と戦闘力の両方の面から審査され、強くて有名ならばすぐに高ランクから開始、というのもある―――何せギルド同士で情報の交換は行われているのだ、他の国や地域での依頼の達成報告なんてものは耳に届く。国を変えて新しくスタート、なんて虫の良い事は出来ない様になっている。


「王国と帝国の難易度がクレイジーだとすると、聖国での生存の難易度はノーマルなんだよなぁ」


「この国でも指折りの強さになった私達には楽しくピクニックが出来そうな場所ね」


 皇帝と張り合えた時点でほぼ人外に片足踏み出している事は確かだ。まぁ、結局は負けてしまったのだが、それでも皇帝との戦いはありえないほどの経験と修練になった。全てのステータス、そしてスキルがありえないほどのインフレを起こしているのだ。


 名前:フォウル

 ステータス

  筋力:71

  体力:72

  敏捷:74

  器用:78

  魔力:79

  幸運:69


 装備スキル

  【魔人:68】【創造者:68】【明鏡止水:69】【支配者:64】

  【血戦血闘:69】【高次詠唱術:65】【魔剣保持者:35】【侵食汚染:35】

  【斬殺の咎人:35】【業の目覚め:35】【死剣聖:42】【殺戮の聖者:41】

  【刻死斬葬:35】【英雄否定:30】【■■■コード:1】


 SP:98


 まぁ、これに関してはインフレしているのは自分だけではなく、あの最終決戦に参加していたメンバー全員に言える事だ。これだけ強くなるとソロで竜種や最上位のモンスターとも戦えるらしいが、それでも王国の三武神や国王とやり合うにはまだまだ不足、というレベルらしいので、正直この世界の化け物はホントインフレしているなぁ、と思ったりもする。まぁ、しばらくは修行はお預けだ。何せ、これ以上戦えば間違いなく魔剣の侵食を加速させてしまう。今は落ち着いているが、完全に容姿に関しては男か女かもわからないような、中性的な感じに落ち着いている。恐らくはここから、段々と夢の世界で修行を付けてくれるあの全盛期のカルマの姿へと近づいて行くのだろう。


「さて、どうしよっかなぁ、割と見て回るだけでも楽しみなんだよなぁー。元々強くなるのだって冒険の為だったし」


「ま、私はどこに行くんだってウルさえいればそれで満足任せるわ! あ、そう言えばクランを作らないかどうか、誘われてたけどどうするの? やっちゃうの?」


「あー……PL同士で相談できる組織、掲示板以外にもあった方がいいし、楽しいしな、クランは作成するつもりだよ。現状、誰を団長にするか、名前をどうするかとかで色々と話し合っている最中だけどね。レジスタンスに参加してた面子はほとんど参加予定、全員で聖国は逝く羽目になりそうだから、先に拠点を確保しなきゃ駄目かもなぁ……」


 個人的に拠点を確保するなら王国じゃないかと思っている。環境的に一番土地が高いのは確かだが、政治的に、そして治安的に一番安定しているのは王国だ。何よりも知り合いが多いし、そして楽しいと思う。幸い、お金なら今回の件で腐るほど入手した、というか口止め料と報奨として凄まじい金額を貰っているのだ、それをクランハウスの様な建造物を購入するのに使っても問題ないだろうと思う。


 王国というか、王都だったらリーザのコネも通じそうだし、色々と便利だ。それに個人的に王国という国の空気が一番会っている気がする。


「―――ま、聖国は比較的に落ち着いている国だし、色々とやる事はあるだろうけどそれでも帝国程忙しい事はまずありえないだろう」


「フラグ臭い」


「うるせぇ! 言ってて俺も自分で首を傾げたよ!」


 軽い会話をその後も楽しみ、ケーキや紅茶を食べながら短い休憩時間を過ごす。


 帝都には、帝国には平和は戻ってきていた。


 視線を貴族街の方へと向ければ、今も尚撤去されない、空中城の残骸が残っている。かつては帝国の脅威を見せていた不沈の城塞も、もはや見る影もなく、占領されてしまっている。その一役を自分達がになったのだ。それを自覚しつつ、息を吐く。


 ―――掲示板の噂によると、そろそろ運営からのイベントが来る、なんて話がある。


 それが楽しめるイベントならいいな、なんて事を思いながら、デートへと戻る。

 聖国という国と帝国の現状という感じのお話。あとニグレドちゃんがデレ率100%を突破しました。


 一目惚れにきっと理由はいらないけど、そればかりを利用していると陳腐なお話になるから気を付けたいところ。

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