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第58話 お祭りをやっていた村


「じゃ、大きい子ちゃんも新入りちゃんもモブ族の人たちも、まったねー」


 利根四号ちゃんがお饅頭を抱えて飛び立っていった。彼女は子供たちの楽園ではずっと私のリュックの中で寝ていたのだ。

 十分な睡眠でエネルギーを充填し終ったのだろう、矢のような速度であっという間に見えなくなる。


 目的が無い時はふわふわのんびり飛んでいる妖精の子たちだけど、目的地がある場合は一直線にぶっ飛んでいくのだ。

 たまに、飛んでるドラゴンなんかに妖精ストライクをぶちかまして怒られるらしい。


 みんなと別れた後、すっかり寂しくなってしまった私は無言で歩く。モブ男君たちは放っておくと気配を消しちゃうからね。

 そんな私を見てフィギュアちゃんが歌ってくれた。小さな可愛い歌声に癒されたよ。変な歌だったけど。


「その歌どこで覚えたの?」

「私が作った、さっき」


 なんと作詞作曲フィギュアちゃんだった。


「八十八番まであるよ」


 そ、そのうちにゆっくり聞かせてもらおうかな。




****




「リン、お腹すいた」


 そりゃ数時間も歌ってればお腹も空くわよね、結局八十八番まで聞かされたよ。でも私もお腹が空いたからご飯は賛成です。

 ずっと歩いていたからさすがに疲れた。


「向こうに村があるから、あそこでお昼ご飯にしようか」


 リーダーのモブ男君は村を発見するのが得意みたいだね、いつもすぐに見つけてくれるよ、地図を持ってるからかな。


「僕は村発見スキルを持ってるからね、人類限定だけど」


 微妙なスキルぅ! モブ男君らしいスキルといえばそうなのかも。

 ち、地図が無い人類未踏の地なら役に立つかも、人類未踏の地に人間の村があるかと言われればちょっと視線を外したくなるけど。


 村に着くとお祭りみたいな事をやっていて、広場には屋台が出て踊る村娘も見える。

 誰かが屋台のお饅頭を買う元気な声も聞こえてきた。


「おっちゃん、おまんじゅうちょーだい! はやくはやく!」

「ふああぁ妖精だあぁ」


 私が今こけたのを誰も見てなかったでしょうね?

 ちょっとメガネ君、何を記録しようとしてるのよ、ずっこけとか恥ずかしい行為を後世に残さないでもらえるかな!


「あ、大きい子ちゃんに新入りちゃん! お久ー!」

「す、数時間ぶりね利根四号ちゃん。妖精の村に帰ったんだと思ってたけど、こっちに来たんだね」


「村には帰ったよ? ここでお祭りがあると諜報機関Mから聞いて、超高速で戻ってきたんだ」


 諜報機関MのMってきっと饅頭の事よね……いつの間にそんな怪しい機関を設立したのよ、すっかりお饅頭にはまったわねあの村も。


 それになんていう速度で飛んでるのよ、ブチ当てられたらドラゴンもそりゃ怒るわ。


「うん、ここに来る途中でファイアドラゴンさんにストライクかまして、めっちゃ怒られちゃった。気をつけろ! って。なんせドラゴンさんを撃墜しちゃったからね」


 うわあ、安全飛行よ利根四号ちゃん、気をつけてね。ドラゴンさんもごめんなさい。


「リン、私もおまんじゅう欲しい」

「おじさん、お饅頭六個くださいな」


 私たちパーティー五人と利根四号ちゃんの分である。おいくらかしら。


「縁起物の妖精から金なんか取れるかよ! 持ってけ持ってけ!」

「え、いやおじさん、この子以外は」


「大きい子ちゃんも新入りちゃんもおまんじゅうゲットだね、良かったねえ」

「お、おう」


 そういや妖精の子には、私とフィギュアちゃんは妖精という事になってるんだった。妖精とお供のモブ族なのである。

 でもおじさんを騙してるみたいで気が引ける、かといって本当は妖精じゃないと明かしてショックで妖精の子に死なれても困るし。


「おじさん、お礼に歌ってあげるね!」


 まだ歌うんかい、フィギュアちゃん!


