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魔法の森学園乙女ゲーム狂騒譚  作者: 深月 涼
夏季長期休暇~メフィ先生の過去行~
38/47

未来並行線


それは別の未来を歩き始めた、200年前の主人公(リグレッド)―――になるはずだった少女の話。




 あの日、森の家が燃えてから長い時間が過ぎた。


 私たち一家は『先生やおねーちゃん、おにーちゃんたち』が消えた後、まず国の中央まで旅をする事になった。

 なんでもパパが『先生』から預かったお手紙を渡すご用が出来たんだって。

 それに燃えちゃったから、新しいお家も探さなきゃいけなくなっちゃったし。


 たどりついたそこには、たくさんの不思議な人たちがいて、その中にはパパみたいな人たちもたくさんいた。

 代表者には会う事が出来て『先生』の手紙も無事渡す事が出来たんだけど、それからずっとパパとママはその人たちと何か話しあっていたみたい。

 で、お話が終わってから、今度は北国へ旅する事になった。

 『森』は『今』……今からしてみればその当時は、って事になるんだろうけど、とにかくその時は危ないからダメなんだって追い出されちゃった。

 レンガ造りの綺麗な港町から、船に揺られて北の国へ。


 行った先の北の国でも、不思議な人たちとたくさん出会った。

 雪の女王様とか、白くて大きな鳥に変身するお姫様とか、獣の皮を被った女の人とか。

 他にもたくさん。

 いろんな人に助けられながら、私たちは暮らしに慣れて行く。

 寒い日も、教えてもらった魔法のおかげでつらくは無かった。

 しばらく、ちょっと。ううん、それなりに時間が過ぎたある日、ようやく『戦争』が終わったと狼仲間(パパの友達)から話を聞いて、私たち家族は南下を始める。

 今度こそ仲間だって認められた私たちは、ついに『森』への移住が叶ったのだった。


 そうしてやっと、私たち家族は穏やかな暮らしを手に入れる事が出来たのだ。


 小さな妖精さんや、しゃべる動物さんたちと仲良くなって、いろいろと教えてもらった。

 世界の事、魔法の事、皆が違う世界から来た人たちだって事。

 彼らの仲間に小さな子供はまだ少なくて、私はずいぶん可愛がられたと思う。

 でも、それでも時々探してしまうんだ。

 『おねーちゃん』と、それに『青い狼』を。

 ……見つかった事なんて、無いけれど。


 思い出すのは、最後の日に交わした言葉(やくそく)

『わたしもガッコウ行ったら、おねーちゃんみたいにつよくなれるかな?』

『……なれるよ。きっと、強くなれる。私も、強くなれたよ』

 私を見て、少し痛そうな、悲しそうな顔をした人。

 最初に出会ったときから“そう”だった。

 ……どうしてかな、少し何か我慢しているように見えたんだ。

 あの時は、それが何なのかよくわからなかったけれど、きっと。

 白いお姉ちゃんは他のお姉ちゃんたちと一緒にとても優しくしてくれて、もちろん他のお姉ちゃんたちとも仲良く出来たのは嬉しかったんだけど、どうしてかな、あの人だけには「大丈夫だよ」「心配しないで」って、そんな風に言いたかった気がするんだ。

 だから、一生懸命まとわりついたりもした。

 ―――ただ、何の気兼ねも無く笑って欲しい。

 ぎこちなく浮かべる笑みでは無いそれは、きっととってもステキな笑顔になるはずだ―――そんな風に思ったから。


 結局、その願いはかなわなかったけれど、あの人は最後に大切な願いを託してくれた。

 「パパとママを守って」って、「お願い」って言ってた。

 その願いにどんな意味があるのか、あの頃は分からなかった。

 白い髪に赤い目の人。

 どこかで見た事あるような、でも知らない人。

 とても強くてかっこよくて、他のすごく強い人たちと一緒に、私たち家族を守ってくれた人。

 ずっとずっとまた会いたくて、会えなくている、その人。


 ―――最後の最後にやっと『リグレッド』って、名前を呼んでくれた人。


 そんな人が通っていると言っていた学校―――学園が、今目の前にある。

 白い尖塔がまぶしい、湖に浮かぶ大きなお城。

 『創立されたばかり』の、この『王立魔法の森学園』で今日、私はあの人と同じ道を歩き出す。

 少し怖いけど、強くてかっこよくて一緒に遊んでくれた青く輝く獣と、お家より大きくてぴかぴかしてる、2つで1つのお人形さんに会う為に。


 ―――そして、誰より強くて凛々しかった『白いお姉さん(あのひと)』と同じ、召喚魔法士としての道を歩き出す。


 あなたは今も、あの時のあなたのままだろうか。

 それとももう、ずいぶん変わってしまっているだろうか。

 どちらでもいい、きっと答えはもう出てる。


 ――――――色が違う。

 ただそれだけでまるで違う印象になるのだと、初めて気付いた。

 そっくりなお姉さんみたい、とかじゃなかった。そうじゃなかったんだ。

 あの頃のあの人と同じ年頃になった私の顔は、いつか見たあの人とまるで同じ顔。

 探し求めていた顔が、鏡の中から見つめてくる事に驚いて。

 そうして思い出す。

 あの人の名前が、私と同じ(・・・・)だと言った事を。

 それが嬉しいと、笑った事を。

 つじつまが合わない事だらけなのは分かってる。

 でも、どこかですとん、と納得した自分もいて。


 どうしてあの人の色が変わってしまったのか、私には分からないけれど。

 だけど、何となく分かる気もする。

 時々、両親が私を見ながら複雑そうな顔をしているのにも気づいてしまった。

 ……ようするにきっと、そういう事なんだろう。



 目指す先が同じなら、色が違っていてもきっと同じ場所にたどり着けると。

 そう、信じたいの。

 だからこそ、この学園()わたしはあなたに“逢いに”行く。


 ―――いつか、きっと。




40mPさん(コラボなので正確には1640mPさん)の「未来線」は良い曲。


次回閑話。




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