第48話 ドラゴンVSモブパーティー
「リンを放せこのドラゴンめ!」
パーティー全員が武器を構える。このままではこの場が戦場になるだろう。
美少女(私)を巡って争うのはわかる、それが世の理なのだから、わかるがしかし。
「待って待って、この子、私の知り合いというか知り猫というか、半分私の育ての猫というか」
「例えリンの知り合いだったとしても、そいつは子供たちを食らって来たんだよ!」
そうでした――!
随分大きくなったと思ってたけど、それって子供たちが栄養だったんだよね。
昔から私にオヤツをくれる時に、私の手をペロペロしていたのは味見のペロリだったの?
そんなの嘘だと言ってよ猫――!
「リンには悪いけど、やるしかないんだ!」
ドラゴンとパーティーメンバーの戦闘が開始されてしまった。
しかしモブ男君たちの攻撃は全く当たらない、さすが猫のしなやかさを持っているだけはあるのだ。猫は意外と強いのだ、熊だろうがワニだろうが追い返すのだ。
皆はドラゴンに完全に手玉に取られてしまっている。
モブ男君の剣は届かず。
メガネ君は猫のヒゲにメガネを取られて、メガネメガネ状態。どーせ骨しか見えないんだから、普通のをつけろよと言いたい。
モブ太君に至っては、猫の手で転がされている始末である。ちょうどいい塩梅のボールに見えたのだろう。
皆の所に行こうとする私は猫の尻尾で後ろにセットし直され、ロリっ娘ちゃんは皆が邪魔で近づけない。
これがドラゴンか――!
うん、話に聞いていたドラゴンとの死闘とは随分違う気がするけど、気にするだけ損かな。
そんなポンコツ戦闘を数分やった時である。
「「「「猫ちゃんをいじめるな――」」」」
突然現れた大勢の子供たちが、ドラゴンとパーティーの間に立ち塞がったのだ。
どちらかというと、猫ちゃんに虐められているというか遊ばれてるんですけど。コロコロ転がされているモブ太君をよく見て。
「猫ちゃんは家も食べ物も無かった僕たちをここまで連れてきてくれて、住む場所と食べ物をくれたんだ!」
「じゃなかったら私なんてとっくに餓死してたんだから!」
「そうだそうだ!」
「わーるもの! わーるもの!」
「わーるもの! わーるもの!」
「わーるもの! わーるもの!」
「うう、子供たちに悪者扱いされるのは堪えます。リンナファナさんだけそっち側にいて、ちょっとずるいです」
ご、ごめんねロリっ娘ちゃん。
私だけ位置的にドラゴンと子供たちの側にいて、涙目のロリっ娘ちゃんに申し訳ない。
だってそっちに行こうとしても尻尾で元に戻されるんだもん。
もふもふの尻尾に、ちょっと至福を感じていたのは内緒にしておこう。
「あ、お姉ちゃん! コムギお姉ちゃんだ!」
「トーマ! 無事だったのね、良かった! 攫われたと聞いてもうとっくに食べられたんだと思ってた」
七、八歳くらいの男の子と抱きあって再会を喜んでいるロリっ娘ちゃん。
ここに来たのは、恐らく同じ孤児の知り合いに犠牲者がいたからなんだね。
「でもこんな山の中でどうやって住んでるの?」
「案内してあげるよ! こっち!」
子供たちに手を引かれて連れてきてもらった場所には、小屋と近くには柵を作った洞窟もあり、畑もできている。
「みんなで作ったんだよ!」
見ると十数人の子供たちの姿がある、みんなでこれを作るのは大変だっただろう。特に小屋なんて大人でも大変なのに、うう。
子供たちの健気な頑張りにちょっと涙ぐんでしまった。
「小屋は猫ちゃんが丸ごと運んできたんだよ」
「柵も!」
私の涙半分返してね。
「でもこの山はモンスターだらけだよね、こんな所にいて危ないんじゃないの?」
「大丈夫だよ、モンスターは猫ちゃんを怖がって中腹までにしか来ないから」
なるほど、子供に害するような悪い大人はモンスターを怖がってこの山には寄って来ない、そして中腹以上にはドラゴンが見張ってるのでモンスターも来ない。
子供たちの楽園ができあがっているのか。
「病気の時は猫ちゃんがお医者を運んでくるよ」
ドクター往診サービスまで充実していた。お医者さんも大変ね。でもきっとここの秘密はばらしてないんだろうから、いい人なんだろう。
きょろきょろと辺りを捜索していたロリっ娘ちゃんが、心配そうに先ほどの男の子に尋ねている。
「ねえトーマ、ミーナスとジーニーは? 二人はここにいないの?」
「ミーナスお姉ちゃんもジーニーお姉ちゃんも最初からいないよ?」
「だって、二人ともドラゴンに攫われたって……」
ロリっ娘ちゃんたちの不穏な会話を耳にした私は、つかつかと猫ドラゴンに歩み寄る。
「あんた、やっぱり食べたんでしょ! ぺっしなさい! はやく女の子二人を吐き出して!」
ドラゴンはふるふると拒絶の姿勢だ。
一回食べた物は自分の物、私もカリマナとの弱肉強食でよくそれをやってたけど、オヤツと女の子では意味が違うからね!
因みに私のカリマナとの勝率は五割、だいたい互角である。
「違いますねリンさん、猫は吐き出し拒否ではなくて、食べてないと言ってます」(メガネくいっ)
「どういう事ですか? 犯人がドラゴンじゃないのだとしたら、ミーナスとジーニーはどこに行ったのですか?」
ロリっ娘ちゃんがこちらに歩いてきた。
「ふむふむなるほど、それは実に興味深い。是非ノートに記載します」
「あのリンナファナさん、あのメガネの人は何故ドラゴンと会話ができるのですか?」
「それは私がメガネ師だからですよ」(メガネくいっ)
「メガネ師って何ですか?」
ロリっ娘ちゃんが首をカクンとかしげている。
良かった、これが普通の反応なのだ。最近メガネ師って職業が本当にあるんじゃないだろうかと、ちょっと不安になっていたところなんだ。
「メガネ師は全く関係無いからつっこんだら負けの言葉よ。で、猫は他に何か知ってるの?」
「はい、興味深い事実です。リンさんのカリマナさんへの勝率は二割だそうです」
どうでもいーわそんなの! 五割私の勝利にしといてよ! 血も涙も無いのか!
「どうやら町の人間と悪魔族との間で、子供たちの人身売買取引が行われているようです。このドラゴンはそれを知って、売られる前の子供を先に保護していたようですね。先ほど私たちが倒した悪魔は、その子供を取り返しにやってきていたという話です」
とんでもない事実が発覚してしまった。
契約で動く悪魔はやはりそれを行っていた。しかも町の人間とだと?
「そ、それじゃあミーナスとジーニーや、ドラゴンに攫われたはずなのにここにいない子供たちは……」
「裏取引で悪魔族に売られたという事ですね」
「どこのどいつよそのバカヤロウな人間てのは、鼻の穴に指突っ込んで往復ビンタでも食らわせてあげようか」
「コッカーの町の公爵家ですね」
また……王侯貴族か――!
ぶるぶると私の身体が震える。こんなに怒りマックスになったのは初めてかもしれない。
王族なら何をしてもいいのか、貴族なら子供を食い物にしても許されるのか。
恐らく許されるのだろう。彼らは何をしても許されるのだ。
でも違う。世間が許しても――
私が許さない。
次回 「腕なんかくれてやんよ!」
リン、王子にカチコミに行く