「わーい私も歌おうっと!」


 利根四号ちゃんも一緒に歌い出した。二人の可愛い歌声が響き、そのハーモニーに見物人が増えていく。

 何でフィギュアちゃんがさっき作った歌に、妖精の子は自分の声を乗せてこられるんだ、音楽才能抜群か。


 私は見物人たちに完全に取り囲まれてしまっている。こ、この状況は厳しい。


「わ、私も歌う」


 ぽけーっとしてるのも辛いので、私も歌ってみる事にした。ハニワ君人形と間違えられるわけにはいかないからね。

 この村に来るまでに何時間も聞かされた歌である、そのメロディは完璧に頭に叩きこまれているのだ。


 結果、屋台のお饅頭は飛ぶように売れに売れまくった。

 可愛い妖精たち(本物・不明・自称)が歌うんだから、商売も繁盛してもらわないと困るというものだ。


「妖精のお嬢ちゃんたち、串焼きはどうだ、うめーぞ!」

「おいくらですか?」


「いいからいいから、今日は楽しいお祭りだ、奢りだ奢り」


 村人たちはどんどん私たちにお菓子や食べ物を振舞ってくれた、キスリンゴ飴に焼きそば、惣菜パンにドーナツ食パンなんでもありだ。


 皆楽しそうで自分の村のお祭りを思い出してしまう。

 カナからお小遣いを貰って、カリマナと一日中遊びまくったっけ。


「ああ、フィギュアちゃん、串焼きにしがみ付いちゃダメだって」

「だってしがみ付かないと食べられないんだもん」


「持っててあげるから」


 フィギュアちゃんは大きな口を開けて串焼きのお肉にかぶりつく。

 今更だけど、この子の身体の中はどうなっているのだろう? 消化できるのだろうか。


「わーリン、身体がりんごあめに張り付いて取れないよ」

「あーもう!」


 世の中には抱きついて食べていいお菓子と、ダメなヤツがあるんだよフィギュアちゃん。


 溶けかけのキスリンゴ飴からフィギュアちゃんをひっぺがしていると、真後ろでボトと何かが落ちた音がする。

 何か装備でも落としたのかな? と後ろを確認すると、キスリンゴ飴に張り付いた利根四号ちゃんが転がっていた。


「こっちもか!」


「ふむふむなるほど、キスリンゴ飴は身体が小さい子には危険な食べ物と。これはノートに記載しておきますか」


 メガネ君、ノートに記載する前に、あなたのメガネに張り付いたそのキスリンゴ飴をまず取ったらどうだろうか。

 大きいメガネ族にも危険だったわね。


「透明で棒しか見えなかったのです」(メガネくいっ)

「だからメガネを普通のに変えなさいよ!」


 モブ太君は村の子供たちに混ざってくじを引いているようだ。


「何のくじなの?」

「勇者パーティーくじだブヒ、出てきた番号で何等賞かわかるんだブヒ」


 何のくじだって?


「いらっしゃい! 何故か勇者パーティーくじが投げ売りされてたから祭りの賑やかしに仕入れたんだよ、モブパーティーくじは高かったから手が出せなかったけどな。お嬢ちゃんもいっちょ引いてみるかい?」


 何のくじだって?


 勇者パーティーくじだのモブパーティーくじだの、意味が分からなさ過ぎて頭に説明が入ってこなかったよ。


 くじの箱の裏を見ると、メイドイン・カナルザック村とあった。

 私の村じゃねーか! おばば様ぁ!


 次回 「私、人気無さすぎ!」


 リン、楽しいお祭りの真実を知って愕然となる

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